2024/04/25 更新

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ツジ リン
辻 リン
所属
法学学術院 法学部
職名
教授

所属学協会

  •  
     
     

    早稲田大学中国文学会

  •  
     
     

    中国古典小説研究会

  •  
     
     

    東方学会

 

論文

  • 明清通俗文芸にみる「雪冤」と巡察御史

    辻 リン

    人文論集   ( 59 ) 25 - 46  2021年02月

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

  • 何文秀物語の流傳について

    辻 リン

    中国文学研究   ( 46 ) 80 - 99  2020年12月  [査読有り]

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

  • 宝巻にみる俗曲と日本明清楽 : 通俗文芸の受容と変容の視点から

    辻 リン

    人文論集   ( 58 ) 61 - 87  2020年02月

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

    CiNii

  • 白馬モチーフの變奏 : 二種の白馬寶卷をめぐって

    辻 リン

    中国文学研究   ( 45 ) 39 - 56  2019年12月  [査読有り]

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

    CiNii

  • ハーバード大学イエンチン図書館所蔵の宝巻について

    辻 リン

    中国古典小説研究   ( 22 ) 75 - 100  2019年03月  [査読有り]

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

     概要を見る

    ハーバード大学イエンチン図書館(Harvard-Yenching Library、哈佛燕京図書館、以下イエンチン図書館と称する)所蔵の宝巻(86種124冊)の大部分(74種111冊)は、著名な漢学者パトリック・ハナン氏(Patrick D. Hanan、中国語名:韓南、1927-2014)の寄贈本として知られる。ほとんどの題材が通俗文学と関わりの深い「物語系宝巻」であるため、俗文学研究のみならず、清末民国期の民間信仰、宝巻の受容状況を知る上でも貴重な文献であると言えよう。しかし現状では、それらの宝巻についての文章はわずか書誌的な情報紹介二、三篇に止まり、一歩踏み込んだ学術的論考は見いだせていない。本稿では、先行の文章を踏まえて、まず基礎研究として、イエンチン図書館所蔵の宝卷を『中国宝巻総目』の著録と対照して、その未著録のものを整理・増補し、澤田瑞穂『増補 宝巻の研究』の「宝巻提要」にならい、その提要に未収録の宝巻に適宜梗概または備考を付けて、今後の研究を深めるための整理・考察を行う。こうした資料の整理と分類、個々の資料の考察は、今後の宝巻研究の発展の土台となるものと考える。そうした土台の上に、例えば清末民国期の宝巻の受容や宗教の受容、社会や道徳規範など、様々な角度から研究を展開することも可能であろうと思われる。

  • 包公信仰から観音信仰へ―「生死牌」物語の変遷について

    辻 リン

    人文論集   ( 57 ) 1 - 19  2019年02月

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

  • 「裁き」と神々の接点――『賢良宝巻』の変容に見る宝巻の変遷

    辻 リン

    中国文学研究   ( 44 ) 99 - 114  2018年12月  [査読有り]

    担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者

     概要を見る

    本稿は『佛説劉子忠賢良宝巻』の物語の系譜、体裁の変化を分析し、清末に成立した『仏説劉子忠賢良宝巻』の形式と内容、信仰対象の変化について分析し、それを通して古宝巻と新宝巻の転換期における次の様相を明らかにした。宗教・信仰・娯楽を併せ持つという宝巻の特徴は、宗教教派によって作られた物語宝巻においても認められた。宗教教派は神聖さを標示するために古宝巻のスタイルを固守しながら、聴衆(信者)を楽しませるために、民衆好みの説話・伝説から取材し、流行する俗曲を積極的に取り入れて、宝巻を創作していた。俗曲はその時代その地域の流行りすたりによって、次第に脱落し消えていくが、物語は語り継がれて伝播し続てきた。

  • 宝巻と女性文化

    辻 リン

    早稲田大学    2007年01月  [査読有り]

  • 二十四孝図(年画解題)

    辻 リン

    中国古籍文化研究   ( 3 ) 62 - 69  2005年03月

    CiNii

  • 道楽と改心――岐路に立つ『岐路灯』の文学

    辻 リン

    中国文学研究   30 ( 30 ) 48 - 63  2004年12月  [査読有り]

    CiNii

  • 唐代後期における文人と芸能娯楽―蜀を中心として―

    辻 リン

    中国古籍文化研究   ( 2 ) 99 - 20  2004年10月

  • 『続金瓶梅』の構成をめぐって

    辻 リン

    早稲田大学大学院文学研究科紀要   ( 49 ) 65 - 75  2004年02月

  • 『岐路灯』における「勧世」の姿勢――『金瓶梅』との関わりを中心にーー

    辻 リン

    中国文学研究   ( 29 ) 240 - 255  2003年12月  [査読有り]

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書籍等出版物

  • 中国古籍流通学の確立―流通する古籍・流通する文化―

    辻 リン( 担当: 共著,  担当範囲: 分担執筆部分:「宝巻の流布と明清女性文化」)

    雄山閣  2007年03月

  • 影印・翻字・注釈 搶生死牌宝巻

    辻 リン( 担当: 単著)

    中国古籍文化研究所  2005年03月 ISBN: 4902996057

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    民国の上海で刊行された本書は、呉語宝巻の読解に便ならしめると同時に、今後宝巻文学のさらなる研究に資料を広く提供するために刊行したものである。構成は既刊民国の上海で刊行された本書は、呉語宝巻の読解に便ならしめると同時に、今後宝巻文学のさらなる研究に資料を広く提供するために刊行したものである。構成は既刊...民国の上海で刊行された本書は、呉語宝巻の読解に便ならしめると同時に、今後宝巻文学のさらなる研究に資料を広く提供するために刊行したものである。構成は既刊校注本の形式に従い、早稲田大学図書館風陵文庫蔵の『搶生死牌宝巻』の影印・翻字と、それに対する注釈、梗概および解説・考証よりなる。解説・考証編では、現存するテキストを収集、整理し、「生死牌」物語の形成及び民間信仰について詳細に考証した。それにより、小説・戯曲・弾詞・民間伝説などでよく知られた物語を宝巻化する過程を明らかにした。物語は語り継がれることによって容易に他地域に広がっていく。『搶生死牌宝巻』は、その話しの話柄をほとんど保ったままで、土着の要素が入ってくる、という伝播の仕方が見られる。近年の中国通俗文学研究においては、小説、戯曲のみならず説唱文学をも含めた総合的な研究方法が模索され、多くの成果が挙げられている。本書の解説・考証も、その研究方法に沿って多方面において行なうことを試み、説唱文学のみならず、物語文学の変遷史の一資料としても今後の研究に資したいと考える。

  • 影印・翻字・注釈 烏金宝巻

    辻 リン( 担当: 共編者(共編著者))

    2003年12月

     概要を見る

    本書は早稲田大学図書館風陵文庫蔵の『烏金宝巻』の影印・翻字と、それに対する注釈・梗概及び解題・考証より成る。翻字・注釈部分は中国古籍文化研究所の説唱文学研究班(班長古屋昭弘教授)での会読結果に基づいている。辻は古屋昭弘教授の指導の下、全書の編集、翻字の校正、文字考証、呉語注釈・梗概の執筆担当に主として携わった。また、本書考証篇所収「烏金宝巻に見る江南の習俗と事象」を分担執筆した。以下に、担当した全書の編集、文字考証、梗概について紹介し、分担執筆した考証部分を要約する。 本書の底本に用いた上記風陵文庫蔵の『烏金宝巻』石印本には、刊行年・発行所ともに記されていないが、現存する国内外の版本と比較、照合、考証した結果、民国十三(1924)年上海広記書局石印本(李世瑜氏蔵)と同系統のものであると考えられる。本書の文字考証、梗概執筆にあたり、その同系統のテキストも合せて参考した。 分担執筆した「烏金宝巻に見る江南の習俗と事象」について。乾隆年間の江南を舞台とする『烏金宝巻』も例に漏れず、江南における風習や事象に言及している。しかし、風習・習俗といったものは、文学の枠からはみでるものである上、表現の多くが呉語圏以外の読者にとって難解である。また、ストーリーのポイントになるものでもないため、宝巻研究の対象としては、習俗を取り上げられることがあっても、解読の際その実態があまり知られていないまま素通りされがちである。しかし、これらの中には、宝巻に用いられる庶民的な言葉の面白さ、文学性にかかわる要素も少なくない。本論は、これらの江南における習俗や事象を解明することによって、作品をより深く理解し、さらなる研究に役立ちたいと考えたものである。

講演・口頭発表等

  • 二種白馬宝巻的文本及其流変

    辻 リン  [招待有り]

    「東亜視域中的漢籍研究」中日学者学術研討会   (シャンハイ)  復旦大学古籍整理研究所  

    発表年月: 2019年09月

  • 宝巻の受容と女性文化

    辻 リン

    日本中国学会第五十七回大会   日本中国学会  

    発表年月: 2005年10月

  • 通俗白話小説に見える宣巻

    辻 リン

    中国古典小説研究会大会   中国古典小説研究会  

    発表年月: 2005年08月

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 宝巻の変遷史における明末清初の物語宝巻の流伝状況についての研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)

    研究期間:

    2020年04月
    -
    2023年03月
     

    辻 リン

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    明清から民国に至るまで民間で盛んに行われた語り物の一種である宝巻は、因果応報を説くという宗教的な役割とそれに即した独自の形態を保ちながら、時代を経るにつれ、物語を含む叙事的なものが多くなり、宗教的なものから文学的なものへ傾き、娯楽性を強めていく流れがみられる。宝巻文学の変遷史において、明末清初から清の嘉慶までのおよそ百年間に、現存する宝巻のテキストが乏しいことから、この時期を「沈衰期」とされてきた。「沈衰期」を挟む早期の宝巻を「古宝巻」、後期の質的な変化が見られる宝巻を「新宝巻」と呼ばれる。視点を変えれば、いわゆる「沈衰期」は宝巻の変遷史における重要な転換期と言ってもよいのである。本研究はこれまでの研究に続き、一連の考察によって、最終的には宝巻の変遷史において、いまだ明らかになっていない転換期の様相を解明することを目的とする。宝巻文学の変遷史における主要な問題――民間教派による物語宝巻の伝播、俗曲の流行り廃りによる宝巻スタイルの変化過程、信仰対象の変化による物語の変容にまつわる問題は、宗教教派期と宝巻の「沈衰期」とされる時期において、いまだ充分に解明するには至っていない問題である。本研究では、同時期の宝巻の変容過程をさらに綿密な考察を行うことによって、これらの問題をより明らかにすることを目指すものである。
    2021年度では前年度に続き、かかる明末清初の現存の宝巻のテキストを解読し、欧米の主要図書館に所蔵する関連資料にも着目して研究を進めた。主な成果として、「哈佛大学燕京図書館所蔵宝巻考辨」、北京大学中国古文献研究中心「中日漢籍研究学術研討会」(オンライン国際学会、2021.12)で発表した。

  • 宝巻文学と中国女性文化との関わりについての研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業 奨励研究

    研究期間:

    2008年
     
     
     

    辻 リン

     概要を見る

    宝巻は、中国における唱導文学の典型的なものでありながら、時代を経るにつれ世俗性・娯楽性が濃くなっている。また、宗教、教化と民間信仰、庶民文芸の性格を併せ持つ語り物であるため、中国の庶民文芸史、通俗文学史、民衆宗教史、民衆精神史などの研究において重要な史料となっている。これまでの研究は、主に資料の蒐集と整理に力が注がれ、宝巻の書誌学的研究とその背景となる宗教的研究が中心であって、宝巻文学の担い手や享受者、宝巻の上演形態や状況については、ほとんど注目されていなかった。本研究では、宝巻発展史において、従来「沈衰期」とみなされてきた時期を切り口として、宝巻文学と女性文化との関わりを明らかにすることを試みてきた。
    平成20年度は、前年度に引き続き主に古籍流通学の視点から、語り物芸能の一種である宝巻がいかに継承されていたのか、その内容がいかなるものか、という問題について、特に宝巻を受容し継承する文化活動の担い手としての女性に着目し考察した。これまでの書誌学的考証に加え「宣巻」という名称を考察した。従来「宝巻の唱本を宣講する」としか理解されなかった「宣巻」を、口承文芸の視点から分析を加え、非文字的な流布による創作の実態を解明した。「宣巻」は単なる宝巻テキストを宣唱する行為のみならず、聴衆を引きつけるため、その好みに合わせて、宣講者(尼僧)による即座の創作もあったことが明らかになった。宝巻は、文字によるテキストそのものが存在しなくても、宣唱されていわば口承文芸の一種として存在し流布していたことを検証した。

  • 宝巻の受容と中国女性文化との関わりについての研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業 奨励研究

    研究期間:

    2007年
     
     
     

    辻 リン

     概要を見る

    宝巻は、中国における唱導文学の典型的なものでありながら、時代を経るにつれ世俗性・娯楽性が濃くなっている。また、宗教、教化と民間信仰、庶民文芸の性格を併せ持つ語り物であるため、中国の庶民文芸史、通俗文学史、民衆宗教史、民衆精神史などの研究において重要な史料となっている。これまでの研究は、主に資料の蒐集と整理に力が注がれ、宝巻の書誌学的研究とその背景となる宗教的研究が中心であって、宝巻文学の担い手や享受者、宝巻の上演形態や状況については、ほとんど注目されていなかった。本研究では、宝巻発展史において、従来「沈衰期」とみなされてきた時期を切り口として、宝巻文学と女性文化との関わりを明らかにすることを試みてきた。
    平成19年度は、主に古籍流通学の視点から、語り物芸能の一種である宝巻がいかに継承されていたのか、その内容がいかなるものか、という問題について、特に宝巻を受容し継承する文化活動の担い手としての女性に着目し考察した。また、現在では「宝巻」といえば一つの文学様式として固定した名称になっているが、本研究では、これまでの書誌学的考証に加え「宣巻」という名称を考察した。従来「宝巻の唱本を宣講する」としか理解されなかった「宣巻」を、口承文芸の視点から分析を加え、非文字的な流布による創作の実態を解明した。「宣巻」は単なる宝巻テキストを宣唱する行為のみならず、聴衆を引きつけるため、その好みに合わせて、宣講者(尼僧)による即座の創作もあったことが明らかになった。宝巻は、文字によるテキストそのものが存在しなくても、宣唱されていわば口承文芸の一種として存在し流布していたので、説唱文学の一ジャンルとして、宝巻の名称を考えるとき、「宣巻」という非文字的な称呼をも視野に入れなければならいことを、新たに提案した。

 

現在担当している科目

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特定課題制度(学内資金)

  • 宝巻の変遷史における明末清初の物語宝巻の流伝状況についての研究

    2023年  

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    本課題の段階的研究成果として、論文「『続金瓶梅』に見える「蓮女成仏公案」をめぐって」を発表した。本稿においては、『続金瓶梅』第三十八回に見える『花灯轎蓮女成佛宝巻』を一つのモデル作品として、その形式と内容について分析し、それを通して明末清初における宝巻の転換期の様相の一端をうかがえる。明末から清の嘉慶以前まで、物語宝巻のスタイルは、教派宝巻はますます複雑化になっていき、教派でない民間の宝巻、すなわち因果応報を説く民間の物語宝巻は簡略になっていくという変化の傾向が認められる。とりわけ、現存する清初の江南地域の宝巻は、明末の中原地域で大流行した宗教教派による影響がほとんど見られなく、より娯楽化、簡単化したという地域的特徴が見られる。明末清初の北方宝巻におけるスタイルは七言または五言の詩讃は、その直前の散文(説)の内容の繰り返しであるのが一般的である。『続金瓶梅』は清初の山東で成立したが、しかしその中で見える『花灯轎蓮女成仏宝巻』の全体的スタイルはむしろ、当時の江南地域の宝巻に見られるような簡略なスタイルになっている。『花灯轎蓮女成仏宝巻』の存在は、順治年間以前に因果と説く仏教説話の宝巻は形式において、すでに早期の仏教宝巻よりかなり簡単化したことを示唆する。清初の教派宝巻の中心地とされる中原地域では類例を見ないスタイルを見せている。同時期の江南地域の宝巻と物語化、娯楽化した仏教宝巻と類似する形式が見られるのが興味深い。『続金瓶梅』の作者丁耀亢は山東の人であるが、江南を遊歴したことがあることから、明末清初の江南で流行した宣巻の形式を取り入れて書いた可能性も否めない。また物語の内容の分析から分かるように、『花灯轎蓮女成佛宝巻』は当時すでに成立し流布していた単行の宝巻ではなく、作者丁耀亢が説経類の一種とされる話本物語「花灯轎蓮女成佛記」をそのまま引用し宝巻化した可能性が極めて大きいと思われる。

  • 宝巻の変遷史における明末清初の物語宝巻の流伝状況についての研究

    2022年  

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    古宝巻と新宝巻の転換期における様相の解明は、俗曲の流行り廃りによる宝巻スタイルの変化を明らかすることが鍵の一つであると考える。本報告は課題研究の段階成果として、宝巻にみる俗曲と江戸時代の日本に伝わる清楽の比較分析を行い、その流伝と変化の一側面を考察するものである。両者は、中国俗文学史上で互いに交錯する接点を持たないためか、これまで対照して論じられたことも皆無に等しい。本研究では、通俗文学の視点から、曲牌(または曲名)を手掛かりに、宝巻にみる俗曲と清楽における曲調(曲名)を整理し、両者の來歴と流伝、変化を探りながらその様相を明らかにした。最後に、両者を対比しながら、その受容と変容の特徴をまとめた。

  • 宝巻の変遷史における明末清初の物語宝巻の流伝状況についての研究

    2021年  

     概要を見る

    ハーバード大学イエンチン図書館(Harvard-Yenching Library、哈佛燕京図書館)所蔵の宝巻 の大部分(74種111冊)は、パトリック・ハナン氏(Patrick D. Hanan、中国語名:韓南、1927-2014)の寄贈本として知られる 。ハナン氏寄贈の宝巻は民国期の石印本がその大多数を占め、ほとんどの題材が通俗文学と関わりの深い「物語系宝巻」であるため、俗文学研究のみならず、清末民国期の民間信仰、宝巻の受容状況を知る上でも貴重な文献であると言えよう。しかし現状では、これまでそれらの宝巻を具体的に紹介した文章はわずか二、三篇に止まり、ともに宝巻の書誌情報にまつわることを中心に扱い、内容についての論述ではないことが分かる。そこで本発表は、イエンチン図書館所蔵の宝卷を整理し、今後の研究を深めるための紹介として呈示すると同時に、現行影印本の刊行状況における問題点を報告した。

  • 宝巻の変遷史における清初の物語宝巻の流伝状況についての研究

    2020年  

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    明清通俗文芸みる多くの雪冤題材とする作品には、禍に遭う主人公が苦難を経て科挙に及第し、巡察御史になり、自らの冤罪を雪ぎ、最後は離散した恋人(または家族)と大団円という共通した型が確認できる。注目したいのは、地方官僚の監察と司法の公正のためにあったはずの巡察御史が必ず登場し、それも自らの冤罪を晴らすという点である。このような一見して非合理的で史実離れの設定を採る作品が、これほども多く刊行されたことは民衆に歓迎された題材であることの裏返しとも考えられる。本稿はかような雪冤題材をもつ通俗文芸において、明代の官僚制度およびそれによって生み出した社会が、いかに描がかれているか、両者がいかなる影響関係があったかという問題に焦点を当てて考察した。

  • 宝巻文学と中国女性文化との関わりについての研究

    2018年  

     概要を見る

    本研究は、宝巻の変遷史において、従来「沈衰期」とみなされ、ほとんど注目されてこなかった時期を切り口として、宝巻文学と女性文化との関わりを明らかにすることを試みてきた。 2018年度は、いくつかのモデル作品を取り上げ、民間信仰と文学と関わりの視点から、宝巻がいかに継承されていたのか、その内容がいかなるものか、という問題について、特に宝巻を受容し継承する文化活動の担い手としての女性に着目し考察した。具体的には、作品の形式と内容、信仰対象の変化について分析し、それを通して民間教派による物語宝巻の伝播、俗曲の流行り廃りによる宝巻スタイルの変化過程、信仰対象の変化による物語の変容にまつわる諸問題を明らかにした。