2024/04/23 更新

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ヤマグチ タダシ
山口 正
所属
理工学術院 先進理工学部
職名
教授
学位
博士

所属学協会

  •  
     
     

    錯体化学会

  •  
     
     

    日本化学会

研究分野

  • 無機・錯体化学

研究キーワード

  • 多核金属錯体、クラスター錯体、混合原子価状態

 

論文

  • 14 Step 15 Electrons Reversible Redox Behavior of Tetrameric Oligomer of Oxo-Bridged Triruthenium Cluster

    Tomohiko Hamaguchi, Haruko Nagino, Katsunori Hoki, Hiroaki Kido, Tadashi Yamaguchi, Brian K. Breedlove, Tasuku Ito

    Bull. Chem. Soc. Jpn.   78   591 - 598  2005年  [査読有り]

  • A rock-salt-like lattice structure consisting of monocationic and monoanionic

    Atsushi Toyota, Tadashi Yamaguchi, Asako Igashira-Kamiyama, Tatsuya Kawamoto, Takumi Konno

    Angew. Chem. Int. Ed.   44   1088 - 1092  2005年  [査読有り]

  • 14 Step 15 Electrons Reversible Redox Behavior of Tetrameric Oligomer of Oxo-Bridged Triruthenium Cluster

    Tomohiko Hamaguchi, Haruko Nagino, Katsunori Hoki, Hiroaki Kido, Tadashi Yamaguchi, Brian K. Breedlove, Tasuku Ito

    Bull. Chem. Soc. Jpn.   78   591 - 598  2005年

  • A rock-salt-like lattice structure consisting of monocationic and monoanionic

    Atsushi Toyota, Tadashi Yamaguchi, Asako Igashira-Kamiyama, Tatsuya Kawamoto, Takumi Konno

    Angew. Chem. Int. Ed.   44   1088 - 1092  2005年

  • Observation and dynamics of "charge-transfer isomers"

    T Ito, N Imai, T Yamaguchi, T Hamaguchi, CH Londergan, CP Kubiak

    ANGEWANDTE CHEMIE-INTERNATIONAL EDITION   43 ( 11 ) 1376 - 1381  2004年  [査読有り]

  • An Unbridged Platinum(III) Dimer with Added Chloro Ligands in Equatorial

    Tadashi. Yamaguchi, Osamu. Kubota, Tasuku Ito

    Chem. Lett.   33   190 - 191  2004年  [査読有り]

  • Synthesis, characterization, and stereochemistry of S-bridged (CoIIIMCoIII)

    Yu Chikamoto, Masakazu Hirotsu, Tadashi Yamaguchi, Takashi Yoshimura, Takumi Konno

    J. Chem. Soc. Dalton Trans.   2004   3654 - 3661  2004年

  • Observation and dynamics of "charge-transfer isomers"

    T Ito, N Imai, T Yamaguchi, T Hamaguchi, CH Londergan, CP Kubiak

    ANGEWANDTE CHEMIE-INTERNATIONAL EDITION   43 ( 11 ) 1376 - 1381  2004年

  • An Unbridged Platinum(III) Dimer with Added Chloro Ligands in Equatorial

    Tadashi. Yamaguchi, Osamu. Kubota, Tasuku Ito

    Chem. Lett.   33   190 - 191  2004年  [査読有り]

  • Synthesis, characterization, and stereochemistry of S-bridged (CoIIIMCoIII)

    Yu Chikamoto, Masakazu Hirotsu, Tadashi Yamaguchi, Takashi Yoshimura, Takumi Konno

    J. Chem. Soc. Dalton Trans.   2004   3654 - 3661  2004年

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書籍等出版物

  • "Ultrafast Electron Transfer within Mixed Valence Clusters" in Conprehensive Coordination Chemistry II Chaptor 2.61

    Tasuku Ito, Tadashi Yamaguchi, Brian K. Bleedlove, Casey H. Londergan, Clifford P. Kubiak

    Elsevier  2004年

  • "Ultrafast Electron Transfer within Mixed Valence Clusters" in Conprehensive Coordination Chemistry II Chaptor 2.61

    Tasuku Ito, Tadashi Yamaguchi, Brian K. Bleedlove, Casey H. Londergan, Clifford P. Kubiak

    Elsevier  2004年

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • π共役巨大クラスターの機能と界面アーキテクチャーの創製

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2013年04月
    -
    2016年03月
     

    阿部 正明, 久枝 良雄, 柘植 清志, 山口 正

     概要を見る

    オキソ架橋ルテニウム三核クラスターを用い、新規な大環状クラスターを合成し、構造決定することに成功した。ピラジン(pz)架橋クラスターでは、ユニットの1電子還元に帰属される過程が多段階波として観測され、分子内相互作用を示すことが分かった。この分子内相互作用の程度は大環状クラスターの核数と架橋配位子内のπ共役鎖の有無や長さに大きく依存した。メソ位に四つのは配位性官能基を有するポルフィリンを四座配位子に用い、カプセル型クラスターを合成し構造決定することに成功した。このカプセル型クラスターは、ポルフィリン面間距離で制御された空隙を内包し、長鎖アルキルジアミンの包摂に対し選択的な錯形成挙動を示した

  • 供与型白金-金属結合を有する新規クラスター錯体の合成とその機能

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2009年
    -
    2011年
     

    山口 正

     概要を見る

    本研究は,白金二価錯体が他の金属イオンに配位することにより形成される供与結合型白金-金属結合を有する新規の錯体の合成とその性質を調べた研究であり二つの成果からなる。一つ目は、配位される側の金属イオンとして金を用いて、白金-金複核錯体を合成し、その構造および性質を調べた。供与型の白金-金結合を有する錯体の構造が明らかにされたのは本研究が初めてである。二つ目はPt_2Hg型の三核錯体に、金属間結合の種類の異なる二種類の異性体、Pt(III)-Hg(0)-Pt(III)およびPt(II)→Hg(I)-Pt(III)が存在すること初めて明らかにした

  • 金属錯体を基盤とする分子集積体の構築とその化学機能

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2007年
    -
    2008年
     

    伊藤 翼, 山口 正

     概要を見る

    一群の分子集積体の構築法の一つとして, 供与型白金→金属間結合の形成に基づく合成手法を開発した. フェニルピリジンなど強い配位子場を与える炭素配位の配位子を2価の白金に配位させると, そのd^2_z 軌道の不対電子は強いドナーとして働く. これを利用してPt→Ag, Pt→Rh 結合などを含む20種余りの新規錯体集積体を合成した. また, 三核ルテニウム錯体をユニットとして多電子酸化還元機能をもつデンドリマー型の分子集積体を合成した. 更に、酸化還元電位勾配をもつデンドリマーを合成した

  • 金属クラスター錯体を基盤とするナノ構造体の創出とその化学

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2002年
    -
    2004年
     

    伊藤 翼, 山口 正, 梶原 孝志, BREEDLOVE Brian K, 神山 麻子

     概要を見る

    主な研究成果は,1)三核ルテニウムクラスターオリゴマー,2)供与型白金-金属間結合に基づくナノ構造体の創出,3)クラスター形成配位子の利用の三つに大別される.1)の研究では,三核ルテニウムクラスターのピラジン架橋2量体の非対称型混合原子価状態において,極めて珍しい「電荷移動異性体」の存在を見いだした.また,直鎖状の4量体を分子設計し,14段15電子の可逆な酸化還元波を示すオリゴマーを創成した.更に,4,4'-ビピリジンを架橋配位子として用い,第三世代および第四世代のデンドリマー型オリゴマーを合成した.これらは,それぞれ狭い電位領域で10,22電子の多電子移動を行うことを明らかにした.2)の研究では,さまざまな炭素配位の白金(II)錯体をドナーとして用い,白金(II)と銀(I)イオンが交互に直鎖状に並んだ一次元錯体,および,ロジウム間に金属間結合をもつロジウム二量体に白金(II)イオンを供与型結合を形成させ金属間結合で結ばれた白金-ロジウム-ロジウム-白金4核クラスター錯体を合成した.3)の研究では,p-tert-ブチルチアカリックス[6]アレーンやp-tert-ブチルスルホニルカリックス[4]アレーンなどが目標としたクラスター形成配位子として働くことを明らかにした.前者の系では,二つの配位子と10個の銅(II)イオンよりなる分子量3000におよぶ巨大なクラスター錯体を形成することを構造化学的に明らかにし,更に,銅(II)イオン間には強磁性的相互作用が働いていることも明らかにした.後者の系では,4つの配位子と8個のランタノイドイオンからなる分子量が約5500,直径は約1nmのホイール状の巨大分子「ランタノイドホイール」が生成することを見いだした

  • 供与型金属-金属結合に基づく多数核クラスター錯体の合成

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2002年
    -
    2003年
     

    山口 正

     概要を見る

    本研究では,供与型白金-金属結合を用いて核数の大きなクラスター錯体を合成することを目的としている。[Rh_2(CF_3COO)_4],をアクセプターとし[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2],[Pt(bpy)Me_2](Hphpy=phenylpyridine,Hthpy=thienylpyridine, bpy=bipyridine)をドナーとし錯体の合成を行った。[Pt(phpy)_2]や,[Pt(bpy)Me_2]を用いた場合,Rh複核錯体に両側から白金錯体が配位した[{Pt(phpy)_2}_2{Rh_2(CF_3COO)_4}]が得られた。Pt-Rh距離は2.818(1)Åであり比較的強い結合が形成されたことを示している。また,Rh-Rh距離は2.442(1)Åと若干長く,これはPt配位によるtrans影響と考えられ,PtがRhに強く配位していることを示している。[Pt(thpy)_2],を用いた場合も同様な四核錯体が形成されたが,この四核錯体がさらにthpy部分のSを通して[Rh_2(CF_3COO)_4]を架橋し一次元鎖を形成した錯体であった。また,新たにビフェニル誘導体-白金錯体,[Pt(dbbp)(L)](H_2dbbp=di-tert-butylbiphenyl, L=bpy or en),を用いて,これを銀イオンに配位させることにより新規クラスター錯体の合成も試みた。これまでAg^+をアクセプターとした場合,配位性の対陰イオンを用いない限り菱形骨格を有するPt_2Ag_2型の錯体が得られなかったのに対して,[Pt(dbbp)(L)],を用いてた場合,非(弱)配位性のClO^<4->,BF_4^-を対陰イオンとした場合にも菱形Pt_2Ag_2錯体が得られた。これはビフェニル誘導体上のCがAg^+に配位することにょりAg_2骨格を安定化しているためであると考えられた。実際にかさ高く立体的に配位不可能な対陰イオンであるSbF_6^-の場合,dbbp錯体を用いても直鎖錯体が得られこの考察を指示している

  • 供与型白金-金属結合を有する錯体

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2000年
    -
    2001年
     

    山口 正

     概要を見る

    本研究では,白金II価錯体がそのaxial方向で他の金属イオンに配位した錯体,特に,架橋配位子等の他のサポート相互作用を持たない錯体の合成を目的としている。ドナーとなる錯体として炭素配位配位子など配位子場の強い配位子を有する白金(II)錯体を用いて,強固な供与型白金-金属結合を有する錯体を合成数種合成することに成功した。以下にその結果をまとめる。(1)ドナーとして[Pt(phpy)_2](Hphpy=phenylpyridine),アクセプターとしてAg(ClO_4)を用いて,供与型金属-金属結合によりPtとAgが交互に積層した一次元鎖錯体を得ることができた。この錯体は直径が約2.3mmの巨大ならせん構造をとっており,一個の結晶の中ではらせんの向きが全て一方向に揃っている特徴を持つ。(2)同様なPt-Ag系であるがアクセプターのAgイオンの対イオンとして配位性の陰イオン(NO_3^-,CF_3COO^-等)を用いることにより菱形のPt_2Ag_2骨格を有するクラスター錯体を合成することができた。この錯体は供与型Pt→Ag結合以外にAg-Ag間に金属-金属結合を有する珍しい錯体であった。(3)アクセプターとして単核錯体ではなくRh複核錯体を用いることで,Pt→Rh-Rh←Pt骨格を有する異核四核錯体を合成することができた。この錯体は供与型および共有結合型の金属-金属結合を同時に有する珍しい錯体であり,また,供与型Pt→Rh結合を有する初めての錯体であった。これらの成果は高配位子場下の白金錯体が強固な供与型白金→金属結合を形成することを明らかにしたことのみならず,供与型金属→金属結合が新規のより核数の大きなクラスター錯体の構築に有用であることを示しており,今後のクラスター錯体の化学において重要な知見を与えるものである

  • ルテニウム三核錯体二量体が示す三核クラスター骨格間原子価振動

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1997年
    -
    1998年
     

    伊藤 翼, KUBIAK Cliff, 山口 正

     概要を見る

    研究代表者伊藤は,1995年12月,本研究の研究分担者であるPurdue大学Kubiak教授の研究室に赴き,同教授が当時開発したばかりの高性能電解赤外分光装置を用いて,ある種のルテニウム三核クラスター錯体の架橋二量体の一電子還元体の赤外吸収スペクトルの測定を行い,異常にブロードなCO伸縮振動スペクトルを観測し,これが分子内の動的過程に起因していることを示唆する事実を見いだした.相互に研究室を訪れ,類縁化合物を新たに合成して同様な実験を試み,また,吸収線形を解析するなど詳細な研究を行った結果,観測された現象が「三核クラスターユニット間の混合原子価状態における,ユニット間の分子内高速電子移動が誘起する赤外吸収バンドのコアレッセンス」であることが明らかとなった.赤外スペクトルのタイムスケールという極めて速い時間領域における動的化学現象が電磁波吸収スペクトルのコアレッセンスを引き起こしている例は,これまでほとんど知られておらず,それまでの成果を科学分野の最高級ジャーナルの一つであるScience誌に公表した〔Science,277,660-663(1997)).電子移動速度が最も速い系の速度定数は,10^<12>s^<-1>のオーダーであった.更に,混合原子価中心間の距離を種々変化させた化合物や,架橋配位子の種類を変えユニット間の電子的相互作用の程度を変化させた化合物を新たに合成し,これらの化合物系へ上記の電解赤外分光法を適用して高速分子内電子移動速度の評価を行った

  • 二価白金イオンからなる三角形型三核クラスター錯体

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1996年
    -
    1997年
     

    伊藤 翼, 山口 正

     概要を見る

    本研究は、筆者らが初めて見出した三角形型の骨格を含む白金IIクラスター錯体について,このタイプの骨格をもつ新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とする.以下に主な成果を示す.三角形型白金(II)三核クラスター錯体の合成法.このタイプのクラスター骨格を形成できる面内配位粒子はグリオキシム類,ジアミンなどの窒素配位の2座キレート配位子に限られるが,以下の二つのルートにより目的化合物を合成できることを明らかにした.使用する面内配位子の種類によってルートを選択する必要がある.1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成法.ドナー原子周辺が嵩高いジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(dqgH_2),およびN,N‘-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)などを面内配位子として使用する場合,この反応によって目的錯体の合成が可能である.(2)三角形型白金(II)クラスター錯体の面内配位粒子置換反応に基づく合成法.上記(1)で得られた三核錯体から誘導する方法で,エチレンジアミンやその誘導体に適応できる.2.195Pt-,131C-,1H-NMR,X線解析に基づく分子構造,EHMO計算による電子構造研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であるり,白金間には直接結合が存在する.スピン-スピン結合定数J_<Pt-Pt>の大きさは7500〜8000Hz程度である.3.クラスター面内の配位粒子置換反応性に関する研究.(1)グリオキシム類を含む系では,分子内水素結合のため反応性が著しく低い.(2)分子内水素結合が存在しない系では,置換活性ではあるが白金ー窒素結合が強く反応性は著しく高くはない

  • 二つのサイクラム骨格をキシリル基で連結した二核化配位子錯体

    科学研究費助成事業(東北大学)  科学研究費助成事業(一般研究(B))

    研究期間:

    1992年
    -
    1993年
     

    伊藤 翼, 山口 正, 木戸 寛明, 大塩 寛紀

     概要を見る

    本研究は,分子内に二つの環状配位子を含む二核化配位子を設計し,その複核金属錯体における複核サイトの有効利用を目指した構造の構築およびその応用を目的としたものである。以下の成果が得られた。
    1.二つのジメチルサイクラム環を6-位の炭素の位置で,オルト-,メター,およびパラ-キシリル基で連結した新しい二核化配位子を合成した。
    2.主としてオルト-キシリル基連結した二核化配位子(L)について,ニッケル(II),亜鉛(II),コバルト(III),カドミウム(II),ルテニウム(III)などの遷移金属イオンを含む十余種の新規複核錯体を合成した。
    3.良好な単結晶が得られた3種の二核錯体についてX線構造解析を行った。いずれの場合にも,二つのジメチルサイクラム環は当初の意図どうり対面型(face-to-face)構造をとっており,金属イオン間にはハロゲン化物イオンや炭酸イオンが架橋配位し,金属間距離は5.4〜5.8A程度に保たれていることが解った。
    4.上記のようなねらいどうりの構造の構築は,環状配位子部分に意図的にメチル基を導入することによって達成されている。メチル基をもたない類似の二核化配位子を合成し,その複核ニッケル錯体のX線構造解析を行い,この分子設計指針の正しさを検証した。
    5.複核サイトの利用については,つぎのような成果を得た。
    (1)亜鉛(II)錯体[Zn_2(L)]^<4+>は弱アルカリ性水溶液中で空気中の二酸化炭素を取り込み炭素イオン架橋錯体を与える。
    (2)塩化物イオン架橋ニッケル(II)複核錯体[Ni_2(μ-Cl)Cl_2(L)]^+は,結晶状態において・・-Ni-Cl-Ni-Cl-Ni-・・型の疑似的一次元鎖状構造を持ち,ニッケルイオン間には強弱二種類の反強磁性的相互作用が働いている(J=-48.2(3),J'=-11,2(3)cm^<-1>)。

  • 白金四核クラスター骨格を鋳型とする大環状キレート錯体の合成

     概要を見る

    1.[Pt_4(CH_3COO)_8]の面内配位座に種々のテトラミンを導入した錯体を合成し,そのX線結晶構造解析を行った。窒素間炭素数が2,2,2(既知),2,3,2のテトラミンを用いた場合,面内に配位子が2個,架橋-キ-レート架橋型で配位した錯体が,3,2,3のテトラミンを用いた場合,面内に配位子が1個,キレート-架橋-キレート型に配位し架橋酢酸イオンが2個残った錯体が得られた。以上のことから窒素間炭素数が3個の場合架橋型をとり,2個の場合キレート型をとり易く,また2個の場合は架橋型にもなり得ることが分かった。また3,2,3のテトラミンの場合過剰の配位子を加えても1個置換した錯体のみが得られること,テトラミンの末端の窒素と白金と面内酢酸イオンの酸素とのなす角が小さく歪みが大きいことを考え合わせると,大環状キレート配位子を合成する場合窒素間炭素数が3個の部分はあまり多く用いない方が良いことが分かった。また,環化反応については種々の反応を試みたが成功しなかった。2.以上の研究の他,[Pt_4(CH_3COO)_8]にアミノ酸(glycine,L-alanine,L-valine,L-phenylalanine,L-proline,L-hydroxyproline)を配位させた錯体の合成についても行った。アミノ酸はカルボキシル基による架橋配位とカルボキシル基とアミノ基によるキレート配位の2種類が考えられるが,X線結晶構造解析(glycine,L-proline錯体)の結果キレート配位であることが分かった。白金四核骨格がmeso型の立体構造をとるため,光学活性なアミノ酸を配位させた場合もともと等価であった白金の環境が2種類になる。この2つのサイトの環境の違いは白金核NMRの化学シフトに見られ,proline錯体において最も顕著であり,その差は133.5ppmとして観測された

  • 白金四核クラスター錯体の骨格変換反応

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    1.新規三核錯体の合成 [Pt_4(CH_3COO)_8](1)の面内配位座に嵩高いN,N′ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)を配位させることにより骨格変換反応を引き起こさせ新規三核錯体,[Pt_3(CH_3COO)_4(Me_2en)_3]^<2+>(2),を合成することに成功した。また,既知のシクロヘキサンジオンジオキシム(cdoH_2)の三核錯体,[Pt_3(CH_3COO)_4(cdoH)_2(cdoH_2)](3),のり面内配位座をエチレンジアミンで置換することにより新規三核錯体,[Pt_3(CH_3COO)_4(en)_3]^<2+>(4),を合成することに成功した。このことより嵩高い配位子を用いなくとも置換反応により新規三核錯体を合成できることが示された。2.三核錯体の構造 得られた錯体のうち2の過塩素酸塩,[Pt_3(CH_3COO)_4(Me_2en)_3](ClO_4)_2・NaClO_4,および本研究以前に合成したジメチルグリオキシム(dmgH_2)の三核錯体,[Pt_3(CH_3COO)_4(dmgH)_2(dmgH_2)](5),のについて結晶構造解析を行った。5は構造既知の3とほぼ同様な結合距離角度(骨格部分)であり白金三核骨格は二等辺三角形(Pt-Pt=2.60,2.52Å)であった。2については当初の目的通り面内配位子間に水素結合は存在していないが,面内配位子の配位窒素原子と面外の単座配位酢酸イオンとの間に水素結合が存在した。また白金三核骨格についても面内配位子間の水素結合がないことを反映してより正三角形に近く(Pt-Pt=2.59,2.56Å)なっていた。3.面内配位座の置換反応性 今回新規に合成された三核錯体には面内配位座間の水素結合が存在しないため高い反応性が期待された。そこでに2に過剰のenを反応させたところ完全にenに置換した4が得られた。dmg錯体やcdo錯体のグリオキシム配位子による置換では三置換体が得られていないことから,今回の三核錯体の置換反応性が高くなってはいるが1から期待されたほどの反応性ではなかった。これはエチレンジアミンの配位性が大きく白金との結合が強くなり脱離しずらくなったためと考えられる

  • 自己集合化に基づく白金クラスター骨格形成反応

     概要を見る

    本研究はC_<2v>型PtL_4フラグメントの自己集積化により新規の四核錯体等の合成を目的とした研究である。1.フラグメント単核錯体の合成(1) tren (=tris (2-aminoethyl) amine)を用いた単核錯体の合成:trenとK_2[PtCl_4],[PtCl_2(CH_3CN)_2]を反応させフラグメントとなり得る単核錯体の合成を試みた。しかし,これらの試みはいずれも赤褐色の沈澱を生成するのみであった。ここで得られた不溶性の赤褐色沈澱はtrenの4個目の窒素原子が隣の白金の空いたサイトに配位してできる錯体高分子であると考えられたが構造の決定には至っていない。(2) cyclenを用いた単核錯体の合成:trenの場合錯体高分子が得られた理由として四配位目の窒素原子が比較的自由度が大きいため隣接の白金に配位してしまったと考えられるため,よりrigidな四座配位子であるcyclenを用いて合成を行った。[PtCl (CH_3CN)_3](ClO_4)とcyclenとの反応により[Pt (cyclen) X]^<n+>(X=solvent or Cl)の混合物が得られた。混合物ではあるが多核化に支障なしとして以下の合成に用いた。2.多核錯体の合成上記で得られた錯体をアセトニトリル中でAgClO_4と反応させたが,AgClを除いた反応溶液は淡黄色であり目的の四核あるいは三核錯体は生成していないと推定された。3.今後の展開今回多核錯体の生成に成功しなかった理由として原料である単核錯体が純粋に得られなかったこと,および反応を配位性溶媒中で行ったことが考えられる。そこで今後は,cyclen錯体を精製し純粋な[Pt (cyclen) X]^+を得,それを原料として非配位性溶媒中でAgClと反応させることを目指す

  • 配位子として働く白金II価錯体

     概要を見る

    本研究は白金II価の錯体が配位子として他の金属イオンに配位し,供与型白金-金属間結合を形成した錯体を合成し,その錯体の性質を調べることを目的としている.前年度は配位させる白金II価錯体として炭素ドナーを有する配位子を持つ錯体,[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2],[Pt(Me)_2(bpy)](Hphpy=2-phenylpyridine,Hthpy=2-thienylpyridne),を用いて合成を行いかなり短いPt-AgおよびPt-Cd距離を有する錯体を得ることができた.本年度はAg+の対陰イオンを変え合成を行った.対陰イオンを若干配位性のあるNO_3-CF_3COO-にした場合PF_6-,ClO_4-の場合と異なりPt_2Ag_2四核錯体が得られた.この場合もPt-Ag結合は供与型白金-金属間結合であるが,Ptのd_<z^2>軌道はAg-Agの中間を向いており3中心2電子型であると考えられる.その結果がAg-Ag距離(約2.8Å)にも現れておりAg-Ag間に弱い結合が存在すると考えられる.また,原料白金錯体として[Pt(dbbp)(en)](dbbp=di-t-buthylbiphenyl,en=ethylendiamine)を用いて合成を行った.この場合対陰イオンの配位性の有無にかかわらずPt_2Ag_2四核錯体のみが得られた.この原料錯体の芳香環は配位性が強くAg+に配位しやすいことがこの原因と考えられる.また,配位される金属イオンとしてHg^<2+>を用いたところ酸化還元反応が起こりPt(III)-Hg(I)共有結合を有する複核錯体[PtXL_2HgX](L=phpy,thpy,X=Cl,Br),[PtX(Me)_2(bpy)HgX](X=Cl,Br)が得られた.Pt-Hg距離は2.523(I)-2.555(I)ÅでありPt-Hg間に単結合が存在していると考えられる.これらの白金-水銀複核錯体は供与型金属間結合でなく,酸化還元が起こった結果得られた共有結合型の金属間結合を有するPt(III)-Hg(I)複核錯体であり珍しい錯体であった

  • ルテニウム三核錯体二量体が示す三核クラスター骨格間原子価揺動

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    本研究は,平成9-10年度に行われ終了した国際学術研究(協同研究)の継続研究である.昨年までの研究において,本研究の研究協力者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校Kubiak教授とともに,同教授が開発した高性能電解赤外分光装置を用いて,ルテニウム三核クラスター錯体の架橋二量体の一電子還元体の赤外吸収スペクトルの測定を行った.その結果,異常にブロードなCO伸縮振動スペクトルが観測され,これが「三核クラスターユニット間の混合原子価状態における,ユニット間の分子内高速電子移動が誘起する赤外吸収バンドのコアレッセンス」であることを明らかにした.赤外スペクトルのタイムスケールという極めて速い時間領域における動的化学現象が電磁波吸収スペクトルのコアレッセンスを引き起こしている例は,これまでほとんど知られていなかった.本研究は上記研究を更に高度に展開することを目指し,相互に研究室を訪問し以下の研究を行った.(1)上記電解赤外分光装置を温度可変測定が可能なように改良して温度可変測定を行った.この系に於ける分子内電子移動速度のの温度依存性はかなり小さいことが明らかとなった.(2)これまでよりも電子供与性高いアザビシクロオクタンを周辺配位子とした三核クラスター錯体の架橋二量体を合成した.その電子移動速度定数はこれまでの中で最も速い1×10^<12>s^<-1>(-18℃)であった.この錯体の還元体が熱的に不安定なため上記の装置による低温測定により測定可能となった.(3)錯体に^<13>COを導入した非等価な二量体について測定を行った.非等価な二量体の一電子還元状態には還元サイトの違いにより2種類の異性体が存在するが,その比率が温度によって変わることを見出した

  • 白金メタラサイクル錯体を用いたクラスター錯体合成

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    本研究は,白金メタラサイクル錯体の白金イオンが強配位子場下におかれているためd_z2軌道のドナー性が増し強固な供与型白金-金属結合を形成できること実証,これを利用して新規クラスター錯体を合成することをめざしたものである.白金メタラサイクル錯体として[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2],[Pt(dbbp)(en)],[Pt(dbbp)(bpy)](Hphpy=phenylpyridine, Hthpy=thienylpyridine, H_2dbbp=4,4'-di-(t-butyl)biphenyl, en=ethylenediamine, bpy=2,2'-bipyridine)を用いて,つぎの三つのタイプの新規クラスター錯体を合成した.1)供与型白金-銀結合をもつ直鎖状クラスター錯体.用いる銀塩の陰イオンの種類や共存配位子の有無により,Pt:Agが2:1,3:2,白金と銀が交左に配列した一次元鎖錯体が生成する.このタイプの17種類の新規錯体を合成しその構造を明らかにした.2)白金と銀が対角に位置するひし形4核クラスター錯体.このタイプの構造は配位性の陰イオンを含む銀塩との反応で生成する.7種の錯体を合成しX線解析により構造を決定した.銀-銀間の距離は2.88Å程度と短く,4中心2電子結合のクラスター骨格が形成されることが分子軌道計算で確かめられた.3)Pt-Rh-Rh-Pt骨格をもつ4核クラスター錯体.Rh-Rh結合をもつトリフルオロ酢酸架橋ロジウム二核錯体との反応により得られる.3種の錯体を合成し構造を決定した.白金からの電子対はRh-Rh結合の反結合性軌道に供与されPt-Rh結合が生成する

  • 混合原子価状態の電子的カップリング定数の新しい評価法の開発

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    本研究の目的は,クラスIIに属する混合原子価状態について,二つの混合原子価中心間の電子的カップリング定数(H_<AB>)を熱力学的な実験データから評価する新しい手法を開拓することである.測定試料として[{(OAc)_6(CO)(L)Ru_3}-pyz-{Ru_3(L')(CO)(OAc)_6}]型の3種類の錯体,(L, L')=(dmap, py),(py, cpy),(dmap, cpy),を合成し,電気化学などのデータからこれらが本研究目的に合う非対称型の混合原子価状態を与えることを明らかにした.CO伸縮振動スペクトルの吸収線形解析から,非対称型混合原子価状態に期待される電荷移動異性体が存在すること,その存在比major/minorが2.0-4.5であることを明らかにした.これから両者のポテンシャルエネルギー差ΔGが140-311cm^<-1>と求められた.本研究では,混合原子価状態のポテンシャルエネルギー曲線の理論式を用いて,上記のΔGを与えるようなH_<AB>を決定できると期待していた.しかし実際にフィッテイングを行ってみると,H_<AB>が比較的小さいときにはmajor, minor化学種の存在に対応するポテンシャルエネルギーの極小値が見られるものの,H_<AB>が大きくなり混合原子価状態がクラスIIからクラスIIIに近づくとminor化学種の存在の根拠となる極小値を与えないことが解った.このため,Sutinらが提唱している理論式を用いるかぎり,上記の実験値ΔGを再現するようなH_<AB>を求めることは困難であり,本研究が目指したH_<AB>の新決定法の確立には残念ながら至っていない.理論式の補正が必要と思われる.なお,原子価間電子遷移のスペクトル解析から従来法によりH_<AB>=1100-1800cm^<-1>が得られている

  • 供与結合型金属―金属結合を用いたクラスター骨格の自在構築

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    本研究は,配位子場の強い炭素配位を有する白金II価錯体を用いてこれを他の金属イオンに配位させることにより核数の大きなクラスター錯体を合成することを目的としている。アクセプターとしてAg^+を,ドナーとして[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2]を用いた系では,非(弱)配位性の対陰イオンを用いた場,直鎖型の錯体が,配位性の対陰イオンを用いた場合,菱形骨格を有するPt_2Ag_2型の錯体が得られることがこれまでの研究で明らかになっている。本研究では新たにビフェニル誘導体を配位子に持つ白金錯体,[Pt(dbbp)(L)],を用いた。これまでの錯体と異なり非(弱)配位性のCIO^<4->,BF_4^-を対陰イオンとして用いた場合にも菱形骨格を有するPt_2Ag_2型の錯体が得られた。構造解析から,Ag^+が白金の配位子上の炭素にも配位されていることが明らかとなった。炭素によるAg^+への配位は[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2]の場合にも見られたことではあるが,[Pt(dbbp)(L)]の場合,一層顕著に表れている。このAg-C相互作用のために菱形骨格はAg-Ag結合に関して折れ曲がった構造となり,その折れ曲がりの程度は,対陰イオンの配位性が小さいほどより顕著である。このことからdbbp錯体の場合はAg-C、相互作用が対陰イオンの配位力を補っているために,弱配位性の対陰イオンの場合でもPt_2Ag_2菱形骨格を形成できたものと考えられる。実際にかさ高く立体的に配位不可能な対陰イオンであるSbF_6^-の場合,dbbp錯体を用いても直鎖錯体が得られこの考察を指示している

  • 分子型量子ドットセルラーオートマトンを目指した混合原子価環状四核錯体

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    これまで,J.R.Longらの結晶を含め,いくつかの対陰イオンを用いて結晶を作成したが,単結晶構造解析が行えない結晶であったり,構造解析が行えても対陰イオンの数に関してのdisorderがみられたため,これらの四核錯体が単離状態ではすべて二価の単一原子価状態であるということを,構造解析の面からから証明することに至っていなかった。しかし,対陰イオンをパラトルエンスルホン酸イオンにしたところ,良好な単結晶が得られたため,X線構造解析を行った。対陰イオンの数が四核錯体あたり8個存在し,すべてのルテニウムが二価で有ることが確認でき,J.R.Longらの結果が。間違いであることを裏付けた。昨年度の研究において、四核錯体の電気化学における非可逆性の原因がRu(cyclen)2+骨格にある,すなわち配位子cyclenのイミン化がおこっているためであることが明らかになったことから,大環状配位子を用いずに四核錯体を合成することにした。補助配位子をcyclenから4個のNH3配位子にした錯体について可逆な電気化学的挙動を示すかどうかについて検討するために,cis[Ru(NH3)4(py)]2+を合成し,その電気化学的測定を行った。サイクリックボルタモグラムはきれいな可逆波を示し,この骨格を有する四核錯体がQCAに適していると考えられた。そこで,このcis[Ru(NH3)4]2+骨格を有する四核錯体を合成することを試みたが,前記錯体と同様な合成法を試したにもかかわらず,数種のオリゴマーの混合物と思われるものしか得られず,現在のところ単離には成功していない

  • 供与結合型金属-金属結合を用いた多核錯体の自在構築

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    昨年度得られたPt->Cd錯体に関してさらに研究を行った。ドナーとして[Pt(dbbp)(en)](H2dbbp=4,4'-di-t-buthylbiphenyl),Cd源としてCdX2(X=Cl,Br,I)を用いて合成を行ったところ。[Pt(thpy)2]の場合と同様に四核錯体,[{Pt(dbbp)(en)CdI}2(μ-I)2],および5核錯体,[{Pt(dbbp)(en)CdX}2(μ-OH)2{Pt(dbbp)(en)}](X=Br,I)が得られた。何れも[Pt(thpy)2]の場合と同様な構造をとっており,Pt-Cd距離も前者が2.677(1)Å,後者が2.707(1)-2.714Åとほぼ同様な距離であった。五核錯体の中央部の白金は同様に四価に酸化されていた。また,これらの[Pt(dbbp)(en)]−Cd2+錯体は非常に強い発光を示すことが明らかになった。原料錯体である[Pt(dbbp)(en)]も比較的強い発光を示すことが知られているが,Pt->Cd錯体を形成した場合,長波長シフトしブロード化し,発光強度も数倍増強することが明らかになった。原料錯体の発光は白金上の配位子dbbpのπ-π^*励起状態からの発光と考えられているが,これらの錯体では,ピークがブロード化し振動構造が不明瞭となっていることから発光の励起状態がMLCTに変化していると考えられた。これは,Pt->Cd結合形成に付随する形でCdとdbbpの間に相互作用が起こりdbbpのπおよびπ^*軌道のエネルギーが低下したためと考えられる

  • 電位勾配を有するルテニウム三核鎖体多量体

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    ルテニウム三核錯体,[Ru3O(RCOO)6L3]n+,はターミナル配位子(L)および架橋カルボン酸イオンを変化させることによってその酸化還元電位を制御できる。周辺配位子としてdimethylaminopyridine(dmap)を有し,中央ユニットのみRu3骨格の架橋カルボン酸イオンが安息香酸イオンであり,それ以外のRu3骨格がプロピオン酸イオン架橋となるように設計したRu3デンドリマー錯体を合成した。このデンドリマーは酸化還元電位が周辺部から中央に向かって正電位側にシフトするように設計されている。このデンドリマーのサイクリックボルタモグラム(CV)はそれぞれの過程において1電子,3電子,6電子分の酸化還元波が見られ,目的通りの錯体が得られたことを示している。中央ユニットの酸化還元波のみが可逆性が悪いことから,この現象が電位勾配に起因するのではないかと考え,CVおよびDPVの掃引速度依存性などの測定を行った。還元方向の掃引に関しては掃引速度を変化させてもピーク位置に変化がみられなかったが,酸化方向に関しては掃引速度を速くするほどピーク位置が酸化側にシフトしていることが明らかになった。これは酸化方向の掃引の場合電位勾配が逆になるため,電極から直接電子移動が起こらなければならないためではないかと考えられたが,それ以外に吸着はと考えられる波も観測されたことから,より溶解度を上げるためにdmapのメチル基の代わりに長鎖アルキル基(炭素数11)を有する配位子を用いて同様なデンドリマーを合成した。溶解度の向上はみられたものの,CVを測定したところ全体的に可逆性の悪いボルタモグラムを示した。これはアルキル基が長すぎたため,電極と錯体の間に距離が生じたためすべてのユニットに対して可逆性が悪くなったと考えられた

  • 電位勾配を有するルテニウム三核錯体多量体

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    本研究はルテニウム三核錯体,[Ru30(RCO2)6(L)3]n^+を4,4'-bipyridineにより架橋したデンドリマー型十量体の末端配位子や架橋カルボン酸を変化させ,電位勾配を有する十量体を合成することおよび類似のデンドロンタイプの多量体を合成しその機能(特に多電子移動能)を調べることを目的としている。昨年度に引き続きdibutylaminopyridineを末端配位子として持つデンドリマーがた十量体を合成し,その電気化学的拳動を調べた。掃引速度を変えて微分パルスボルタモグラム(DPV)を測定したところ,中央ユニットに関するピークについて,ピーク位置の掃引速度依存性が掃引方向によって若干異なっていた.しかし,溶媒や支持塩などを変えて測定を行った結果,この変化は非常に小さいため,明らかな効果が観測されたとは言えないと結論付けた。また,傾斜型のデンドリマーの応用として,部分構造であるデンドロン型7量体を電子プールとする多電子移動触媒を合成し機能を評価した。以前,傾斜のないデンドロン型7量体にCoポルフィリンを連結した錯体を合成しその触媒能を調べたが,触媒効率がそれ程良くなかった。そこで,電子プールからのポルフィリン部への電子移動速度を速くするためにデンドロン部に傾斜をつけた物を合成し,その錯体の酸素の四電子還元に対する触媒能を回転リング電極を用いて調べた。しかし、残念ながら触媒能の向上は見られなかった,これは連結部のRu三核ユニットを安息香酸イオン架橋のものとしたため,Coポルフィリンよりも正電位になり逆に電子移動が遅くなったためではないかと考えられる

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現在担当している科目

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他学部・他研究科等兼任情報

  • 理工学術院   大学院先進理工学研究科

  • 附属機関・学校   グローバルエデュケーションセンター

学内研究所・附属機関兼任歴

  • 2022年
    -
    2024年

    理工学術院総合研究所   兼任研究員

特定課題制度(学内資金)

  • 電気伝導性配位高分子を用いた光電変換素子の作成

    2022年  

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     テトラヒドロキシベンゾキノン(THQ)とMn2+イオンの組み合わせによる電気伝導性の配位高分子(Mn-THQ)を用いた光電変換素子(FTO/TiO2/Mn-THQ/Pt)の性能の向上を目指した。電気伝導性配位高分子膜の作成条件、特に浸漬に用いる酢酸マンガンの溶液の組成を水(pH 8.2)-エタノール混合溶媒にすることなどにより、開放電圧が400 mV(約1.5倍),短絡電流が7.6 μA(約22倍)まで向上した。また、電子輸送層(ETL)をTiO2からZnOまたはSnO2に変更することで、開放電圧わ減少するものの短絡電流が1.7〜2.4倍まで向上した(それぞれ開放電圧280,300 mV,短絡電流18,13 μA)。

  • バンドギャップを有する配位高分子の合成とその機能

    2021年  

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     酸化還元活性であり、キレート部位を3カ所有するテトラヒドロキシベンゾキノン(THQ)と各種金属イオン(Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Zn2+)との組み合わせによる配位高分子(M-THQ)を合成した。粉末ペレット試料の電気伝導度は3×10-8〜1×10-6&nbsp;Scm-1と低いながらも電気伝導性を示した。拡散反射スペクトル測定よりMn-THQおよびZn-THQのバンドギャップが約1.1 eV,Fe-THQ, Co-THQ, Ni-THQ, Fe-THQのバンドギャップが0.7 eV以下であると推定された。また、THQの濃厚溶液のスピンコートにより得られるTHQ薄膜を金属イオンを含むエタノール溶液に浸漬させることでM-THQの薄膜が得られることがわかった。

  • 電気伝導性配位高分子の合成とその機能

    2020年  

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     酸化還元活性であり、キレート部位を3カ所有する1,4,5,8,9,12-hexaazatriphenylene (HAT)とCu(I)塩を溶液中で混合し黒褐色の配位高分子を得た。粉末ペレット試料の電気伝導度は2×10-8&nbsp;Scm-1と低いながらも電気伝導性を示した。X線光電子スペクトル測定からCu(I)とCu(II)の混合原子価状態になっていることが明らかになった。拡散反射スペクトル測定よりバンドギャップが約1.6 eVであると推定された。また、フッ素ドープ酸化スズ&nbsp;(FTO)基板をHAT溶液とCu(I)塩溶液に交互に浸漬させることにより薄膜を作成した。この膜のサイクリックボルタンメトリー測定から伝導バンドの下端の準位が約-0.5 V vs SCEであることが見積もられた。

  • 半導体特性を示す配位高分子の合成とその応用

    2019年  

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     酸化還元活性でり、キレート部位を3箇所有するtetrahydroxybenzoquinone&nbsp;のカリウム塩(K-THQ)とMn, Fe, Co, Ni, Cu, Znの酢酸塩を水溶液中で混合し配位高分子を得た。粉末ペレット試料の電気伝導度は10-8〜10-7&nbsp;Scm-1程度といずれも低いながら電気伝導性を示した。 また、フッ素ドープ酸化スズ&nbsp;(FTO)基板をK-THQ溶液とM(CH3COO)2溶液(M=Mn, Zn)に交互に浸漬させることにより薄膜を作成させ、さらにPtを蒸着させて電気伝導度を測定したところ、粉末ペレット試料に比べ電気伝導度が1-2桁向上した。これは微粒子間の接触の向上や薄膜作成時に配向性が揃ったことなどによるものと考えられた。

  • ルテニウム三核錯体を触媒とする窒素の還元

    2018年  

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     CF3COOHを0当量から10当量添加して,[Ru3O(CH3COO)6(py)2(N2)] (py = pyridine)のDMSO中でのサイクリックボルタンメトリー測定を行なった。酸を添加しない時に観測された約-1.4 V vs SSCEに観測される第二還元波のピークが、酸の添加により約 0.5 V正電位シフトした。次に,DMSO中で10当量のCF3COOHを加え,[Ru3O(CH3COO)6(py)2(N2)] のバルク電解を行い,アンモニアの発生を確認した。設定電位を-1.0V vs SSCEにして電解を行なったところ,錯体量の約40%のアンモニアの生成が確認できた。その結果,還元電位を適切に設定すれば,N2錯体の電気化学的還元によりアンモニアが発生する事が明らかになった。

  • 酸化還元活性な架橋配位子を用いた半導体特性を持つ配位高分子の合成とその応用

    2017年  

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     塩化亜鉛(II)とhexahydroxytriphenylene (HHTP)から得られた配位高分子Zn-HHTPは銅(II)の配位高分子と同様の積層二次元ハニカム構造であることがわかった。また、塩化クロム(III)から得られた配位高分子Cr-HHTPは、これまで知られている構造とは異なる三次元構造であると推定された。さらに、塩化マンガン(II)から得られた配位高分子Mn-HHTPは結晶性の良い新規の三次元構造であった。いずれの配位高分子も粉末ペレットの電気伝導度が〜 S/cmであった。いずれの試料もヨウ素酸化を行うことにより電気伝導度が一桁から二桁向上した。各粉末試料の拡散反射スペクトルを測定したところ、いずれも近赤外部にまで吸収が見られた。

  • 配位高分子型半導体の合成とその応用

    2016年  

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     塩化ニッケルとヘキサアミノベンゼン三塩酸塩から黒色粉末(1)を得た。また, 同様に塩化銅から黒色粉末(2)を得た。1および2の粉末X線回折のパターンはピークが多少ブロードではあるが,ハニカム型六方格子構造の二次元配位高分子であることをしめしていた。1と2の粉末試料の電気伝導度は0.1 S/cmおよび0.0001 S/cmであった。また,1のホール効果測定からn型半導体であった。また,硝酸鉄(III)とヘキサヒドロキシトリフェニレンからアモルファス性の黒色粉末(3)を得たが電気伝導度は1, 2に比べて小さく3×10^-6 S/cmであった。

  • 新規の発光性白金クラスター錯体の創成

    2012年  

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     まず供与型白金-金結合を有する錯体の発光挙動を調べた。白金錯体として[Pt(thpy)2] (Hthpy=thienylpiridine)アクセプターの金錯体として[Au(PPh3)]NO3を用いて溶液を混合して発光測定を行ったところ、発光強度が変わるのみで、スペクトルの形は[Pt(thpy)2]のスペクトルから変化しなかった。しかし、原料として、[Pt(dbbp)(en)] (H2dbbp=di-t-butylbiphenylen)と[Au(PPh3)]NO3を用いたところ、発光スペクトルに変化が現れた。この組み合わせでは、結晶を得ることはできなかったものの、[Pt(dbbp)(en)]と[Au(PPh3)]NO3を1:1で混合したジクロロメタン溶液のESI-MSを測定したところPt(dbbp)(en)Au(PPh3)+のピークがメインピークとして観測されたことから、溶液中ではPtとAuが1:1で結合した錯体が生成していると考えられる。Pt濃度を4.0×10^-5 Mに固定し、Au/Pt比を変化させた溶液の発光スペクトルを測定した。原料の[Pt(dbbp)(en)]は振動構造を伴ったπ→π*遷移由来の発光を示したが、Auを加えるとピークが長波長シフトし、600 nm付近にブロード化したバンドが観測された。これはPt-Au結合が形成されたさいに、LUMOがπ*(dbbp)からPt-Au結合の反結合性軌道(σ*)に変化したことにより、LMCT[π*(dbbp)→σ*(Pt-Au)]由来の発光が観測されたためではないかと考えられる。 次に供与型白金-インジウム結合を有する錯体の発光挙動を調べた。白金錯体として[Pt(thpy)2]アクセプターとしてIn(ClO4)3を用いて溶液を混合して発光測定を行ったところ、短波長側に大きな発光ピークの増大ががみられた。特に二等量以上加えた場合430 nm付近に強度が30倍以上の発光ピークがみられた。しかし、このピーク位置は比較的短波長側に観測されており、期待したリン光によるものではなく蛍光によるものではないかと考えられた。

  • ルテニウム三核錯体のデンドリマー型多量体の合成と性質

    2009年  

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    本研究はオキソカルボキシラト架橋ルテニウム三核錯体, [Ru3O(RCOO)6L3]n+,をユニットとし、4,4'-bipyridine を架橋配位子としたデンドリマー型あるいはデンドロン型の多量体を合成しその機能を明らかにするものである。このルテニウム三核錯体は三段階の可逆な酸化還元挙動を示す、その酸化還元電位はターミナル配位子Lや架橋カルボン酸イオンの違いによって制御できる。周辺配位子としてdimethylaminopyridine (dmap) を有し,中央ユニットのみRu3骨格の架橋カルボン酸イオンを安息香酸イオンとし,それ以外のRu3骨格がプロピオン酸イオン架橋となるように設計することにより中央から周辺への電位勾配を有するRu3デンドリマー錯体が合成できた。サイクリックボルタモグラム(CV)が示すように酸化還元電位が周辺部から中央に向かって正電位側にシフトしている。この錯体のCVでは中央部に関してのみ可逆性が非常に悪くなっており、このことがデンドリマーの傾斜によるものではないかと考えられたが、電極への吸着の可能性も考えられた。そこで吸着(析出)が起こりにくいように周辺配位子のdmapにさらにアルキル基を導入したデンドリマーを合成したところ、CVの中央部分の可逆性がよくなった。その結果dmapデンドリマーの可逆性の悪さは電位勾配によるものではないことが明らかになった。また、電位勾配による電子移動の加速を期待してデンドロン型の7量体をCoポルフィリンに導入し酸素還元触媒能を調べたところ、期待に反して傾斜の無いデンドロン錯体を有する触媒よりも悪いことが分かった。これは電位勾配を付ける為に連結部を安息香酸イオン架橋Ru3としたため、逆にこのユニットからポルフィリンへの電子移動が起こりにくくなったためと考えられる。

  • 白金(ⅠⅠ)四核クラスター錯体の面内置換誘導体の合成と性質

    2008年  

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    [Pt4(OAc)8]は4個のPt原子が正方形に配列した白金II価クラスター錯体であり、クラスター平面内の酢酸イオンのみが白金-白金間結合のトランス効果により置換活性であり、これまで各種配位子による置換誘導体を合成してきた。本研究ではピリジン環を持つN, N 二座配位子であるアミノピリジン誘導体(アミノピリジン(ap), クロロアミノピリジン(cap), メチルアミノピリジン(map))をクラスター面内配位座に導入し、その構造及び性質について調べた。[Pt4(OAc)8]と過剰量の配位子をジクロロメタン中でNaOHと共に数時間攪拌後、精製し目的の新規錯体を得た。得られた新規錯体は、いずれも平面内の4つの酢酸イオンが全てap, cap, mapに置換されていた。配位子を不足当量にし、NaOHを用いずに合成を行ったところ二置換体が得られた。また,条件を検討することにより一および三置換体も得られたが無,二.四置換体との混合物としてのみ得られた。また、無置換体と二置換体から一置換体が,二置換体と四置換体から三置換体がそれぞれ得られ,いずれもそれらの平衡混合物となり収束した。またcpaの二置換体の構造解析を行ったところ隣接する二つのサイトが置換されたものであった。しかし二置換体には相対する二つのサイトを置換した異性体の存在が考えられる。この異性体は,無置換体と四置換体との配位子均化反応において中間体として若干料存在することが明らかになった。

  • 白金(I I)四核クラスター錯体の合成と性質

    2007年  

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    [Pt4(OAc)8]は4個のPt原子が正方形に配列した白金II価クラスター錯体であり、クラスター平面内の酢酸イオンのみが白金-白金間結合のトランス効果により置換活性であり、これまで各種配位子による置換誘導体を合成してきた。本研究ではピリジン環を持つN, O 二座配位子であるヒドロキシピリジン(Hhp)、6-クロロヒドロキシピリジン(Hchp)、6-メチルヒドロキシピリジン(Hmhp)、及びN, S 二座配位子であるメルカプトピリジン(Hmp) をクラスター面内配位座に導入し、その構造及び性質について調べた。[Pt4(OAc)8]と過剰量の配位子をジクロロメタン中でNaOHと共に数時間攪拌後、精製し目的の新規錯体を得た。得られた新規錯体は、いずれも平面内の4つの酢酸イオンが全てhp, chp, mhp, apに置換されていた。配位子としてヒドロキシピリジン誘導体を用いた錯体の四核骨格の歪みは,白金四個の最小二乗平面を基準に評価するとhp四置換体が0.12Å,chp四置換体およびmhp四置換体では約0.20Å.と大きく異なっています。これはhpの6-位に置換基があることによる立体障害のためだと考えられます。また,この効果は195Pt-NMRにおいても見られ,hp四置換体のみ約300ppm低磁場シフトしていることが明らかになった。また,mp四置換体については立体障害は無いがS配位であるためにそのトランス効果によりPt-Pt距離が約0.05Å伸びておりその結果四核骨格も歪んでいることが明らかになった。

  • 供与結合型白金-金属結合を有する錯体の合成と発光挙動

    2006年  

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    白金錯体として[Pt(thpy)2]および[Pt(dbbp)(en)]を,アクセプターとしてCdX2 (X = Cl, Br, I) を用い,四核錯体, [{Pt(thpy)2CdX}2(μ-X)2] (X = Cl, Br, I),および, [{Pt(dbbp)(en)}2(μ-X)2] (X = Cl, Br, I),をすべて合成しX線結晶構造解析を行った。何れも同様な構造をしておりPt-Cd間に金属&#8722;金属間結合が形成されていることが明らかになった。発光スペクトルの測定を行ったが,残念ながら溶液中では若干の解離が起こっていることが確認できたので過剰のアクセプターを共存させての測定を行った。前者についてはクラスターが形成されても発光スペクトルがほとんど変化しないか若干の強度の減少が見られるのみであったのに対して,後者は原料の白金錯体の発光と比べて発光スペクトルの長波長シフトおよびブロード化が見られた。空気飽和条件下ではクラスター形成にともなって発光強度の大幅な増大が見られたが,脱気条件下で測定を行ったところ原料およびクラスター錯体とも強度の大幅な増大が見られた。その結果,脱気条件下で比較で比較すると,原料錯体のほうが強度が大きく,クラスター形成にともなって強度が低下していることが分かった。空気飽和化での結果との違いは,酸素による消光の違いを表しており,[{Pt(dbbp)(en)}2(μ-X)2]が酸素消光に対して非常に耐性があるということを表している。これは供与結合型白金&#8722;カドミウム結合の形成により酸素分子が近づきにくくなったためだと考えられる。また,これらの錯体の発光寿命の測定を行ったところ,寿命が約十分の一程度になっていることが明らかになった。このことに加えスペクトルの長波長シフト,ブロード化していることから,発光の励起状態について,原料の白金錯体が配位子由来の励起状態からの発光であるのに対して,クラスター錯体では金属&#8722;金属間電荷移動遷移状態からの発光になっていると考察した。

  • オキソ架橋ルテニウム六核錯体の合成と性質

    2006年  

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    六核錯体,[{Ru3O(C2H5CO0)4(μ-phenato)2}2(m2-O)]PF6,の合成方の改良を行った。反応溶液の塩基性を挙げることにより若干の収率の向上が見られたが,さらなる塩基の添加は収率の低下を招いたため,最良でも1%の収率のとどまった(ただし,これは後述する異性体の分離を厳密に行ったため,非常に小さい収率となっている)。また異性体の分離についても行った。高分離能のシリカゲルカラムにより分離を行った結果,2種類の異性体が存在することが明らかになった。一つは予備的に結晶構造が分かっていた錯体であり,もう一方はこれと同一の配位子セットを有する異性体であることが明らかになった。X線結晶解析を行ったところ,両者とも4つのプロピオン酸イオンと2つのphenato配位子により架橋されたRu三核骨格がオキソイオンにより架橋された構造であったが,phenato配位子の架橋している位置が異なっていた。前者の異性体では4つのphenato配位子が対称的に配置しているのに対し,後者は非対称に配置している物であった。より高純度に得られた前者の異性体について,電子スペクトルの測定を行った。単離状態において混合原子価状態を取ることから,特徴的な原子価間遷移(IT吸収)が見られることが期待されたが強すぎる相互作用のためか,明確な吸収は確認できなかったが,近赤外領域に複雑な吸収を示した。 また,類似の錯体として同様なphenato配位子が3つ架橋配位した三核錯体, [Ru3O(C2H5CO0)4(μ-phenato)(phen)2]PF6,の合成にも成功し,phenato配位子が同様な骨格では比較的安定に存在できることを示した。

  • オキソカルボキシラト架橋ルテニウム多核錯体の合成と性質

    2005年  

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     [Ru4O2(C2H5COO)7(phen)2](PF6) (phen = phenanthroline)の合成法の改良を行った。反応比等変化させRu四核錯体の合成に最適な条件を検討した結果,C2H5COOH / KOH比を5:1,RuCl3.nH2O / C2H5COOH比を1:15とすることにより若干の収率の向上を図ることができた(収率約5%)。また類似の骨格を有する[Ru4O2(RCOO)7(L)2](PF6) (R=C2H5, L=bypyridine; R=CH3, L=phen; R=CH3, L=bpy; R=CH3, L=dimethybipyridine) についても低収率ながら合成できた。NMRを測定したところ,何れの錯体も常磁性シフトを示したが,-15~30 ppmの範囲に限られており、同様な構造をとる他の金属イオンからなる錯体のシフト範囲に比べ非常に狭くなっていた。これはルテニウムが他の金属イオンと比べ、金属イオン間の相互作用が強く,特に中央部位の二つのルテニウムは金属-金属間結合を有していることが原因と考えられた。この四核錯体が可逆な酸化還元挙動を示したことから,電解電子スペクトル測定を行った。しかし,予想に反して,混合原子価状態におけるIVCTバンドと思われる吸収は見られなかった。 また,上記のphen錯体の合成時に副生する分子量の大きな錯体を単離生成し,予備的なX線構造解析を行ったところ,ルテニウム三核ユニットがオキソイオンにより架橋された六核錯体,[{Ru3O(C2H5CO0)4(μ-phen')2}2(μ2-O)],であることが明らかになった。このRu三核ユニットには通常のN,N'の2座配位と異なりN,N',Cの3座で配位するphen配位子がそれぞれ2個ずつ存在していた。

  • 分子素子を指向した多核金属錯体の構築

    2005年  

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     以前に得られた直鎖状のcatena-[{Pt(dbbp)(bpy)}2Ag2](SbF6)2 (1) (H2dbbp=4,4'-di-t-butylbiphenyl) の合成を参考にcatena-[{Pt(dbbp)(L)}2Ag2](SbF6)2.m benzen (L=4,4'dimetylbipyridine, m=1 (2); L=5,5'dimetylbipyridine, m=0.5 (3))の大きな単結晶を得ることができた。これらの錯体は何れも-Pt-Ag-Pt-Ag-の一次元構造をとっており、そのPt-Ag距離(2.7309(5)~2.8637(5)Å for (2); 2.816(2)~2.943(2)Å for (3))も短く金属-金属間結合からなる一次元鎖錯体であった。これらの錯体は錯体(1)とは異なり結晶溶媒であるベンゼンの喪失を起こさないことが明らかになったため、錯体(2)について四端子法により電気伝導度の測定を行った。しかし、ほとんど電気を通さない絶縁体であることが明らかになった。そこで光誘起の電気伝導を期待して光照射を行い電導度測定を行ったが、電気伝導度の向上は見られなかった。 また、これらの錯体を得る過程で大過剰ではなく小過剰のAg塩を用いることによって三核錯体[{Pt(dbbp)(L)}2Ag](SbF6).m benzene (L=phenanthrorine, m=2 (4); L=5,5'dimetylbipyridine, m=3 (5))が得られた。これらの錯体は2つの白金錯体がAgを挟む形で配位した三核構造であり,Pt-Ag距離が非常に短い(2.6961(5)~2.7265(5)Åfor (4)、2.667(1)~2.737(1)Å for(5)。また量錯体とも結晶中で隣接分子と互いにスタックし一次元差を形成していた(Pt…Pt=3.3~3.5Å)。

  • 分子型QCAを目指した混合原子価環状四核錯体

    2004年  

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     当初目的とした拡張Creutz-Taube 錯体[{(NH3)4Ru}4(pz)4]n+ (pz = pyrazine) の合成には至らなかったが,各Ruに配位した4つのNH3配位子を四座配位子である1,4,7,10-tetraazacyclododecane (= cyclen) により置換した誘導体,[{(cyclen)Ru}4(pz)4]8+,を合成しその性質を調べた。CH3C6H4SO3-塩として単結晶を得,X線結晶構造解析他を行い,錯イオンの電荷が8+,すなわち,すべてのRuがⅡ価であることを確認した。また,電気化学的測定を行い,二段階の酸化還元挙動(二段目の酸化過程はさらに分裂していると思われる)を示すことを明らかにした。酸化還元波が大きく二段に分裂してはいたが可逆ではないため,QCAとして用いるには不適当であることが明らかになった。この非可逆性について検討するために1/4ユニットのモデル錯体である[(cyclen)Ru(py)]2+を合成し,その酸化還元挙動を調べたところ,同様に非可逆な酸化還元挙動を示すことが明らかになった。このことから配位しているcyclenが可逆性を悪くしていると考えられ,cyclenが環状配位子であることや,cyclenが酸化を受けてイミン化を起こしやすいことなどが関係しているものと考えられる。 このcyclen誘導体に関しては,J. R. Long らが合成を行っているが, Longらはこの錯体が単離状態で+9の電荷を持ち,四段階の可逆な酸化還元挙動を示す(しかも,我々の結果と電位領域が大きく異なる)と報告している(J.Am.Chem.Soc. 2002, 124, 9042)。すなわち,我々の結果とLong らの結果が異なっているわけであるが,(1) Longらの測定に用いた試料の同定が元素分析のみ依っていることに対して,我々の試料はX線結晶構造解析を行ったものと同じ結晶を用いていること,(2) 四量体合成時にcyclenが酸化されイミン化したものを生成し,生成物が種々の混合物となりやすいことが明らかになったこと,(3) 1/4ユニットのモデル錯体である[(cyclen)Ru(py)]2+が我々の結果と同じ電位領域において不可逆な酸化還元挙動を示すことなどから,Longらの結果が誤っていると判断した。

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