2024/12/21 更新

写真a

イワハラ シンサク
岩原 紳作
所属
法学学術院
職名
名誉教授
学位
博士
 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 会社法改正のメカニズムーオーラルヒストリーとその理論的分析ー

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2015年04月
    -
    2019年03月
     

    久保 大作, 中東 正文, 岩原 紳作, 松中 学, 松井 秀征, 久保田 安彦, 京 俊介, 氷室 昭彦

     概要を見る

    本研究においては、第一に、イシュー・セイリアンス概念を用いた立法過程の一般化可能性を確認したうえで、これが日本における会社法の改正過程の分析においても有用であることを示した。第二に、これらの分析に依拠しつつ、昭和56年・平成2年商法改正時の立案担当者に対してインタビューを実施し、当時の法改正状況についての事情を調査した。なお、これらの研究と並行して、研究分担者の関心に応じ、会社法改正等に関する研究を行っている。政治学の観点からは、法改正において改正プロセスに関与する当事者が、当該問題に対する一般の興味関心の程度に応じてどのように行動を変化させるかについて、一定の知見を得ることができた。会社法学の観点からは、昭和56年・平成2年商法改正の過程において、そこで検討された改正事項が当事者のどのような動きによってどのように扱われたのかについて、一定の知見を得ることができた

  • 金融機関グループにおけるガバナンスの研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2015年04月
    -
    2018年03月
     

    岩原 紳作

     概要を見る

    第一に、金融機関グループにおいて主に金融持株会社形態が採られているのは、金融機関グループの経営管理業務のみを行う金融持株会社がグループ全体の経営管理を行う方が、グループ全体の利益を図るグループ経営を行うことができるためである。第二に、そのような金融持株会社の意義を実現するためには、金融持株会社の取締役会が、いわゆるモニタリングモデルを採って、独立取締役が過半数を占め、経営方針の決定と経営者の監督に専念すべきである。第三に、金融持株会社の取締役会は、グループ全体の経営の監督を行うべきである。その代り、グループ各社の経営体制は、銀行法や保険業法が規定する厳格なものである必要はないのではないか

  • 信用の比較史的諸形態と法

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2008年04月
    -
    2013年03月
     

    木庭 顕, 両角 吉晃, 松原 健太郎, 原田 央, 桑原 朝子, 森田 果, 金子 敬明, 加毛 明, 滝澤 紗矢子, 岩原 紳作, 神作 裕之, 太田 匡彦, 齋藤 哲志, 川村 力

     概要を見る

    近代のヨーロッパ・アメリカのみならずギリシャ・ローマ、イスラム、中国、日本の専門家が借財・土地担保・金融等々の社会史的分析をもちより、同時にこれらを(同じく歴史的に多様な)法的な枠組との間の緊張関係にもたらした。そしてそれらをめぐって比較の観点から激しい討論を行った。その結果、現代の信用問題を見る眼と信用問題の歴史を見る眼が共有する或る視座の限界が明らかになった。これは新しい視座の構築方向を示唆する

  • 消費者信用法の統合的研究-私法・監督法・市場法の観点から

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2005年
    -
    2008年
     

    神田 秀樹, 岩原 紳作, 山下 友信, 神作 裕之, 藤田 友敬

     概要を見る

    消費者信用取引の規制のあり方は, 欧州や米国の規制がそうであるように, 商品やサービスの販売に伴う与信契約か単純な金銭の貸付かを問わず, 横断的・統一的に規制すべきである。その際, 私法的規制, 監督法上の規制および市場法的な観点から, それぞれの有効性と限界を常に意識しつつ, 統合的かつ公正な規制体系を構築するとともに, 法規制のみならず自主規制などの非法的規制との最適の組み合わせを探る必要がある

  • 海運業の現代的変貌と海事私法のあり方に関する総合的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2002年
    -
    2005年
     

    落合 誠一, 江頭 憲治郎, 岩原 紳作, 山下 友信, 藤田 友敬, 内田 貴, 石黒 一憲, 道垣内 正人

     概要を見る

    本研究は、便宜置籍船の一段の増加、国際的な競争の激化など最もグローバリゼーションが進展した産業分野である現代の海運業の実態に照らしてあるべき海事私法の姿を模索しようとするものである。海事私法は、海上運送契約の規整、船舶衝突、座礁等による不法行為責任、環境汚染責任の規整、造船金融や貿易金融などの金融取引的側面の規整、海上における様々なリスクに関わる保険の規整などの多様な側面に及んでいるが、いずれの側面においても海運業における新たな実務の発展などにより伝統的な規整を見直す必要に迫られている。本研究では、海運業の現代の実情を十分に把握した上で、上記の各側面に関する法的な規整のあり方について検討を加え、これを後掲の論文等にとりまとめた。とりわけ、国際海上貨物運送契約に関しては、1924年船荷証券条約、1968年の同条約改正議定書、1980年の国連海上物品運送条約が並立し、それぞれ批准国があり国際的なルールの統一が実現されていない状況下で、国連商取引法委員会において改めて統一をめざす新条約の制定作業が進行中であり、本研究の参加者である藤田友敬は日本政府代表として毎回の国際会議に参加してきたが、本研究における成果は大いに国際会議での審議にも反映され、また逆に国際会議での審議により得られた知見は本研究全体にも有益に反映された。このほかにも、船舶の航行の安全に密接に関わる水先人制度、海上保険などはわが国でも立法的な解決を迫られており、本研究参加者の研究は大きな貢献をするものとなっている。また、近く商法典の現代化の一環として海商法の現代化作業が見込まれるが、本研究ではそのための基礎となる多くの知見を蓄積することができたものと考えている。

  • 保険業の規制緩和の進展と保険法の課題

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2002年
    -
    2004年
     

    山下 友信, 岩原 紳作, 藤田 友敬

     概要を見る

    3年計画による本研究においては、保険業の規制緩和が進行しつつある現状における保険法のあり方について、保険契約法及び保険監督法の両面から考察し、現行法の抱える問題の指摘と立法論的な課題についての研究を行った。研究の成果の中心は、研究代表者である山下友信が2005年3月に刊行した著書『保険法』である。同書では、総論の部分において、金融の規制緩和、業態間の融合により生じつつある保険とデリバティブや他の金融商品との異同といった問題について幅広い視野から考察を加え、解釈論及び立法論の両面から、今後の保険法のあり方についての方向性を打ち出した。また、保険契約と法に関するに関する部分においては、近年の主要国の保険契約法の立法等の動向や、消費者契約法、金融商品販売法といった一般法の動向を踏まえて、わが国の保険契約法の立法のあり方についての私見を提示した。また、規制緩和による影響が最も直接的に表れる保険募集の局面について、保険業法の募集規制と不法行為等の損害賠償請求権との交錯の問題などについて、従来の保険法の理論体系には見られない新たな体系化を試みた。その他、同書では、保険契約法全般について、最新の判例・学説を反映した詳細な解釈論的解説を行い、合わせてあるべき法および理論のあり方についての私見を述べた。さらに、研究のプロセスで生じた様々な保険契約法および保険監督法上の具体的な問題についての研究を進め、個別のテーマに関する論文としてとりまとめ、公表したほか、一部は本研究の研究成果報告書に収録した

  • 会計基準の国際化が日本の会社法に与える影響

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2001年
    -
    2003年
     

    江頭 憲治郎, 神田 秀樹, 山下 友信, 岩原 紳作, 藤田 友敬, 増井 良啓

     概要を見る

    国際会計基準審議会(IAS)による国際会計基準の作成を中心とする会計基準の国際化が日本の会社法に与える影響は、二つの形で現れる。第一は、会社法の会計規定をどう改正しなければならないかである。第二は、会計基準が変わることから生ずる企業の行動パターンの変化が、会計規定以外の会社法にどのような影響を及ぼすかである。第一については、研究期間中に法定準備金制度、配当限度額規制等につき会社法改正があったので、それぞれにつき研究を発表したが、今後の国際的動向との関係で理論的に重要なのは、「ストック・オプション会計」に係る問題である。この点に関する研究の結論は、次のとおりである。国際会計基準の公開草案に従うと、「役務を対価として新株予約権を発行する」という、従来のわが国会社法と異なる観念が導入される。そうした「労務出資」を認めても、公開会社には弊害は生じないが、計算を公開していない会社には、問題が生じうる。「役務」には、市場価格のあるものとないものとがあり、後者には過大評価の危険があるので、総会特別決議を要するとする考えがありうる。「役務」は継続的に提供されるので、新株予約権の対価の継続的払込みを予想していない現行法の改正の必要がある。労働基準法上、賃金の「通貨払いの原則」の適用を排除する改正が不可避になる。第二については、平成13年当初は英文財務諸表の「レジェンド」が企業にとり最大の問題であったが、同年秋以後のエンロン事件以後、監査機構ひいては「委員会等設置会社」の採用が最大の問題となった。また、平成17年度以後義務化される減損会計は、企業組織再編の活発化という形で、会社法に大きな影響を与えている

  • 金融機関の破綻処理に関する法制の研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1999年
    -
    2001年
     

    岩原 紳作, 山下 友信, 高橋 宏志, 伊藤 眞, 神田 秀樹

     概要を見る

    第一に、銀行の破綻処理は、受皿銀行への資産負債の承継(P & A)を中心とすべきであり、そのためには受皿銀行に対する資金援助方法の多様化、ロス・シェアリングの導入などが必要である。また倒産実体法上、預金債権や為替債権に先取特権を付与することが望ましい。第二に、保険会社の破綻処理は、保険業法上の行政的な手続によるよりは、更正特例法上の司法的な手続によることが望ましい。破綻直前に保険会社が締結することが多い財務再保険契約は、保険会社を害するため、保険業法に基づき防止する必要がある。第三に、農協系統金融機関の破綻処理については、受皿金融機関として銀行等へのP & Aも可能にすべきである。第四に、証券会社の破綻処理については、投資者保護基金制度の拡充が必要であり、証券会社の破綻処理においても、セーフティネットを設ける必要がある。以上、全体的に、最近の法改正によって金融機関破綻処理制度の大幅な改善がなされたものの、なお残されている課題が多いことが明らかになった

  • 商行為法の現代化のための立法論的総合研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1998年
    -
    2001年
     

    落合 誠一, 山下 友信, 岩原 紳作, 江頭 憲治郎, 藤田 友敬, 神田 秀樹, 石黒 一憲

     概要を見る

    わが国商法の現代化は、焦眉の急である。しかるに会社法に関しては、その改正作業が大いに進展しつつあるが、これに対して商行為法のの分野は、まさに古色蒼然たるままに放置されている。本研究は、こうした状況を改善するための基礎的作業として、「商行為法の現代化のための立法論的総合研究」を目指したものであって、その目標を達成すべく4年の研究期間をもって鋭意研究を実施してきた。本研究を総括すれば、商行為法全体の現代化の基本的方向は相当程度明らかにし得たというのが、各研究分担者間の共通の認識である。すなわち、商法典に現に規定がある仲立営業、問屋営業、運送取扱営業、運送営業、倉庫営業は、いずれも大幅こその内容を現在及び将来の理論と実務に合致させる改正の必要があると共に、商法典には規定されていない重要な現代的な営業、たとえば、航空運送営業、複合運送営業、金融営業、フランチャイズ営業等に関して新たな規定を設けるべきことである。そしてこれらの改正立法に当たっては、商取引における契約自由に配慮するのは当然であるが、同時に消費者法の発展を十分に考慮して、そのための一定の強行的規制の導入が不可欠であると考えられる。次に、商行為法の現代化の基本的方向をいかに具体化するかであるが、問題対象が膨大であるのに比して、研究期間があまりにも短いこと等があり、率直にいって個別的な解明は、かならずしも十分にはなし得ない部分が残ったことも事実である。しかしながら、本研究のまとめである最終年度においては、研究分担者のなかから代表者を含む4名による研究論文を雑誌ジュリスト2002年3月15日号に掲載することにより、本研究の成果を公表することができた

  • 会社法と渉外関係

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    1998年
    -
    2000年
     

    江頭 憲治郎, 山下 友信, 岩原 伸作, 柏木 昇, 増井 良啓, 道垣内 正人, 石黒 一憲, 中里 実

     概要を見る

    現行会社法および民法等の関連法規が渉外関係の視点から見た場合にどのような問題を含んでいるかを、網羅的に、具体的には、民商法の規定を洗うような形で検討するという研究目的を立て、研究を実施した結果得られた知見は、以下のとおりである。
    1 総論的に言えば、問題は、抵触法的視角(いずれの国の法を適用すべきか)のほか、実質法上の視角(日本会社法上「会社」と規定されているとき、「外国会社」もそこに含まれるか)からも検討されねばならず、かつ、国際私法上の準拠法選択のルールでなく、公法的ルール(域外適用等)によるべきでないかも検討せねばならない。
    2 各論として、外国会社の日本会社法上の取扱いに関する立法論上の問題点としては、
    (1)擬似外国会社規定の不明確、(2)外国会社に関する規定の不備(計算書類の開示等)、(3)社債権者集会・合併等における外国会社の取扱いの不明確、(4)認許される外国法人の範囲等がある。
    日本の会社が国際的活動を展開すること(株主・経営組織メンバーの国際化、合弁会社等)により生ずる日本会社法上の解釈問題は、いろいろあるが、おおむね解釈論による解決が可能であり、法改正を要する問題は少ない。
    研究成果の多くは、ジュリスト特集「国際的な企業組織・活動と法律問題」(1175号、2000年4月)および国際私法年報2号(2001年公刊予定)に公表している。

  • デリバティブ等新金融商品の法的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(一般研究(B))

    研究期間:

    1995年
    -
    1997年
     

    江頭 憲治郎, 黒沼 悦郎, 中里 実, 神田 秀樹, 岩原 紳作, 落合 誠一, 石黒 一憲, 高橋 宏志

     概要を見る

    本研究は、金融革命の中で次々と現れてくるデリバティブ等の新金融商品について、民商法等の私法、金融監督法、証券取引法、租税法、国際法等を専攻する研究者が多面的な観点から法的な諸問題を分析することを目的として計画された。3年間の研究の初期においては、まず、スワップ、先物取引、オプション取引といったデリバティブ取引の実態を調査するとともに,どのような法律的な問題点が存するかを洗い出す作業を行い、これと合わせて、アメリカ等諸外国におけるデリバティブ取引に関する法の状況を比較法的な観点から分析した。これらの基礎作業をふまえて、わが国におけるデリバティブ取引の法的問題を、現行法下における解釈論と立法論の両面から検討した。そして、とくに問題点が多いと思われる私法、金融監督法、租税法の分野を中心として論文等としてとりまとめた。また、本研究の成果にもとづいて研究分担者のうち、岩原、神田の両名は、1997年10月の金融法学会において、デリバティブに関する諸問題と題して報告し、わが国におけるこの分野の研究水準を高めることに貢献した。具体的な問題としては、私法の分野では、一括清算条項の効力の問題、賭博や保険との概念上の異同の問題を、金融監督法の分野では、各種金融機関の業務規制上の位置づけ、店頭デリバティブの規制の手法、リスク管理やディスクロージャーのあり方等を、また、租税法の分野では、デリバティブ等の新金融商品についての課税のあり方等について論文等において新たな知見を提示することができた。

  • ビジネス・プランニングの研究

     概要を見る

    会社法と租税法とを総合的に視野に入れ,かつ,企業がある目的を達成しようとしたときにどのような法的手段があるかという戦略法務的な思考を体得するための「ビジネス・プランニング」のケ-スブックの作成が,本研究の課題である。本年度は,昨年度に引続き,ケ-スブックの設例に適当な材料を得るために実務家へのインタビュ-を行うとともに,設例の作成,関連設問の作成,関連教材の収集を行った。その結果,予定するケ-スブックの各章について,仮想設例を中心に構成した,第一次の試案のようなものが,一通りできあがった。ただ,今後,内容をさらに検討して,洗練された設例等に仕上げねばならない。また、平成2年4月に国会に上程される商法・有限会社法の改正法案の内容が,従来いわれていたよりも小幅な改正を内容とするものになったこと,消費税の今後の取扱いが不明であること等,ケ-スブックの内容に係る点で外部環境に変化があり,今後の帰趨もさだかでないことから,ケ-スブック刊行までには,なおしばらく時間を要する。ケ-スブックの構成は、次のようなものになる予定である。第1章 新規事業への進出(a)分社(b)買収(c)合併第2章 資金調達第3章 利益処分第4章 企業承

  • 金融システム改革と法制度

     概要を見る

    本研究を通じて以下の諸点を明らかにすることができた。第一に、金融取引における投資者保護の制度を、銀行・保険・証券等の伝統的な金融の各分野のほか、更にはデリバティブ取引等の新たな金融取引を含め、横断的に整備する必要があることと、その場合の制度の内容として、適合性の原則や受託者責任原則をより具体化する必要があること、等である。我々の研究成果は、平成18年に成立した金融商品取引法に反映された。しかし、金融商品取引法の適用対象に商品取引が含まれていない等の課題が残っていることも、我々の研究は明らかにした。第二に、市場取引のインフラを整備するために、各種金融市場における決済制度の課題や市場参加者の行為における利益相反の問題を検討し、整備すべき法制度の具体的な内容にっき明らかにした。第三に、投資のための各種スキームにおける法制度の不備を検討し、解釈論・立法論を展開した。その一部は金融商品取引法に反映されている。第四に、金融コングロマリット化が進む中で、それに伴い発生する金融グループ全体としてのリスク管理やガバナンスの問題、利益相反や顧客情報の保護と利用の問題等について検討を行い、制度整備の課題等を明らかにした。第五に、以上の各問題に対処するために必要な、金融監督法の整備の必要性と方向を明らかにした。以上のように、各研究課題につき検討を進め、かなり具体的な解釈論・立法論としてとりまとめることができた。その成果は、論文・著書の発表や、研究代表者や分担者が立法作業に関与することによって、金融商品取引法、信託業法改正、銀行法改正、その他の立法に反映された。しかし金融コングロマリットに関する法制整備等、更に進めるべき法制整備の具体的な内容を詰めるという課題が残っているため、今後はそのような研究を進めていきたい

▼全件表示

 

特定課題制度(学内資金)

  • 金融機関グループにおけるガバナンスの研究

    2015年  

     概要を見る

     本研究においては、金融機関グループのあるべきガバナンス体制の検討を行った。その結果、金融機関グループにおいて主に金融持株会社形態が採られているのは、同形態を採ることによってグループ全体の利益を図る経営が行われやすいためであること、そのような金融持株会社の機能を発揮するためには、金融持株会社の取締役会はグループ全体の経営の監督を行うべきであり、取締役会の在り方としてモニタリング・モデルを採用し、独立取締役が経営者の監督をしっかりできる体制を確立する必要があること、等を明らかにすることができた。

  • リーマン後の新たなタイプの金融危機に対応する包括的金融法制の検討

    2013年  

     概要を見る

    本研究は、2008年のリーマン・ブラザースの破綻をきっかけとする世界的な金融危機の反省に立って、新たな包括的金融規制の在り方を探るものである。具体的には以下のような研究成果を挙げた。 リーマン危機が発生した原因や危機が拡大したメカニズム等につき、経済学や金融論における研究をフォローし、それらの専門家である慶応大学の池尾和人教授や日本総研の翁百合理事等と研究交流を行った。その結果、この危機の背後には、経済のグローバル化の進展、それに伴う新興国の発展と先進国経済の低迷、国際的な経常収支のアンバランスとそれに伴う世界的な過剰流動性の発生、証券化や市場型金融等の新たな金融手法や金融の在り方の進展に法制整備が十分に対応できなかったこと、等の根本的問題があることを明らかにすることができた。 世界的にはG20の合意に基づきFSB(金融安定理事会)が、「金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性」という各国の立法指針の文書を策定する等、国際的な金融危機対応の制度作りが進んでいる。本研究においてはこれらの動きをフォローし、我が国における具体的な法制整備の在り方を提示した。 このような国際的な動きを踏まえ、新たなタイプの金融危機に対応するために、アメリカがドッド・フランク法を立法したのを始め、世界各国で立法がされている。本助成の受給者は、すでにドッド・フランク法を研究して論文を発表していた(岩原紳作「金融危機と金融規制ーーアメリカのドッド・フランク法を中心に」『前田重行先生古期記念・企業法・金融法の新潮流』(商事法務、2013年)393-425頁)。しかしその段階ではドッド・フランク法に基づく規則等はまだ十分に制定されておらず、同法の具体的内容は固まっていなかった。本研究においては最近制定された同法の規則等を研究し、その他、イギリス、ドイツ等の立法も研究して、この問題に対する世界の最新の立法状況を明らかにし、そこから我が国における立法のあるべき姿を検討した。ドッド・フランク法については、同法のToo Big To Fail の問題に対する規制はあまり有効でないが、デリバティブやヘッジ・ファンドに関する規制等は、批判はあるが我が国の参考になりうること等を示すことができた。 我が国においても平成25年の預金保険法・銀行法等の改正により、新たなタイプの金融危機に対する一定の対応がなされた。本研究においてはこの法改正の意義と将来に残された課題の研究を行った。具体的には、銀行に限らず幅広い金融機関をカバーする金融危機を生じさせかねない金融機関の破綻の危機に対する予防や事後処理につき、公的資金の投入を含めた措置を定めたこと等は評価される一方、このスキームの対象にノンバンクやファンド等が含まれていないこと、新たな市場型金融の担い手の健全性確保のための手当が不十分であることが、ドッド・フランク法等に比べても問題を残していること等を明らかにし、今後の立法課題を提示することができた。

  • 自己株式の貸株等の新しい金融取引の会社法・金融商品取引法・金融法上の諸問題

    2013年  

     概要を見る

     本研究は、自己株式の貸株や Credit Default Swap (CDS) 等の新しい金融取引の会社法、金融商品取引法、金融監督法、取引法上の諸問題を検討するものである。本研究の中心は、自己株式の貸株を利用した green shoe option 取引にあり、海外におけるその取引と、それを我が国に導入しようとする取引計画につき、証券会社や法律事務所等にヒアリングを行うフィールド・リサーチや、文献・資料による調査を行った。また、ドイツの関連論文や判例等を中心に、アメリカ等を含む海外文献・資料の調査も行った。 これらの調査を基に、まず貸株取引の実態の解明に努めた。取引を利用目的に従って分類し、その中から法的に問題のあるものを取り上げて検討することにした。貸株については、担保目的等の取引手段として貸株が利用される場合や、買収防衛目的等で株式を購入することなく会社の議決権を入手するため等に行われる戦略的手段としての貸株に問題があり、CDSについては投機目的での利用が問題となることを明らかにした。 貸株は、会社法的にも金融商品取引法的にも様々な問題を抱えている。本研究においては、第一にその法律構成を明らかにし、株式の消費貸借または再売買予約付売買と構成した。第二に、貸株等の有価証券貸借の形で担保に供した場合の効力を明らかにした。第三に、貸株に関するインサイダー取引規制や、借受者・貸付者の開示における届出義務、公開買付規制の適用の有無等につき検討し、原則としては脱法的に用いられない限りこれらの規制の適用はないという結論に至った。第四に、貸株を用いて株式の経済的な利益の帰属主体を議決権行使者から切り離す empty voting という問題等を検討した。その結果、アメリカではSECの規則で一定範囲で株式の実質的な所有者に議決権を行使させており、ドイツにおいても一定の場合に借株者による議決権行使を否定する解釈が主張されており、我が国でもそのような立法論的・解釈論的工夫が必要であることを示した。 本研究において特に力を入れて検討したのは、自己株式を貸株して行われる green shoe option と呼ばれる取引の会社法的な問題である。自己株式を貸株することが会社法199条1項に定める自己株式の「処分」に当たり、募集株式発行等の会社法規制の適用を受けるかを検討した。自己株式の「処分」に原則として該当すると考えたうえで、借株者に株式の所有権は移転するが、「特に有利な金額」による自己株式の「処分」には当たらないとするためには、取引開始時に借株者が貸株される自己株式の時価相当額を担保として提供する必要があると考えるべきことを明らかにした。また、「処分」時の公示に工夫が必要なこと、種類株式発行規制は及ばないこと、自己株式の貸借期間満了時に借株を返還することに自己株式取得規制が及ばないこと、等を明らかにすることができた。 この他、投機目的のCDSにつき、刑法の賭博罪の適用がありうるのか、金融監督法上はいかなる手当が必要なのか、清算機関の設置強制の必要性等についても検討を行った。