2022/09/25 更新

写真a

イケシマ タイサク
池島 大策
所属
国際学術院 国際教養学部
職名
教授

兼担

  • 国際学術院   国際コミュニケーション研究科

  • 附属機関・学校   グローバルエデュケーションセンター

学位

  • 博士

 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • グローバル・コモンズを巡る中国による国際法形成に関する動態的研究

    研究期間:

    2017年04月
    -
    2020年03月
     

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    英文書評(1) ‘Book Review Issues Decisive for China’s Rise or Fall: An International Law Perspective. By Yuwa Wei. Singapore: Springer. 2019. Pp. xxv + 203.’, Transcommunication Vol. 7-1, spring 2020, pp. 49-51. と英文書評(2) ‘Book review Normative Readings of the Belt and Road Initiative: Road to New Paradigms. Eds by Wenhua Shan, Kimmo Nuotio and Kangle Zhang. Springer. 2018.’, Waseda Global Forum, No. 16, 2019, pp. 133-137. を執筆した。これらの中で、国際社会における中国の台頭がその一帯一路政策を通じて国際法の形成過程や関係諸国の発展に関与し、一定の影響を及ぼしつつある現実について、時代の変化や国際社会の動態的な性格の顕現として捉えるべきである旨、論評した。以上の結果、(1)現行国際法を維持しようとする米国をリーダーとする他の先進諸国陣営側からは、中国が南シナ海や北極海のような海洋への自国権益の主張拡大を試みることで現状への挑戦・変更を模索するかのように見えること、(2)こうした米中対立が海洋のみならず、宇宙空間での開発(衛星発射、デブリの処遇など) の分野や軍事競争の拡大と見られていること、さらには(3)サイバー空間での国家による管理・規制の度合いに対する法規制の諸問題(表現の自由に代表される人権の問題、知る権利と軍事情報の秘匿性の問題、他国への干渉や妨害等の行為の取締りなど)につき、米欧のような自由主義諸国と中国のような権威主義的中央集権諸国との対立が一層顕著になっていること、が特徴といえる

  • 近隣関係諸国に対する日本の海洋法政策とその戦略的意義

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    この3年間の研究により、課題に関する大幅な解明に向けて有意義な進展が見られたといえる。途中経過でもあるが、平均して毎年一本の学術論文及び学術報告・発表に加え、各種研究会での発表・報告と報告書作成など行い、所期の目標を達成することもできた。近時の進展が早い法現象のせいなどでさらに時間を必要とする個所もあるとはいえ、この研究成果を土台に、数年内により体系的かつ包括的な著作に仕上げることを目標に、これからの研究を進めることができそうである

特定課題研究

  • 国際法における民主主義と権威主義の位置づけに関する基礎的考察

    2021年  

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     一般に国際法は、国内的に民主主義(的)であるか権威主義(的)であるかを直接問わず、特定の政治体制やイデオロギーを要求しないといわれる。こうした考え方に修正を迫る論者や流派が特に冷戦終結後、民主主義を標榜する政治的思考や価値観を反映させた国際的な統治体制や正統性を論じる傾向が現れ、今世紀に入ると国際法に民主化を要請し、民主的統治を本質と考える主張が増えた。この流れに対して、経済的台頭著しい中国の行動や、実力行使を辞さないロシアの動きが脚光を浴びている。それは、国家の存立や治安維持の上で、今世紀に入って権威主義的統治体制の効率性が注目され、第二次世界大戦後に構築された国連(憲章)中心の国際秩序を揺さぶり、民主主義の統治根拠を問い直す現象が出てきたからでもある。

  • 中国に代表される権威主義的レジームが現行国際法に及ぼす影響とその意義

    2021年  

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     国際法は、従来、ある国家の政治体制(レジーム)やそのイデオロギーの在り方に規制を及ぼすことが国内干渉として国際法違反に当たることから、民主的であるか権威主義的であるかを問わなかった。しかし、冷戦後は、民主的統治を前提とした国際関係の構築が欧米を主導とした西洋諸国により、基本的人権の保障・保護や民主的統治を国家の基本的レジーム・価値観とするような傾向が高まった。他方、今世紀には中国やロシアのような自国の強力な統治形態を基礎に、国家の存立や運営を維持しようとするレジームも注視されている。効率的かつ強力な一体性を保持するための国家体制を築く権威主義的レジームの方に、途上国の中には感化され、国際法の生成発展の過程で、様々な影響を及ぼしてくるかどうか、今後、検討が必要である。

  • 中国の一帯一路政策が国際海洋法に及ぼす影響と日本の対応

    2021年  

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    中国の一帯一路政策(BRI)は、現行の国際海洋法(国連海洋法条約)そのものに何らかの影響を及ぼすことを意図して策定されたものではなく、何らかの体系的・組織的な国家実行や活動を前提としているものでもない。BRI自体は、中国の経済的な発展を背景として、交易や物流の観点から国家間、地域間、大陸間などの場所を隔てて点と点を線や帯で結び、それをさらに面に拡張して関係性を深化させていく将来構想(海洋版絹の道(MSR))を内実としている。BRI/MSRは、緊張や対立を孕む可能性のある側面以外にも、今後の国際社会における法の執行や法整備などの広い側面から関係当事国間の協力から地域的な協力へと拡大発展の可能性も示唆している。

  • 米中二超大国間における最近の国際海洋法履行状況の比較研究

    2020年  

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    米中二国間は、既に相当緊張した関係を有する中で特に東アジア周辺海域において、様々な形で対立を先鋭化させている。米国側およびその同盟諸国側からすれば、、中国の海洋進出が海警の公船による尖閣周辺への出現頻度の増大、常態化、南シナ海における海洋構築物の建造、要塞化、周辺警戒取締りの増大等を当該海域における米国優位の現状に挑戦し、また改変する行動に映る。しかし、米国の世界の警察としての行動は、トランプ政権下までに相当変容し、航行の自由作戦による自国の主張の貫徹と相手国への譲歩の強制(威嚇)、特に中国の沿岸に近い海域での従来の行動は、総合的な国力を付けてきた現在の中国にとっては、自国の安全保障の確保のためには欠かせない、分相応の(対抗)措置としての意味合いを持ちうる。

  • 米国の「航行の自由」作戦が中国に及ぼす海洋法上の意義

    2018年  

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     海洋法上、航行の自由の概念は、旗国と沿岸国との間で長らく争いがある。国連海洋法条約の下でも、従来の海洋国に有利な自由な解釈を許すとする米国のような国と、その影響力の拡大を懸念し海洋国からの脅威を牽制するために制限的な解釈を支持する中国のような国とで対立がある。米中による海洋覇権争いの激しい南シナ海は、台湾の帰属や統治を巡る対立から台湾海峡における米国艦隊の通航の問題も絡む。米国は現状維持を確保すべく、「航行の自由」作戦を断続的に実施し中国を牽制するが、今日のように経済力を伴った軍事力増強を図る中国には、同作戦は実効性の乏しい単なる示威行動に過ぎず、同海域の緊張関係を徒に煽る虞が濃厚である。

  • サンフランシスコ講和条約体制における国際法秩序を巡る日米中関係

    2017年  

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    サンフランシスコ講和条約は日本にとって全面的講和ではなく片面(単独)的講和であったため、旧ソ連(今のロシア)、中国(台湾を含む)、韓国といった隣国と日本との二国間関係の正常化という課題が長らく日本外交や東アジアの秩序形成に残されることになった。ロシアとの北方領土問題、中国(台湾)との尖閣諸島問題、そして韓国との竹島問題は、条約の第三国に対する効果に関わる典型的なケースとして単なる法律論だけではない困難な対応と手法の組合せを関係当事国に要求する。その意味で厳密にいうと、戦後の日本を取り巻く東アジアには平和秩序は構築途上か未完成のままの懸案として残り、日米中の三か国を未だに緊張状態に置いている。

  • 北極海における国際紛争の予防・調整モデルに関する学際的基礎研究

    2016年  

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     北極海の氷の融解により、日本をはじめ国際社会の関心が北極海を巡る政治、経済等の今後に集まっている。中でも、欧州とアジアをつなぐ北極海航路の重要性が高まるにつれ、関係国間の協力や協調により軋轢を予防することが一層肝要となっている。北極評議会内部でも国際社会の関心を背景に、環境保護問題や生物を含む資源の保存・開発の問題に着実かつ迅速に対応を協議し、ACオブザーバーの日本は北極海航路の利用国として科学や環境に関するノウハウを活用し、議論の進展に積極的に貢献するべきである。他方で、国際法や沿岸諸国の国内法的な対応は、発展途上であったり未整備のままであったりするため、同海域におけるこれからの課題でもある。

  • 北極海における紛争の予防・調整モデルの学際的基礎研究

    2015年  

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     地球気候変動の影響から北極海の氷が融解し、北極海周辺の海域や資源を巡る紛争が発生する可能性が高まってきた。最近は北極航路が注目され、北極海沿岸諸国だけでなく、非北極圏諸国であるアジアの日本、中国、韓国などが積極的に動きだした。ロシア、カナダ、米国以外の北欧諸国を含む北極圏諸国と非北極圏諸国との間で、前者内だけでなく前者と後者との地政学上の思惑にも由来する関係が複雑化する。これらのアクター相互の紛争や軋轢の予防や調整のために必要な仕組みや発想(モデル)が北極評議会の他にも特に必要で、人文、社会などの諸科学を総合的に動員して学際的な試みを活用することで北極圏の持続可能な発展を考えていくべきである。

  • 北極海の利用と開発に関するガバナンスと国際法の役割

    2014年  

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     航路や資源開発が注目される北極での妥当なガバナンスには、北極評議会(AC)や国連海洋法条約等の既存の枠組みの可能性と限界を客観的多角的に検討する必要がある。第1に、ACのガバナンスが正統性を有するかについて、オブザーバーの視点から検討することは意義深い。第2に、北極海における環境と開発の両立を図るべく持続可能な開発のための取組を再検討する必要がある。第3に、ACの範囲外となる安全保障上の課題に既存の枠組み以外にどう対処するかを検証するべきである。ACのオブザーバーとなった日本は、中国や韓国とも連携しつつ、自国の立場を弁えつつ、科学、環境、開発などに経験や実績を活かしつつ、国際協力を推進すべきである。

  • 中国の国際法観と外交政策に関する序論的考察:南シナ海と北極海を例として

    2013年  

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     中国が国際社会において新たに台頭してくるに従って、海洋秩序にも大きな変動が生じつつあると言われる。中国の意図するところが現状の変更を伴う秩序への挑戦であるという事例には、南シナ海におけるU字型線による自国権益の主張と、航路探検を含む北極海への積極的な進出とが、同じような類の行動として挙げられる。確かに、これらの行動は、自国からの距離が相当にある広範囲の海域に対して、自国権益を主張するかのような行為とみれば、似ていない訳でもないであろう。しかし、実は、これらの行動と場所における中国の主張やその根拠などには、巷で報道されたり、問い沙汰されたりしているような関連があるわけではない。むしろ、根拠の脆弱で、いくつもの誤解や不信感に惑わされたような議論や言説に影響を受けているものが少なくない。 南シナ海における領土・海洋紛争は、中国が、その歴史的な沿革に基づき、中国を含むアジア固有の地政学的事情にも由来した諸要因によって、最近海洋権益の確保において確固たる信念と相当の実力によって新たに進出し、自国にとって不都合な現状を改変使用する動きについて、現状を維持こそが自国に都合がいいと考える海洋大国とその利害関係諸国との間に、軋轢が生じている状況をどうみるか、という視点の違いが根本にある。 他方、北極海について、中国がこれまで南極における科学調査の推進と同様に、北極海にて長らく行ってきた調査研究に照らして、環境や科学に関連する調査船の派遣や航路の開発は、関連する国際法規に違反することなく行われてきており、中国が展開すると言われる北極外交なる北極圏諸国との密接な関係作りも、警戒心よりもある程度の歓迎をもって行われている点に留意すべきである。つまり、北極圏の経済開発における中国の資本の重要性は関係諸国からは警戒心を超えるほどに魅力的ともいうべき素性があるのが現実である。 こうした現状を踏まえると、中国の海洋進出という単純な図式だけで捉えることのできない動きが現実にはあるこことがわかるが、これを単なる力による現状変更をもたらす脅威と考えるのではなく、資本や技術を背景とした活発な主体どうしのダイナミックな秩序作りの相克(特に超大国の出現と衰退を伴う変動)という側面を国際関係に読み取る視点が重要であろう。

  • 領域を巡る国際法規範のアジアにおける生成発展とその課題

    2013年  

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     アジアにおける領域の概念がはたして西洋諸国が考える領域の概念と同じであったか否かには、疑問がある。近代ヨーロッパにおける主権国家概念の誕生は1648年のウェストファリア条約の締結に端を発するとみなすウェストファリア由来の主権概念(Westphalian sovereignty)は普遍的な発想であろうか。中国の影響下に長らくあったアジアにはたして当てはまるのか否か、また今後とも当てはめるべきか否かを再考する時期が来ているともいえる。現代は、中国を始めとしたアジア的な主権概念(Eastpahlian sovereignty)が働く余地はないのかどうかが問われ始めている。なぜなら、アジアにおける昨今の中国の目覚ましい台頭は、新興国としての中国による既存の枠組みへの挑戦という西洋中心の視点からだけでなく、再興または再起して国際社会の舞台に戻ってきた超大国(returning super-power)である中国のという観点を抜きにしては、国際秩序の行方を見誤ることになるのではないかと考えるからである。尖閣諸島問題や南シナ海問題などの領土主権に関わるアジア地域での紛争に関して、中国の台頭とか海洋権益の拡張、現状変更要求などといった解釈だけで把握しきれない。むしろ、欧米社会の見方に基づく伝統的な国際秩序観や法規範から距離を置きつつ、中国の置かれた現状、法制度や統治機構、歴史と文化に根差した思考様式などを深く検討したうえで、アジアでこうした紛争が起こる原因や、現状の改善のための方途を考察し、提言することが重要で実際的であろう。 南シナ海における領土海洋紛争に関しては、中国の主張するいわゆる断続線(U字線)に基づく権利主張がフィリピンやベトナムを含むその他の沿岸諸国の権利主張と競合する現状と、中国の歴史的な立場、紛争当事国の立場、地域的な利害関係を有するASEAN、そして米国や日本を含むその他の利害関係諸国の視座の違いを踏まえた複眼的な分析とが必要である。東シナ海においては、領土問題以上に漁業の扱いこそが一番の実務上の懸案であって、従来から行われている地元の漁業関係者に満足のいく実利的な調整が関係国間で行われる努力が必要となる。したがって、フィリピンによる一方的な仲裁への提訴は、必ずしも紛争の真の解決には至らないものと危惧される一例である。 以上、領域に関する国際法上のルールは、西洋的な視点だけに固執せず、アジアや各地域に密着した方法やアプローチを関係国間で模索しあうプロセスを重視すべきであると考えられる。そうした視点を踏まえた秩序形成の動きや土壌が徐々に育まれる過程にあることを予感させる。さらには、中国の最近の動向を安全保障上の脅威とか、領域主権に囚われたナショナリズムとかの要因を強調しすぎると、グローバル・コモンズのような領域の安定的な管理の在り方にも無用な偏見と誤解を招く虞が増すことにつながるであろう。

  • 南シナ海を巡る領土・資源の紛争における海洋法の役割と限界

    2012年  

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     南シナ海における領域海洋を巡る争いについては、中国が主張する断続線(九段線、U字線、牛舌線とも称される線)の意味について多くの論争があり、フィリピンやベトナムを始めとして周辺諸国からの批判も多い。その断続線が主張されるには、それなりの理由、背景、歴史があることを理解しないと、法律論だけではすべてを把握できず、紛争の根本的な解決にはつながらない。こうした観点から検討した結果、次のような暫定的な結論を得ることができた。 まず、断続線に関する学説として中国国内中心に挙げられる4つ(島嶼帰属線説、歴史的権利線説、歴史的水域説及び伝統的疆界線説)のそれぞれには、長所と短所が混在しているだけでなく、当初引かれた線に込められた意図とは乖離して、学者や専門家などがいわば後知恵として派生してきた感のあるものもある。島嶼の帰属を地図上に示したに過ぎないものであったとはいえ、中国固有の歴史的な背景や、国際社会・国際法に対する考え方などとも相まって、断続線の意味合いを探ることは、今後の紛争解決にどれほど役に立つかはまだ不明なところが少なくない。 次に、この断続線の意味合いを確定してみたところで、実際上の外交的意義については見通せないという点がある。その意義が、現行の国際法に照らして中国に不利な内容となれば、周辺諸国を始めとした国際社会の圧倒的な多数がこれを歓迎することになろうが、領土主権の保持を重要な国益と考える中国が受け入れられない以上、真の解決に向けた方策となるかは望み薄であろう。むしろ、中国の意図は、西洋社会が中心となって形成してきた現行国際法では、それ以前からの歴史的な要因によって社会が形成されていた特に東アジア圏で生起するイシューを解決するには無理があるということを国際社会に理解させたいということではないか。このように中国が考えている節があるようにみられる。 最後に、南シナ海における法的拘束力のある行動綱領(Code of Conduct)が近い将来採択されることは望ましいが、現行海洋法を始めとした国際法の諸規則を超える範囲で、いずれの国にとっても受け入れられるような内容が実現するかは予断を許さない。中国に対するフィリピンによる仲裁への一方的提訴が当該地域の平和と安定の維持にとって果たし得る役割は限定的であろう。領土権問題を棚上げにした共同開発や平和地域設置などの方途を模索する努力が関係諸国にはさらに必要であろう。

  • 東アジアにおける領域紛争解決に果たす国際法の役割とその限界

    2012年  

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     東アジアは、従来、中国の文化圏にあり、その影響を様々な分野において受けてきた地域であったが、特に第2次世界大戦後の領土処理を巡る国家間の軋轢や外交上の成果などから、いまだに多くの国際関係上の紛争を抱える地域となっている。こうした紛争は、歴史や国際政治・外交の遺産として、国際法の解釈・適用の上でも非常に困難な課題を関係諸国に投げかけている。特に、日本をとりまく三つの領土問題(北方領土、竹島及び尖閣諸島を巡る紛争)は、その相手国との二国間関係だけでなく、最近の北極における航路及び資源開発や南シナ海での領土・海域紛争において存在感を示すようになった中国の外交とも絡んで、この地域において日本の果たす外交上の役割を再定義する必要を迫っている。 こうした背景から、本研究では、東アジア地域において特有の考え方や歴史的な淵源が領土紛争に及ぼす影響を探り、その中で国際法が果たす役割とその限界を考察することを試みた。限られた時間において得られた暫定的な結論は、以下のような3点に集約できると考えられる。 まず、経済だけでなく、外交上、軍事上も力を誇示するようになった中国を前に、現行国際法の解釈・適用だけで対処しようとしても、現実的にまた実際上、領域関連の問題に対して有効な解決策は限定的なものに止まるであろう。なぜなら、中国は、国際法を自国の国益を国際関係上確保するための道具と考えるだけでなく、西洋諸国の圧倒的な影響下で形成されてきた国際法で、自国を含む東アジアにおける諸問題を処理することに、歴史的、イデオロギー的にも、非常に大きな抵抗感を持っていることに留意しなければならない。台頭する中国を前に、国連海洋法条約に未加入の米国が自国の立場も顧みずに、批判を展開しまた封じ込めを強行するような状況は、東アジアに真の平和と安定をもたらすことにはつながらない。 次に、紛争当事国だけによる協議や交渉による解決が停滞・行き詰まりをしても、第三者を交えた解決方式(調停、仲裁、司法的解決など)には、上記のいずれの領土紛争においても、紛争当事国の合意が得られる見通しは乏しい以上、いずれの当事国にとっても受け入れ可能な解決案が見出せる可能性は極めて薄い。様々な解決先例(判例を含む)が示す発想も、一定の示唆に富み、何らかの糸口とはなるであろうが、厳格な適用を拙速につなげることは回避すべきであろう。 最後に、平和と安定の維持がほぼ永続するような解決方法が得られるならば、厳格な法の解釈適用に依拠することなく、より柔軟な対処の方途を関係国間の同意によって得られるよう、その雰囲気づくりや契機の創出を何らかの外交的な努力によって得られるよう模索する必要性が、この地域の関係諸国には必要であろう。

  • 国際裁判における訴訟戦略からみた国際法の理論と実際

    2008年  

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     国際裁判が紛争解決の手段として果たす役割は、ある紛争の主題に関する解決という観点からは、限定的なものにとどまる場合が少なくない。紛争当事者による合意が、紛争の主題の明確化、解決後の見通しの具体化などについても予め行われていないと、国際裁判による判決の効果として、その履行確保が脆弱なものとなる。 こうした前提を踏まえて、訴訟戦略を立てることが、国際裁判の一層有効な利用方法となるとはいえ、紛争当事者間の交渉や協議という二国間対話をどのように進めるかは、紛争の根本的な決着という点できわめて根源的かつ重要なポイントであり、むしろそこで国際法の果たす役割も過大評価することは禁物である。 過去の事例を振り返ると、厳格な法の解釈適用に基づく国際裁判(仲裁を含む)の過信は得てして不運な結果を生じ、何らかの他の第三者による関与(それが、仲介や調停のような体裁だけに限らず)や、解決の時機、そのときの国際情勢、国内動向、各当事国の指導者(政策決定者を含む)などの諸要因が複雑に絡んだ様相の中で、結果が多様なものとなることが分かる。特に、国際法に基づく議論の展開は、裁判のような第三者による厳格な法解釈・適用においては、比較的効果的な理論武装ではあっても、二国間を中心とした外交交渉における解決の模索過程では、自ずから限界があるのはいうまでもない。 日本の領土問題・海域画定問題・エネルギー資源配分問題なども、この点で、諸外国の事例に照らして判断を迫られるものと考えられ、いたずらに法の厳格な解釈・適用の枠組みだけにとらわれることなく、その他の諸要素を総合的に勘案した対応が必要となると思われる。

  • 国際法に対する最近の米国の姿勢とその外交政策

    2007年  

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     本研究は、昨年度の研究「国際社会における法の支配に対する米国の対応―裁判関連の国家実行を中心に―」(2006A-926)を基礎として、それを米国の外交政策との関連という視点から分析しなおし、どのような変遷(特に、政権の変遷との関係で)を遂げてきたかを探ることを主要な目的として行われた。 今日のように、テロリズムが非国家主体によって予測不能な状況下で行われる場合、米国のような大国は、自国の能力に応じて、国際組織などを通じた多国間外交の枠組み(多国間外交交渉)を通じた解決よりも、迅速かつ直接的に自国の国益保護(特に、国家安全保障)のための外交方針を遂行できる方策を一方的に貫徹することに一層の比重を置く傾向が見られる。 国際社会における法の支配を徹底することがいずれの国・地域・社会をも平和と安定に導くものであるとはいえ、冷戦後に世界で唯一の超大国となった米国にとっては、国際化・グローバリゼーションが進んだ国際社会に対する外向きの視点よりも、むしろ自国の国益追及を重視した内向き思考がより多くの支持を得る国内状況・国民感情が蔓延していることがうかがい知れる。 以上から、以下の諸点を指摘したい。(1)今世紀のブッシュ政権の外交政策に見られる単独行動主義は、その遠因の一つとして、その前のクリントン政権の際の外交上の限界に対する反動もあって、根底で通底している;(2)多様化した国際社会・国際情勢に、米国国内の多様な見解を適切に集約して具体化する政策や方途が効果的に対応しないような状況が多くなっている;(3)これらの側面は、環境保護、国際刑事裁判、テロ、移民、核兵器を含む軍備管理、中東和平問題、イラク戦争とその戦後処理などにおける法と政策の相克において非常に顕著に見られ、大統領選を年内に控えた米国の選択が注目される。

  • 国際裁判における訴訟戦略からみた国際法の理論と実際

    2007年  

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     本研究は、国際社会において国家間の紛争を解決する一手段としての国際裁判を通じて、当事国がどのような視点から訴訟の過程を組み立て、自国に有利な結論を得るように精力を傾け、国際法をはじめとした法理論を展開しているのかを探り、かつ実際に裁判の結果はいかなるものであったのかや、理論と実際(判決内容)との間にどのような差異が生じたのかを分析することを主眼として行われた。 とりわけ、ハンブルクにある国際海洋法裁判所(ITLOS)では、最近、沿岸国により拿捕された船舶の早期釈放を含む事件が処理されてきているが、その背景には、国連海洋法条約を中心とした新しい海洋秩序の下で、資源管理のために沿岸国が行使する機能的管轄権と、漁業に従事する船舶の活動を根拠付ける権利との競合が顕著となってきていることが注目されている。中でも、沿岸国が自国の排他的経済水域(EEZ)およびその周辺において自国資源(生物資源)に対する権利の主張がとみに強くなり、権利行使の態様と競合に関して沿岸国と漁業国との見解の対立に注目が集まっている。 強硬な取締りを行う沿岸国に対して、漁業を行う漁業国との軋轢の結果、ITLOSにおいては、意図的に拿捕された船舶の即時釈放を求める決定を求めて一連の訴訟が提起されている。この背景にあるのは、資源保護を主眼とする沿岸国の拡張する権利行使と、他方、希少な資源を少しでも多く手中にしようとする漁業国の中には違法、無法国、無規制の漁業(IUU漁業)に従事するものが少なくない現状とがある。 したがって、最近の海洋資源保護に対して敏感な世界の動向は、ITLOSの判例の傾向においても少なからず見られ、IUUの危機を意識して海洋資源は管理される方向性が強まっていることがうかがい知れる。その結果、訴訟戦略上も、理論の優劣は別として、こうした視点を押し出した議論が裁判の行方を左右する傾向が少なからず見られるようになっているといえる。

  • 国際社会における法の支配に対する米国の対応―裁判関連の国家実行を中心に―

    2006年  

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     国際法において、ポスト冷戦期における超大国・アメリカの果たす役割は、法定立、法執行、法適用などのさまざまな局面において、重要なものであることは言うまでもない。 しかし、環境問題に関しては京都議定書への参加を拒み、国際刑事裁判所の設立とその活動にも協力をせず、9・11の同時多発テロ以降、特に単独行動主義を強めている米国の姿勢に対して、はたして国際社会における法の支配を遂行貫徹する意思があるのか否か、またその外交目標は何かが改めて問われている。 米国が(直接または間接に)関与した若干の国際司法裁判所における事件については、米国は一定の独自の論理を示してきた。例えば、その例は、ニカラグア事件などにおける武力行使問題、ラグランド事件などの死刑執行手続・外交領事関連問題、核兵器の使用事件(勧告的意見)における核・安全保障の問題、イスラエルの壁建設事件(勧告的意見)における中東問題などに顕著に見られる。 この研究において、以上の情勢・実行を分析することによって、当面は、以下のような暫定的な結論が導き出せると思われる。(1)米国には、自国の国益を重視した独自の国際社会観に裏付けられた外交方針と、国内意思決定が行われてきた。(2)この背景には、建国以来の歴史に根ざした連邦主義と三権分立の原則が非常に濃く反映されている。(3)ただし、米国ほど国際法の分析検討を丹念に行っている国も少なく、国際法上、その法の支配に対する認識の深さと貢献の度合いは、過小評価されるべきではない。

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