Updated on 2024/04/20

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SATO, Azusa
 
Affiliation
Faculty of International Research and Education, School of International Liberal Studies
Job title
Associate Professor
Degree
博士

Research Interests

  • interpreting studies, cross-cultural communication studies, international relations

 

Syllabus

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Sub-affiliation

  • Faculty of International Research and Education   Graduate School of International Culture and Communication Studies

Internal Special Research Projects

  • 日本語も英語も母国語としない学生が日⇔英通訳を学ぶ際の課題と克服策の研究

    2013  

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     日本語も英語も母国語としない学生たち(以下、非ネイティブ学生)が日英通訳を学ぶ際に有効な方法を解明したいと考え、その際一番課題となるボトルネックをまず究明しようとした。当初は通訳プロセスをインプット、情報分析、アウトプットの三つに分解し、①情報インプットを正しく認識するリスニング力、②情報を正しく分析する情報処理能力、③美しいアウトプットを発話する訳出力、の中で特に非ネイティブ学生が不得意とする領域を明らかにし、最初に養成すべき能力を同定しようとした。 しかし受け持ちの非ネイティブ学生たちに様々な通訳課題を与え、その課題をどのように処理しているか観察したところ、彼らは総合的な言語運用力が全体において足りていないという状況であり、通訳をそのプロセスごとに分解して、その中で一つの不得意領域を強化するということによっては容易に克服できない総合的な語学力不足の壁が明らかになった。 そこで別のアプローチをいくつか試した。一つはまずは母国語に訳してみるというアプローチである。非ネイティブ言語から別の非ネイティブ言語へ直接通訳を行う前に、まず一度母国語に訳させ、その母国語訳から日本語もしくは英語に訳させてみた。これは私が2013年度の通訳翻訳学会年次総会で発表したときに、他大の教員からいただいたコメントの適応でもある。母国語にまず訳してみるというのは、正確な言葉遣いに対する精緻な感覚を取り戻させるためである。非ネイティブ学生のパフォーマンスを評価すると、単に語学力の不足というだけでなく、非母国語における言葉に対する感覚が鈍いということが感じられたからである。この練習法は、非ネイティブ学生の間で蔓延している雑なデリバリーに対し、自ら違和感を覚えさせるために、一定の効果はあったと考える。 もう一つのアプローチはクリティカルリスニングを身に着けさせることであった。ただ言葉の羅列や文の羅列を処理していくという意識では効果的でダイナミックな訳出はできない。常にスピーカーの考えの先を読む意識でスピーチを聞きながら訳していくというクリティカルリスニングをクラスで強調し、「訳出することではなくメッセージを伝えることが通訳」と繰り返し学生に説いた。このクリティカルリスニングのマインドで訳出練習をさせたところ、アウトプットされたメッセージ全体のクラリティが高まったことが確認できた。また文単位での訳出ミスを防ぐ効果も多少はあったと考える。訳出ミスには語学力の不足以外にもメッセージの理解不足や誤解という要因があるわけだが、クリティカルリスニングマインドでスピーカーに耳を傾ければインプットの正しい理解が生まれ、その処理の段階にスムースに進むことができるからである。 従って今回の研究課題であった非ネイティブ学生たちの指導において注力すべき分野と有効な教授法については①母国語を介するリレー方式の通訳法、②メッセージを統合的に理解するクリティカルリスニングマインドの養成、が一定の効果を生んだことがこの一年間で検証できた。今後も幅広いアプローチを試していく予定である。