グレッグ・ドボルザークは早稲田大学の国際学術院(国際コミュニケーション研究科・国際教養学部兼任)の専任教授で、太平洋・アジアの歴史学とカルチュラルスタディーズ、アート、ジェンダースタディーズの専門家である。米国フィラデルフィア生まれ。マーシャル諸島共和国と米国ニュージャージ州で育ち、高校時代に宮崎県に留学し、1年間早稲田大学にも在学。2004年、ハワイ大学太平洋諸島地域研究専攻の修士課程を修了。オーストラリア国立大学アジア・太平洋地域研究所やジェンダー研究所で比較文化と歴史学を専攻し2008年に博士号を取得。一橋大学と東京大学の教員を経て、2017年より現職。早稲田大学国際教養学部・国際文化コミュニケーション研究科ではカルチュラルスタディーズ、ジェンダー論 、ミリタリズムやポストコロニアルスタディーズ、アジアと太平洋諸島地域論、現代アート論を担当。The Contemporary Pacific Journal, Journal of Pacific History, Critical Ethnic Studies, American Quarterlyなどの学術誌に寄稿するほか、E-Flux Journal、高い評価を得ている国際文化誌COLORS、東京の主観ガイドTokyo Totemなどの大衆文化・芸術誌にも執筆しています。 また、学術的な編集本の中で学術的な章をいくつか執筆しているほか、自身の本(学術書)『Coral and Concrete: Remembering Kwajalein Atoll between Japan, America, and the Marshall Islands』は、2018年にUniversity of Hawai'i Pressから出版され、2020年にペーパーバックで再版される予定である。また、テレビ番組にコメンテーターとして随時出演し、オセアニアにおけるポストコロニアルの抵抗やアートに関する講演も行っている。アートと学術的な交流を通じて、日本における太平洋諸島地域についての認識を高めることを目的とした草の根ネットワーク、プロジェクト35(さんご)の創設ディレクターを務めている。この取り組みの一環として、地元のアーティストと協力し、オセアニア、特にミクロネシアや日本やアメリカの植民地主義によって最も影響を受けた地域のアートを調査/キュレーションすることに協力している。2017年にはホノルル・ビエンナーレのキュレーター・アドバイザリー・ボードの主要メンバーとして参加。また、2019年には山形国際ドキュメンタリー映画祭の特別プログラム「『アムネシア~オセアニアの忘れられた「群島」』を企画、コーディネートし、同年フィリピンのベラスアルテス財団でキュレーション・レジデンスを引き受けた。アート、アイデンティティ、科学、学術の交わりを検証するこの仕事と並行して、3年間の科研費(基盤研究C)の助成を受け、オセアニアの先住民アーティストがグローバルなアートネットワークを通じていかに脱植民地化するかを研究することになった。この研究をもとに、2021-2022年にオーストラリア・クイーンズランド州立美術館で開催された第10回アジア・パシフィック・トリエンナーレで「エアカヌー」展の共同キュレーターを務めた。 早稲田大学では、太平洋諸島研究をベースにした歴史/ジェンダー研究/地域研究/トランスナショナル文化の学部講義一式(「トランスオセアニア1:帝国・戦争・グローバリゼーションに対する太平洋の視点」「トランスオセアニア2:21世紀世界の太平洋」)を毎年担当している。また、毎年春学期には、ジェンダー研究の中核となる「文化とアイデンティティ」の講義を担当している。これらのコースに加え、カルチュラル・スタディーズの上級セミナーや、厳選されたトピックに対するフェミニスト・アプローチも教えている。大学院レベルでも、カルチュラル・スタディーズの幅広いトピックについて、博士課程および修士課程の学生を指導し、文化研究スタディープラン長を務めている。 2020年、その指導方法の工夫が評価され、早稲田大学e-Teaching Award for Good Practiceの受賞が決定した。近刊に、『The Cambridge History of the Pacific Ocean, Part 2』(2023年)に章を寄稿し、第24回シドニー・ビエンナーレの出版物である『Ten Thousand Suns』(2024年)に「人新世におけるアート」に関するエッセイを執筆し、丸善出版から2024年に予定されている『Oceania Bunka Jiten』(オセアニア文化事典)に2章を書いた。