2024/04/19 更新

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ナカイデ サトシ
中出 哲
所属
商学学術院 商学部
職名
教授
学位
博士(商学) ( 2015年07月 早稲田大学 )
法学修士 ( 1993年12月 ロンドン大学 )
プロフィール

1.研究領域

保険制度、保険法を研究している。保険会社・保険持株会社で28年間勤務した実務経験や海外における研究(ロンドン大学LSE、ケンブリッジ大学、エクセター大学、マックス・プランク外国法国際私法研究所)を研究に生かしている。保険制度全般を対象として研究しているが、特に、損害保険契約、なかでも海上保険、再保険などのグローバルな保険について研究を進めている。世界保険法学会・海上保険部会長、世界金融消費者学会の常務理事として国際的活動にも力を入れ、わが国の保険制度や保険法について外国への発信にも努めている。これまで10か国以上において研究報告・講演しており、海外の保険法研究者とのネットワークを研究にも生かしている。2021年現在、再保険契約の原則を条文化する国際プロジェクト(PEICL)における条文起草にも加わっている。

2.所属大学における活動

早稲田大学においては、商学部と大学院において、保険論、海上保険、英語による授業、法学部大学院においてイギリス海上保険法の授業を行っているほか、商学学術院・産業経営研究所の所長として、商学研究教育の支援、産学連携などにも力を入れている。

経歴

  • 2022年09月
    -
    継続中

    産業経営研究所   所長   商学学術院副学術院長

  • 2013年
    -
    継続中

    早稲田大学商学学術院教授

  • 2019年11月
    -
    2022年09月

    早稲田大学エクステンションセンター所長

  • 2016年09月
    -
    2017年09月

    マックス・プランク外国法国際私法研究所   客員研究員

  • 2015年09月
    -
    2016年08月

    英国 エクセター大学   法学部   名誉訪問教授

  • 2009年
    -
    2013年

    早稲田大学商学学術院准教授

  • 2004年
    -
    2009年

    明治学院大学法科大学院非常勤講師

  • 1981年
    -
    2009年

    東京海上日動火災保険、東京海上ホールディングス

  • 1995年
    -
    1997年

    九州大学経済学部客員助教授(東京海上火災保険より出向)

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学歴

  • 2015年07月
    -
     

    早稲田大学   博士(商学) 論文  

  •  
    -
    1996年

    University of Cambridge   法学研究科   法律学研究ディプローマ  

  •  
    -
    1993年

    London School of Economics and Political Science   法学研究科   法学修士  

  •  
    -
    1981年

    一橋大学   商学部   商学科  

委員歴

  • 2023年01月
    -
    継続中

    国際金融消費者学会  プレジデント

  • 2022年09月
    -
    継続中

    産業経営研究所  所長

  • 2019年04月
    -
    継続中

    財務省  第5入札等監視委員会委員

  • 2018年06月
    -
    継続中

    日本漁船保険組合  損害審査委員会委員

  • 2017年09月
    -
    継続中

    厚生労働省  全国健康保険協会船員保険協議会委員

  • 2015年11月
    -
    継続中

    Project Group of Drafting Committee of Principles of Reinsurance Law  Corresponding Member

  • 2015年11月
    -
    継続中

    再保険契約原則起草国際プロジェクト  助言委員

  • 2018年10月
    -
    2023年11月

    日本保険学会  評議員

  • 2018年11月
    -
    2022年09月

    早稲田大学エクステンションセンター所長  所長

  • 2014年09月
    -
    2015年07月

    水産庁  漁船保険漁業共済事業に関する検討会委員

  •  
     
     

    世界保険法学会  プレジデンシャル・カウンシル、海上保険部会委員長

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所属学協会

  •  
     
     

    国際金融消費者学会

  •  
     
     

    国際保険学会(AIDA−事務局:ロンドン)

  •  
     
     

    日本私法学会

  •  
     
     

    日本保険学会

研究分野

  • 民事法学

研究キーワード

  • 海上保険、損害保険、保険法、金融消費者保護、ビジネス法務

受賞

  • 大隈学術奨励賞

    2018年10月   早稲田大学  

    受賞者: 個人

  • 日本保険学会賞(著作の部)

    2016年10月   日本保険学会  

  • 2012年住田正一海事技術奨励賞

    2012年11月  

  • 2012年山縣勝見賞(著作賞)

    2012年05月  

 

論文

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書籍等出版物

  • 保険関係訴訟 第2版

    中出 哲( 担当: 分担執筆,  担当範囲: 第6章 損害保険訴訟と保険業法 第1節 訴訟対応における基本的視点)

    民事法研究会  2023年03月

  • 船舶衝突法

    箱井, 崇史, 松田, 忠大, 雨宮, 正啓, 中出, 哲, 長田, 旬平( 担当: 共著,  担当範囲: 第6章 船舶衝突と海上保険)

    成文堂  2023年02月 ISBN: 9784792327910

  • 論点体系 保険法1 第2版

    中出哲( 担当: 分担執筆,  担当範囲: 3条、18条、19条、22条)

    第一法規  2022年07月 ISBN: 9784474072244

  • 企業損害保険の理論と実務

    中出, 哲, 嶋寺, 基, 長尾, 健( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: 第1部「企業損害保険の枠組みと特徴」第1章から9章(1-65頁))

    成文堂  2021年08月 ISBN: 9784792342685

  • 新 保険法コンメンタール(損害保険・傷害疾病保険)

    中出 哲( 担当: 分担執筆,  担当範囲: 第9条(超過保険80-90頁)、第10条(保険価額の減少91-94頁)、第18条(損害額の算定146-150頁)、第19条(一部保険151-155頁)、第26条(請求権代位218-239頁))

    公益財団法人 損害保険事業総合研究所  2021年06月

  • 海上保険-グローバル・ビジネスの視点を養う-

    中出 哲( 担当: 単著)

    有斐閣  2019年02月 ISBN: 9784641165403

  • An International Comparison of Financial Consumer Protection

    中出哲( 担当: 分担執筆)

    Springer  2018年07月 ISBN: 9789811084409

  • 基礎からわかる損害保険

    中出哲, 中林真理子, 平澤敦監修( 担当: 監修)

    有斐閣  2018年06月 ISBN: 9784641165267

  • 'Pre-contractual Duties under the Japanese Law' contained in the book 'Carter v Goehm and Pre-Contractual Duties in Insurance Law A Global Perspective after 250 Years'

    中出 哲( 担当: 分担執筆)

    Hart Publishing  2018年05月 ISBN: 9781509916047

     概要を見る

    保険契約締結時の契約当事者の義務(告知義務、説明義務等)について日本法の内容、特徴、課題等を英文で紹介したもの。

  • 「第5章 保険契約」『保険学 補訂版』

    中出 哲( 担当: 分担執筆)

    有斐閣  2016年12月 ISBN: 9784641184343

  • 「保険」(早稲田大学同攻会『商学入門』収納)

    中出 哲( 担当: 分担執筆)

    早稲田大学同攻会  2016年09月

  • 損害てん補の本質 -海上保険を中心として-

    中出哲( 担当: 単著)

    成文堂  2016年03月 ISBN: 9784792342586

     概要を見る

    日本保険学会賞(著書の部)受賞(2016年10月)

  • 損害保険市場論 第8版

    佐野誠, 中出哲, 井口浩信, 章, わが国の損害保険市場, 「ロイズ」, 章, 損害保険市場の課題と展望, 執筆

    損害保険事業総合研究所  2015年06月

  • 論点体系 保険法1 3条(損害保険契約の目的)、18条(損害額の算定)、19条(一部保険)、22条(責任保険契約についての先取特権)

    中出 哲, 山下友信, 永沢徹編著

    第一法規  2014年07月

  • 海上保険法概論 改訂第4版

    今泉敬忠, 大谷孝一, 中出哲

    損害保険事業総合研究所  2014年06月

  • 経済学辞典

    金森久雄, 荒憲治郎, 森口親司編, 中出 哲分担

    有斐閣  2013年12月 ISBN: 9784641002098

  • 現代海上保険

    大谷孝一, 中出哲監訳

    成山堂  2013年11月 ISBN: 9784425361816

  • 損害保険市場論 第7版

    佐野誠, 中出哲, 井口浩信, 章, わが国の損害保険市場, 「ロイズ」, 章, 損害保険市場の課題と展望, 執筆

    損害保険事業総合研究所  2013年05月

  • はじめて学ぶ 損害保険

    大谷孝一, 中出哲, 平澤敦編著, 章, 損害保険の契約, 章「その他の損害保険, 執筆

    有斐閣  2012年06月 ISBN: 9784641184053

  • 船舶衝突法 *2012年住田正一海事技術奨励賞受賞

    箱井崇史編著, 章, 船舶衝突と海上保険, 執筆

    成文堂  2012年06月 ISBN: 9784792326272

  • 保険論 第3版

    大谷孝一編著, 第, 章, 現代社会における保険の役割, 章, 保険規制, 章, 火災保険, 執筆

    成文堂  2012年03月 ISBN: 9784792342401

  • 海上保険の理論と実務 *2012年山縣勝見賞(著作賞)受賞

    木村栄一, 大谷孝一, 落合誠一編, 第, 章「海上保険の役割と研究の意義」IからIII, 章, 担保危険と免責危険, 章, 因果関係, 章, 危険事情の限定と危険の変動, 章, 損害てん補, 執筆

    弘文堂  2011年08月 ISBN: 9784335354854

  • 損害保険市場論

    佐野誠, 中出哲, 田爪浩信著, 章, わが国の損害保険市場, 「ロイズ」, 章, 損害保険市場の課題と展望, 執筆

    損害保険事業総合研究所  2011年06月

  • 保険学

    近見正彦, 堀田一吉, 江澤雅彦編, 章, 保険契約, 執筆

    有斐閣  2011年05月 ISBN: 9784641183957

  • ヨーロッパ保険契約法原則(翻訳) 原著:Principles of European Insurance Contract Law

    原著者, ヨーロッパ保険契約法リステイトメント, プロジェクト・グループ, 翻訳者, 小塚荘一郎他共同翻訳, 分担翻訳, 章(保険契約者と被保険者が異なる, 章, 被保険利益, 担当

    損害保険事業総合研究所  2011年04月

  • 集合訴訟の脅威 − 企業経営・経済成長戦略に与える影響

    西村高等法務研究所責任編集, 第, 章 集合訴訟制度が日本経済, 社会に与える影響 その, アメリカの状況及び保険制度への影響について, 共同執筆

    商事法務  2011年03月 ISBN: 9784785718527

  • 専門訴訟講座3 保険関係訴訟法

    塩崎勤, 山下丈, 山野嘉朗編, 第, 章損害保険訴訟と保険業法第, 節, 訴訟対応における基本的視点, 執筆

    民事法研究会  2009年12月 ISBN: 9784896285826

  • 保険論(第2版)

    大谷孝一編著, 第, 章, 現代社会における保険の役割, 章, 保険規制, 章, 火災保険, 執筆

    成文堂  2009年09月 ISBN: 9784792342159

  • 保険論

    大谷孝一編著, 第, 章, 現代社会における保険の役割, 章, 保険規制, 章, 火災保険, 執筆

    成文堂  2007年04月 ISBN: 9784792342036

  • 保険法

    高松基助編著, 第, 章, 海上保険契約, 執筆

    中央経済社  2006年07月 ISBN: 4502940402

  • 新・裁判実務大系19 保険関係訴訟法

    塩崎勤, 山下丈編, 保険料の不払いと契約の解除, 執筆

    青林書院  2005年09月 ISBN: 4417012342

  • 企業ビジネスと法的責任

    沢野直紀, 高田桂一, 森淳二朗編, 損害保険の損害填補義務, 保険制度における損害填補の特徴とその可能性, 執筆

    法律文化社  1999年11月 ISBN: 4589021730

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講演・口頭発表等

  • Earthquake Insurance and AI, Recent Development

    中出 哲  [招待有り]

    AI Insurance Workshop  

    発表年月: 2022年11月

  • 損害鑑定の理論と実務

    中出哲  [招待有り]

    損害鑑定フォーラム  

    発表年月: 2021年12月

    開催年月:
    2021年12月
     
     
  • Exclusion Clauses in Insurance Policy - Is it disadvantageous for Policyholders?

    中出 哲  [招待有り]

    2021 K-ASEAN Risk Management and Insurance Conference  

    発表年月: 2021年12月

    開催年月:
    2021年12月
     
     
  • 地震リスクに対する企業保険制度の課題 趣旨説明

    中出 哲

    日本保険学会全国大会  

    発表年月: 2021年10月

  • Digital Transformation- Session Chair

    中出 哲

    金融消費者国際フォーラム(GFFC)2021年世界大会  

    発表年月: 2021年08月

    開催年月:
    2021年08月
     
     
  • 保険契約における免責条項の意義

    中出 哲

    日本保険学会九州部会  

    発表年月: 2021年03月

    開催年月:
    2021年03月
     
     
  • The Recent Development of Principles of Reinsurance Contract Law and its Significance

    中出 哲  [招待有り]

    台湾保険法学会・政治大学法学院財経法センター  

    発表年月: 2019年12月

    開催年月:
    2019年12月
     
     
  • The Duty of the Seller of Insurance Products under the Japanese Insurance Business Act

    中出 哲  [招待有り]

    台湾保険法学会・政治大学法学院財経法センター  

    発表年月: 2019年12月

    開催年月:
    2019年12月
     
     
  • ADR for Insurance Disputes in Japan

    中出 哲

    世界保険法学会 マラケシュ会議  

    発表年月: 2019年04月

    開催年月:
    2019年04月
     
     
  • Comparative Study of Law from the Japanese Perspective (英語)

    中出哲  [招待有り]

    ミラノ・ビコッカ大学大学院研究会   (ミラノ)  ミラノ ビコッカ大学法学部  

    発表年月: 2017年05月

  • Revision of the Japanese Insurance Business Act

    中出 哲  [招待有り]

    Symposium of Max Planck Institute for Comparative and International Private Law   (ハンブルク)  マックス・プランンク国際法外国私法研究所  

    発表年月: 2017年03月

  • Policyholder’s Pre-contractual Informational Duty、Insurer’s Pre-contractual Informational Duty

    中出 哲  [招待有り]

    Pre-contractual Duties in Insurance Law: Carter v. Boehm 250 years シンガポール国立大学  

    発表年月: 2016年11月

  • イギリス保険契約法の改正とわが国への示唆

    中出 哲

    日本保険学会全国大会  

    発表年月: 2016年10月

  • D&O Insurance in Japan

    中出 哲  [招待有り]

    グローバル・フォーラム ゲーテ大学  

    発表年月: 2016年09月

  • Revision of the Japanese Marine Insurance Law (英語)

    中出哲  [招待有り]

    ハンブルク大学 保険研究所研究報告会   (ハンブルク)  ハンブルク大学・独日法律家協会  

    発表年月: 2016年06月

  • Financial Market and Insurance Business in Japan

    中出 哲  [招待有り]

    成均館大学講演  

    発表年月: 2015年01月

    開催年月:
    2015年01月
     
     
  • “Protection of Consumers in the Area of Insurance: Status in Japan”

    中出 哲

    Global Forum for Financial Consumers, Seoul  

    発表年月: 2014年12月

  • 損害保険の歴史と仕組みーどのようにして生まれて進化してきたのか

    中出 哲  [招待有り]

    早稲田大学地域交流フォーラム  

    発表年月: 2014年11月

    開催年月:
    2014年11月
     
     
  • 海商法改正における個別的課題 海上保険契約

    日本海法学会  

    発表年月: 2014年10月

  • Costs for Removing Lost Cargo: Cargo or P&I ?

    中出 哲

    世界保険法学会 世界大会  

    発表年月: 2014年09月

  • 外航貨物および船舶保険で利用するイギリス法

    中出 哲  [招待有り]

    損害保険協会近畿支部  

    発表年月: 2014年08月

    開催年月:
    2014年08月
     
     
  • Marine Insurance Law in Japan

    中出 哲  [招待有り]

    6th East-Asia Maritime Law Forum  

    発表年月: 2013年10月

  • Subrogation under Japanese Law

    中出 哲

    世界保険法学会  

    発表年月: 2013年09月

  • The Significance of Marine Insurance in the Development of Marine Business

    中出 哲  [招待有り]

    蔚山港開講50周年記念国際セミナー・韓国海洋ビジネス学会  

    発表年月: 2013年07月

  • National Reports on Difficulties arising from Recourse Actions on Basis of Subrogation: Japanese Law

    中出 哲

    CILA 2013 Conference リスボン会議  

    発表年月: 2013年05月

    開催年月:
    2013年05月
     
     
  • 海上保険における直接損害てん補の原則について

    保険学セミナー  

    発表年月: 2013年04月

  • 保険価額について −保険法における定義とその意義−

    日本保険学会全国大会  

    発表年月: 2012年10月

  • 損害防止費用について

    日本保険学会九州支部  

    発表年月: 2011年12月

  • 生命保険市場としてのアジアー今後の展望と課題 問題提起・パネルモデレータ

    中出 哲

    第18回 産研アカデミックフォーラム  

    発表年月: 2010年06月

    開催年月:
    2010年06月
    -
    2010年07月
  • Legal Status of the Direct Claims against Marine Insurer in Japan

    中出 哲

    世界保険学会(AIDA)世界大会  

    発表年月: 2010年05月

  • Current Issues on the Corporate Governance and Internal Control within Insurance Companies in Japan

    中出 哲  [招待有り]

    International Seminar of Taiwan Insurance Institute  

    発表年月: 2010年01月

  • 保険会社における内部統制システムの構築 −会社法、金融商品取引法および保険業法の交錯と実務対応−

    日本保険学会  

    発表年月: 2008年01月

  • Sustainable Growth in the Field of Insurance Business

    中出 哲  [招待有り]

    オックスフォード神戸国際海事セミナー  

    発表年月: 2007年06月

  • 損害てん補と定額給付は対立概念か

    日本保険学会  

    発表年月: 1996年06月

  • 保険の分類と保険理論の適用

    生活経済学会  

    発表年月: 1996年06月

  • 保険代位制度について

    日本保険学会  

    発表年月: 1995年12月

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 非マスリスクを担保する保険契約の合理的規律の探求

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2023年04月
    -
    2026年03月
     

    中出 哲, 野村 美明, 小塚 荘一郎, 土岐 孝宏, 榊 素寛, 小林 一郎

  • グローバルな契約法理と調和する企業保険契約法リステイトメントの提案

    研究期間:

    2019年04月
    -
    2023年03月
     

     概要を見る

    企業分野の損害保険契約(企業保険契約)は、大規模リスクに対処して円滑な企業活動を支える。その契約は、家計分野の保険とは異なる特徴を有し、かつ国際的な整合性が求められる。しかし、わが国の保険法は、企業保険契約に特有の法理を示しておらず、判例も限られ、研究も少ない。本研究は、わが国の保険契約実務及びグローバル・スタンダードとなっている英米の保険約款、契約法を調査・分析し、企業保険契約に特徴的な基礎法理を抽出してグローバルな契約法理と調和する形で叙述し、「企業保険契約法リステイトメント」として体系化し、国内外に発信し、国際的な議論をリードしていくことを目標としている。本研究は、大規模リスクに対処する企業損害保険に特徴的な法理を抽出して、グローバルな契約法理と調和する形で「企業保険法リステイトメント」として体系化を目標とするもので、初年度(2019年度)は、以下の研究成果を挙げた。まず、企業保険契約・保険法の調査について、日本の実務について、中出にて実務専門家と面談等により調査を進めた。それによって得た知見は、ビジネス保険の図書に反映させるべく準備中である。外国については、2019年9月に野村・小塚がロンドンに出張し、大学関係者、弁護士、保険会社の実務専門家との面談を行って調査をすすめた(出張1名分に科研費を利用)。また、ハンブルクにて在外研究中の土岐によりドイツ保険契約法、榊他により米国の責任保険リステイトメントの調査を進めた。これらは、リステイトメントの研究の基礎となる。第二に、重要な企業保険である再保険について、小塚・中出にて、その契約原則の研究を進め、再保険契約原則(PRICL)の起草のための国際プロジェクトに参画し、特に、再保険期間に関する条文案の起草を担当して国際会議で討議した。11月にPRICL Version 1.0 が完成したことから、小塚・中出にて、条文の全訳に加え、その意義や内容を紹介する論文を執筆した(20年5月出版)。また、PRICLプロジェクトについては、中出より私法統一研究会及び台湾の保険法学会において研究報告を行った。さらに、国際的な情報交換・研究交流として、4月に中出が世界保険法学会(AIDA)のマラケシュ会議に出席(別の予算を利用)、10月に中出・土岐が欧州保険法学会(EU/AIDA)リスボン会議に出席し、外国の動きを理解するとともに世界の保険法研究者の交流を深め、複数の保険法研究者から共同研究に対する賛同を得た。以上の成果をもとに、法理の抽出作業に着手し、2年度目の研究につなげた。本研究は、企業保険契約の法理を明らかにするために、(イ)国内外実務の把握、(ロ)外国の学説・動向の調査、(ハ)法理の抽出、(ニ)法と経済学等を利用した法理の合理性検証、(ホ)リステイトメントの試案作成と改善、(ヘ)リステイトメントの公表と更なる国際的研究への橋渡しという過程を4年間で実施するものである。初年度である2019年度は、上記(イ)と(ロ)を中心に研究を進めることを計画していた。2019年度は、以上の6つの過程のうちの(イ)について、国内の実務は、中出にて保険会社との面談等により調査を進め、その内容は、ビジネス保険に関する図書としてまとめている状況にある。また、外国の調査(ロ)については、イギリスの実務については野村・小塚においてロンドン出張による調査を実施し、ドイツについては土岐により調査し、米国については、責任保険法リステイトメントに対象を絞って、榊ほかによりそれぞれ研究を進めた。外国に関する調査は、次年度にも引き続き実施する必要はあるが、主要な状況は把握できた。国際的な情報交換・研究交流については、予定していた二つの国際会議(世界保険法学会・モロッコ会議、ヨーロッパ保険法学会・リスボン会議)に出席して、主要国における保険契約法の動きの理解を深め、今後の情報交換・共同研究への打合せもできた。さらに、再保険契約に関する準則を契約原則としてまとめていく国際プロジェクト(PRICL)については、起草委員会への参画して、各国の状況を理解したほか、条文の一部を担当して、わが国からの国際的活動への重要な貢献を行うことができた。国内外の研究会において、プロジェクトの意義・内容を、わが国で最初に紹介し、また、その中間的成果を日本語論文としてまとめた(20年5月発行)。以上の通り、初年度は、概ね当初計画通り、調査研究を進めて、その成果の一部を発信することもできた。本研究では、企業保険契約の法理を明らかにするために、(イ)国内外実務の把握、(ロ)外国の学説・動向の調査、(ハ)法理の抽出、(ニ)法と経済学等を利用した法理の合理性検証、(ホ)リステイトメントの試案作成と改善、(ヘ)リステイトメントの公表と更なる国際的研究への橋渡しという過程を4年間で実施することを計画している。初年度の2019年度には、日本、イギリス、ドイツ、米国の状況の調査、保険法分野での世界的な研究プロジェクト(PRICL)への参画、保険法の国際会議への参加により、主として(イ)国内外実務の把握と(ロ)外国の学説・動向の調査を行った。また、その過程で(ハ)法理の抽出に向けた作業を進めた。今後は、上記の(ハ)法理の抽出を通じて、リステイトメント作成に向けた研究を精力的に実施していく方針である。外国法のうち、米国の保険法研究者による責任保険リステイトメントの策定・公表(2019年)は、世界の保険契約法に大きな影響を有する特に重要な研究であり、本研究でもそれについての研究をさらに進める。必要に応じて、米国研究者との意見交換も検討しているが、2020年4月時点では新型コロナウィリス問題により対面による実施が難しい見通しで、状況を見ながら実施方法を検討している。その他、ドイツの状況について論点を絞って研究成果をまとめていくことも検討中である。再保険契約法原則(PRICL)については、執筆した紹介論文が5月に出版後、それをもとに研究会等で研究報告を行い、合わせて今後のリステイトメントの考え方を固めていく。加えて、ヨーロッパの保険法のモデル法としてヨーロッパ保険契約法原則(PEICL)がすでに公表されており、その研究を深めて、その条文と解説を翻訳・出版することも計画している。国際交流と外国との共同研究については、新型コロナウィルス問題の状況を見ながら対応していく

  • 主要市場の企業保険約款の比較研究によるグローバル競争時代の保険契約理論の構築

    研究期間:

    2015年04月
    -
    2018年03月
     

     概要を見る

    企業損害保険の契約法理について、国際競争が進む海上保険と再保険を中心に、取引約款と基盤となる法律を比較研究した。特に、世界の中核市場のロンドンでは、国際競争力を意識した保険法の現代化(2015年法)が進み、最大善意、告知義務、ワランティ、条件等について抜本的修正がなされたことから、同法とその意義を研究して公表した。また、保険契約時の情報提供義務は各国で重要問題になっており、日本法と学説について外国で公表して国際的議論に結びつけた。さらに、再保険契約法原則の国際プロジェクトに参画して研究を進めた。研究成果は、日本語・英語の論文・研究書、国内外の学会研究会報告、海上保険の概説書などで公表した。イギリス2015年保険法は、企業保険取引の実務を踏まえ、かつ世界競争を意識し、公平で合理的な規律を示した重要な法である。その内容と意義を考察し、学会報告・論文として発表した。同法の紹介はわが国で最初となる。保険契約締結時の被保険者等の告知義務違反、保険者の情報提供義務は、多くの国において保険法の重要研究領域になっており、それに関するわが国の保険法、保険業法、その背景と理論を英語でまとめ、研究報告、図書、論文として世界に発信した。これらも日本から初の発信となった。また、研究の過程で、再保険契約法原則の策定に加わって日本からの貢献を行ったほか、海上保険の図書等にも研究成果を反映させた

  • AIGエジソン生命 生命保険業界におけるマーケティング手法の研究

    研究期間:

    2010年
    -
    2012年
     

  • 観光庁 観光経営マネジメント教育推進・旅行事業におけるリスク・マネジメント

    研究期間:

    2010年
    -
    2012年
     

Misc

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その他

  • ・2014年11月 ...

     概要を見る

    ・2014年11月 早稲田大学地域交流フォーラム(松山)「損害保険の歴史と仕組み—どのようにして生まれて進化してきたか—」
    ・2014年8月 日本損害保険協会近畿支部 講演「外航貨物および船舶保険で利用するイギリス法」
    ・2014年7月 損害保険判例研究・利益保険の判例研究報告
    ・2014年6月 産研アカデミック・フォーラム 保険会社のERM 討論者
    ・2014年1月 東京海上日動火災保険株式会社・講演「海上保険の勉強」
    ・2013年12月 早稲田大学商議員会フォーラム講演「早稲田大学 国際教育の取組」
    ・2010年6月 産研アカデミック・フォーラム No.18,2010 早稲田大学産業経営研究所主催、第18回産研アカデミック・フォーラム「生命保険市場としてのアジア」コーディネータ

  • Jan. 2014 CULCON Education Task Force Meeting, Presentation,"Strategy for Internationalization in Waseda University" (in English)

 

現在担当している科目

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社会貢献活動

  • 全国健康保険協会船員保険協議会委員

    厚生労働省 

    2017年10月
    -
    2019年09月

  • 財務省第5入札等監視委員会委員

    財務省・東京税関、横浜税関 

    2019年04月
    -
     

  • 山縣記念財団

    2019年03月
    -
     

  • 日本漁船保険組合 損害審査委員会委員

    2018年06月
    -
     

特別研究期間制度(学内資金)

  • 損害保険の契約理論の研究

    2015年09月
    -
    2017年08月

    イギリス   エクセター大学ロースクール

    ドイツ   マックス・プランク外国法国際私法研究所

他学部・他研究科等兼任情報

  • 商学学術院   大学院商学研究科

学内研究所・附属機関兼任歴

  • 2019年
    -
     

    産業経営研究所   兼任研究所員

特定課題制度(学内資金)

  • 非マスリスク保険の契約理論の研究

    2022年  

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    保険対象のリスクには、統計等から一定の予測が可能なマスリスク(人の死亡、交通事故等)だけでなく、データや件数が少なく予測が難しい非マスリスク(風力発電事故、大規模サイバーリスク等)も存在し、両者では保険の事業に違いがある。本研究は、リスクの特性に着目して保険契約の理論を探求するものである。両者の違いを解明するために、まずは保険学の2大原則(収支相等の原則、給付反対給付均等の原則)と大数の法則を取り上げ、日本の学説と英米学説の違いをもとに、研究に向けた問題提起を論文として発表した。今後は、この研究を科研費研究「非マスリスクを担保する保険契約の合理的規律の探求」としてさらに発展させていく。

  • 大規模災害に対する保険制度の在り方-損害てん補型保険の課題と新たな金融・保険商品

    2021年  

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    大規模災害における損害保険の課題を考察するため、文献調査のほか、保険会社の専門家、企業のリスクマネジャー、ブローカー、アジャスターからヒアリングした結果、家計と企業分野では課題に違いがあり、分けて論じる必要が明らかになった。家計分野では、大量の定型損害が問題で、AIやドローンなどの新技術の活用に加え、インデックス型の保険が有効である。一方、企業分野では、企業利益の確保を重視したリスクマネジメントの改善とそれに適合する保険手配が重要であることが分かった。インデックス型保険は、家計分野では有効としても企業保険に適合するか疑問で、損害てん補の認定を弾力的にした保険商品の開発が望まれる。

  • 自然災害に対する損害保険制度の研究

    2020年  

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    巨大化する自然災害に対する保険制度の在り方を考察するために、主要国(米国、中国、イギリス、フランス、オーストラリア等)の状況を調査した。その結果、国により主要な自然災害に違いがあり、多様な保険制度が存在するが、種々の形で官と民による協同がなされていることが分かった。それらのうち、民間保険を基本としつつ、政府財源の利用を最小化してレジリエンスを高めるイギリスの洪水再保険に注目した。しかし、洪水再保険制度は、現在まで何度もの法改正を経ており、その経緯や課題の詳細調査に意味があることも分かった。そこで、学外の競争的研究資金に応募し、採択され、更に研究を深めることとなった。

  • グローバルな契約法理と調和する企業保険契約法の研究

    2019年  

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    企業保険契約は、巨大リスクを対象とし、再保険による国際的リスク分散が必要で外国の動きを追う必要があり、その点から研究活動を行った。 2019年4月に世界保険法学会・マラケシュ会議、2019年10月に世界保険法学会リスボン大会に参加し、海上保険部会の座長のほか、専門家との交流を進めた。また、同10月、スペインの保険法会議に招聘され講演を行った。 12月に、再保険契約法原則起草プロジェクト(於:チューリッヒ)に加わり、また同月、台湾保険法学会と国立台湾大学において、PRICLについての講演と日本の保険業法等の講演(英語)を行った。 本研究課題助成費は、企業保険契約法研究のための上記活動の一部として、科研費獲得を目指した研究基盤形成に利用した。

  • グローバルな議論をリードする企業保険法の基礎理論

    2018年  

     概要を見る

    企業保険契約は、個人保険契約とは異なる特徴を有するが、保険法はそれについての特有の契約原則を示しておらず、本課題は、企業保険契約に特徴的な基礎法理の抽出していくものである。 本課題では、海上保険契約法をベースとして、企業保険に共通する法理の研究を進め、また、大規模リスクに対する再保険契約の研究を進めた。再保険契約については、契約法理を抽出してリステイトメント化する国際プロジェクト(PRICL)が始動し、その研究・議論も参考にした。本課題では、ドイツ、イギリスの研究者との意見交換を進め、今後の研究ネットワークの強化も図った。再保険契約原則についての研究は、北陸国際関係私法研究会において報告した。

  • 情報技術革新を背景とする世界における新たな損害保険商品の調査研究

    2018年  

     概要を見る

     本課題は、情報技術革新を背景とする保険制度・商品の変革について調査を進めたものである。 保険分野では、情報技術の革新は、募集販売面における変革として現れ、商品内容(料率、条件)にも結びついている。また、自動車や船舶の自動運転技術の進展は、自動車保険や船舶保険の在り方にも影響を与えている。特に、船舶保険では世界的に調和する仕組みを作り上げる必要がある。更に、情報技術の進展の一方、リスクも増大し、サイバー保険の重要性も高まっており、その開発や研究も重要となっている。  本課題では、関係情報を収集するとともに、ドイツやイギリスの研究者との意見交換を進め、今後の情報共有や共同研究のネットワークの構築を進めた。

  • 損害保険類似の金融制度に関する研究

    2017年  

     概要を見る

    リスクの巨大化のなかで、保険デリバティブ、キャットボンドなどは、損害保険以外の代替的リスク移転手法として重要である。それらは、損害査定の時間とコストが必要でなく、利点があるが、多くの難点も存在する。最も重要であるのは、実際に生じた損失と給付との関係である。全く損失がない場合の利益の発生は、リスク移転という観点からは無駄であり、一方、損失が生じるが給付が得られないというベーシス・リスクが存在する。従って、トリガーイベントの設定が極めて重要であるが、容易でなく訴訟にもなっている。対価の算定も容易でない。安全サイドにたって効率的な対価設定がなされない問題もある。法的分析を含め、更に研究が必要である。

  • 国際再保険の基礎研究

    2016年  

     概要を見る

     ヨーロッパの保険法専門家の発案の下、国際再保険契約法に関するモデル法を創設するプロジェクト(PRICL)が立ち上がり、申請者は、corresponding memberとして立法作業に加わることになった。 本研究課題は、わが国からの委員として貢献ができるように国際再保険の課題や契約理論を研究するものである。予算にて関係文献等を購入し、再保険に対する理解を深めることができた。2016年度に2回開催された起草委員会に出席し(出張費は別予算を利用)、条文起草に向けて種々の意見を述べ、日本法の説明文書も提出した。 委員会は今後も開催されるので、今後も作業に加わる。国際再保険に関する研究を深め、国際規則の策定過程で論文や講演をすることも計画している。

  • 北欧4カ国による海上保険約款(Nordic Marine Insurance Plan)の研究

    2015年  

     概要を見る

    北欧4カ国合計の船舶保険料収入は、イギリスに次ぐシェアを有している。その船舶保険で利用されているのがNordic Plan(最新版は2013年)である。同Planは、船会社、大学教授、弁護士、損害査定専門家等が共同で作成した約款で、関係者の利益バランスに配慮して作成されたものである。 筆者は、本研究資金を利用して、解説書等の資料を入手するとともに、ノルウェーに出張して、Planの起草者、運用者等と面談して、Planに関する各種情報を得るとともに、同Planの翻訳承諾を得て、研究にご協力いただけることになった。今後、Planの試訳や研究を論文誌等に発表していくことを計画している。なお、本プロジェクトは、科研費採択研究の進展にも資するものとなった。

  • 世界保険学会世界大会を通じた各国の保険法研究の動向調査とわが国からの国際発信

    2014年  

     概要を見る

    1.本課題の目的 本課題は、2014年9月開催の世界保険学会(AIDA)に参加して、世界各国における保険制度と保険法の最先端の情報を収集するとともに、海上保険法分野でわが国からの発信を行うものである。 2.成果 特に、イギリスの新保険法制定の背景、ヨーロッパ契約法原則に関する論点、スペインの新海上保険法など、日本では得にくい情報を収集できた。 また、わが国から唯一の発表者として、"Costsfor Removing Cargo: Cargo or P&I?"の演題で学会発表をした。東日本大震災などの事例を示して、法律が交錯する中でいかに法的問題を円滑に処理したか報告を行った。 更に、アジア・太平洋地域参加者のセッションが初めて設けられ、研究交流を高めていくコンセンサスが得られた。

  • 主要市場の海上保険約款の比較研究によるグローバル競争時代の保険契約理論の再構築

    2014年  

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    1.研究の目的  本研究は、企業活動がグローバル化する中で多様化する企業損害保険取引について、取引内容を契約法理論の視点から分析して、新たな時代の保険契約理論を打ち立てるという大きな構想の元、海上保険約款を主たる研究対象として、契約理論の考察を行うものである。 2.研究の成果  本研究は、3年の計画として構想したものである。本構想のもと、2015年度は、イギリスの保険契約理論に関する提案者のこれまでの研究を整理し、海上保険取引を中心として、損害保険契約の理論について、中核に存在する損害てん補性の問題、その位置づけと自由の範囲というテーマで、これまでの研究を整理して今後の研究の土台作りを行った。

  • オーストラリアにおける海上保険の実務と法制度の研究

    2013年  

     概要を見る

    1.本研究の目的 本研究は、オーストラリアにおける海上保険の実務と法制度についての研究である。 わが国では、現在、商法の第3編海商(海上保険を含む)の改定が検討されている。法制度の改革においては、研究者として、取引実態や他国の状況等も把握し、立法に向けて必要な提言を行う必要がある。 わが国の海上保険に関する商法規定は、100年前に当時のドイツ法を参考にして制定されたものであるが、その後、海上保険の実務では、イギリスの法と慣習が世界標準となり、わが国においてもイギリスの保険約款などが広く利用されてきた。 イギリスの海上保険法は、1906年海上保険法と判例法から形成されるが、時代遅れとの批判もある。オーストラリア他のコモンロー・諸国では、イギリスの1906年海上保険法とほぼ同一の内容の立法を定めている国が多いが、次第に、それからの変更が生じつつある。その中で注目される国の1つがオーストラリアである。同国では、イギリス法に倣って1909年海上保険法を制定していたが、1966年に改定が行われ、その後、その批判の高まりを背景に、主として学者を中心としてその全面改正案が2001年に示された。しかし、現時点では法改正には至っていない。オーストラリアでは、イギリス法をもとにしつつ、その変更が試みられているので、わが国における立法を考える上で参考になる。 本研究は、こうした目的をもってオーストラリアの海上保険法の法と実務を調査したものである。2.研究の方法 本研究では、まず、オーストラリアにおける海上保険法とその改正に関係する経過等について、文献・資料を調査した。そのうえで、2013年9月にシドニーで開催された世界保険法学会(AIDA)国際会議およびオーストラリア保険法学会大会にして、その場を利用してオーストラリアの専門家・実務家からヒアリングを行った。3.研究の成果(1)新海上保険法制定の見通し オーストラリアでは、1984年に保険契約法が制定されている。その内容は、イギリスの海上保険法や陸上の判例法を踏まえたイギリス法における種々の問題点も踏まえ、消費者保護等の視点も重視して制定されたものである。本研究を通じて、オーストラリア保険契約法に関する文献や情報を収集して、その基本的内容を理解することができた。 一方、2001年に示された1909年海上保険法改正案は、面談した実務家・弁護士等の意見では、変更に向けた差し迫った実務上の必要が少なく、むしろ改定に保守的な意見が強く、イギリスにおいて検討が進んでいる法律改正の動きを見守ってからでもよいとの意見を多く確認した。(2)オーストラリアの海上保険実務 オーストラリアでは、保険会社のほか、弁護士が海上保険の実務に深くかかわっていることが理解できた。また、イギリスの実務がほぼ踏襲されていることが理解できた。注目されるべき点としては、オーストラリアではエネルギー開発関係の海上保険が重要になっていることが理解できた。(3)人的ネットワークの形成 2013年9月にシドニーで開催された世界保険法会議の海上保険部会では、海上保険における保険代位の諸問題をテーマとして、筆者は、日本における現状と課題を報告するとともに、全体の司会も行った。会議を通じて、オーストラリア法、ドイツ法等と日本法との相違点等を理解することができ、また、わが国の法や実務について、オーストラリアの専門家等に伝えることもできた。また、司会・発表したことにより、多くのオーストラリアの保険法学者や弁護士の知己を得ることができた。こうしたネットワークの形成は、今後の研究活動につながる重要な収穫となった。

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