2024/07/22 更新

写真a

デサキ アキヒト
出崎 彰人
所属
附属機関・学校 高等学院
職名
教諭
 

特定課題制度(学内資金)

  • 日本人英語学習者によるtense[i:]とlax[I]の知覚 ~音長への依存度の考察~

    2009年  

     概要を見る

    本研究では、「音質」が異なるtense [i:]とlax [I]の知覚において、日本人学習者がいかに「音長」に依存するか(どれくらい母音を短く、あるいは長くすれば単語を知覚できなくなるか)を調査した。知覚実験の刺激としては、英単語bitの母音[I]を4msecずつ長く(+20msecまで)、beatの母音[i:]を4msecずつ短く(-20msecまで)編集したものを用い、聞いた単語を選択肢の中から選ぶテスト形式をとった。また、研究意図を隠すため、bet, bat, but, bootのdistractersを用意した。被験者は帰国生を除く日本人の高校生(36名)である。実験結果、考察①bitの母音を4msecずつ長くする実験では、「長くなればなるほどbitではなくbeatと知覚される」と仮定したが、編集を加えていないオリジナルのbitの知覚が39%と低く、そもそもbitの知覚が出来ないということが分かった。この原因としては、日本語の音素にはlax[I]に近い音がなく、lax[I]が日本語の「イ」と「エ」の中間の音に似ていることが考えられる。これを裏付ける結果として、50%の被験者がbetを選択していた。さらに4msecずつ長くした場合の結果においても、bitの知覚がさらに低くなるが、beatがさほど選択されず、不安定な結果になった。故に統計分析は行わなかった。②beatの母音を4msecずつ短くする実験では、「短くなればなるほどbeatではなくbitと知覚される」と仮定したが、その通りの結果が出た。つまり、短くすればするほど一定の割合でbeatの正解率が低下した。オリジナルのbeatは正解率が94.4%で、8msec短くしたbeatでは61%であり、統計的有意差が出た。また、オリジナルのbeatの知覚でのbitの出現率が5.6%、8msec短くしたbeatの知覚ではbitの出現率が61.1%であり、ここでも統計的有意差が出た。ゆえに、日本人学習者にとってtense[i:]の知覚は8msec短くすることで難しくなり、それを境にtense[i:]をlax[I]と知覚することが分かった。このように、tense[i:]の知覚において日本人学習者が音長に依存する理由としては、日本語の「イ」がtense[i:]と非常に似た音であることが考えられる。これらの知覚の実験に加えて、アンケートを行った。そこでは「ネイティブスピーカーのような発音をしたいか」という質問に対し、学習者の52.8%が「そう思う」、36.1%が「非常にそう思う」と回答した。このことから、多くの日本人学習者(本研究では高校生)が「ネイティブスピーカーに近い発音の習得」を英語学習におけるニーズとして持っていることが分かった。このことから、tense[i:]とlax[I]の識別はコミュニケーションにおいてはあまり重要ではないかもしれないが、学習者が習得したいと望んでいる以上、我々英語教師には少なくとも各々の音の理論的説明と、その産出・知覚の指導を行う能力が求められると言えるだろう。