2024/03/29 更新

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ジンノ タカシ
甚野 尚志
所属
文学学術院 文学部
職名
教授
学位
博士(文学) ( 早稲田大学 )
文学修士 ( 東京大学 )

経歴

  • 2008年
    -
     

    早稲田大学文学学術院 教授

  • 2007年
    -
    2008年

    東京大学大学院総合文化研究科 教授

  • 1996年
    -
    2007年

    東京大学大学院総合文化研究科 助教授

  • 1990年
    -
    1996年

    東京大学教養学部 助教授

  • 1983年
    -
    1990年

    京都大学人文科学研究所 助手

学歴

  •  
    -
    1983年

    東京大学   人文科学研究科   西洋史学  

  •  
    -
    1980年

    東京大学   文学部   西洋史学  

所属学協会

  •  
     
     

    「教会と社会」研究会−中近世のヨーロッパ−

  •  
     
     

    ヨーロッパ中世史研究会

  •  
     
     

    比較都市史研究会

  •  
     
     

    中世哲学会

  •  
     
     

    西洋史研究会

  •  
     
     

    日仏歴史学会

  •  
     
     

    早稲田大学史学会

  •  
     
     

    史学会

  •  
     
     

    日本西洋史学会

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研究分野

  • ヨーロッパ史、アメリカ史

研究キーワード

  • 中世ヨーロッパ、教会、社会、文化

 

論文

  • 12世紀の教会知識人による東西教会の対話

    甚野尚志

    エクフラシス−ヨーロッパ文化研究−(早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所)   1   82 - 95  2011年03月

  • Intellectual Networks of Humanists at the Councils of Constance and Basel in the 15th Century

    Takashi Jinno

    Journal of Western Medieval History(The Korean Society for Western Medieval History)   20   215 - 240  2007年09月

  • 王権と象徴、思想と芸術

    甚野尚志

    佐藤彰一・高山博・池上俊一編『西洋中世史研究入門−増補改訂版』(名古屋大学出版会)    2005年

  • 教会文書

    甚野尚志

    高山博・池上俊一編『西洋中世学入門』(東京大学出版会)    2005年

  • 「甦るローマ」−中世後期の教皇権と即位儀礼

    甚野尚志

    歴史学研究   794   155 - 162  2004年10月

  • 西欧中世の教権と王権

    甚野尚志

    歴史学研究会編『現代歴史学の成果と課題 II 1980-2000年』    2003年

  • 回顧と展望:西欧中世

    甚野尚志

    史学雑誌   109 ( 5 ) 313 - 321  2000年05月

  • ランスのヒンクマールと「一日」参集会

    甚野尚志

    木村尚三郎編『学問への旅』山川出版社    2000年

  • ソールズベリのヨハネスと『教皇史』

    甚野尚志

    『超域文化科学紀要』(東京大学駒場)   5   8 - 29  2000年

  • ソールズベリのヨハネスと異教的俗信への批判

    甚野尚志

    中世思想研究   41   35 - 51  1999年

  • ブレーメンのアダムと北方世界の「発見」

    甚野尚志

    『岩波講座・世界歴史12巻・遭遇と発見−異文化への視野』(岩波書店)    1999年

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書籍等出版物

  • Christianity and Violence in the Middle Ages and Early Modern Period. Perspectives from Europe and Japan

    Fernanda Alfieri, Takashi Jinno( 担当: 共編者(共編著者))

    De Gruyter, Oldenbourg  2021年03月

  • 15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ史

    堀越宏一, 甚野尚志

    ミネルヴァ書房  2013年01月

  • 12世紀の歴史記述−ハーフェルベルクのアンセルムスと終末論的歴史−

    甚野尚志

    甚野尚志・益田朋幸編『ヨーロッパ中世の時間意識』(知泉書館)  2012年05月 ISBN: 9784862851338

  • コンスタンツ公会議における教皇権と公会議−「ハエク・サンクタ」の解釈をめぐって−

    甚野尚志

    渡辺節夫編『ヨーロッパ中世社会における統合と調整』(創文社)  2011年02月 ISBN: 9784423460665

  • 中近世ヨーロッパのキリスト教会と民衆宗教

    甚野尚志編

    文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(B)・研究成果報告書  2010年03月

  • 十二世紀ルネサンスの精神−ソールズベリのジョンの思想構造−

    甚野尚志

    知泉書館  2009年03月 ISBN: 9784862850539

  • 中世ヨーロッパの社会観

    甚野尚志

    講談社学術文庫  2007年06月 ISBN: 9784061598218

  • ローマ教皇の即位儀礼−中世盛期の定式化−

    甚野尚志

    歴史学研究会編『幻影のローマ−<伝統>の継承とイメージの形成−』(青木書店)  2006年

  • 東大駒場連続講義 歴史をどう書くか

    甚野尚志編

    講談社  2006年

  • 中世ヨーロッパを生きる

    甚野尚志, 堀越宏一編

    東京大学出版会  2004年

  • この世のあるべき秩序−「教皇君主政」への道−

    甚野尚志

    堀越孝一編『新書ヨーロッパ史 中世篇』(講談社現代新書)  2003年

  • ライヒェナウ修道院の祈念書

    甚野尚志

    渡辺節夫編『ヨーロッパ中世の権力編成とその展開』(東京大学出版会)  2003年

  • 教会からみた中世ヨーロッパの政治社会

    甚野尚志編

    文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(B)・研究成果報告書  2003年

  • 宮廷批判の系譜

    甚野尚志

    高山博・池上俊一編『宮廷と広場』(刀水書房)  2002年

  • 社会の危機と祈祷−「紀元千年」をめぐって−

    甚野尚志

    歴史学研究会編『再生する終末思想』(青木書店)  2000年

  • 中世の異端者たち

    甚野尚志

    山川出版社  1996年07月

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Works(作品等)

  • ボーデン湖・コンスタンツ周辺地域(南西ドイツ)の教会と修道院の調査

    その他 

    2007年09月
    -
    2007年10月

講演・口頭発表等

  • 「頭」のローマ、「四肢」のコンスタンティノープル−教皇の首位権の考察−

    「日本西洋史学会」第61回大会小シンポジウム(中世ヨーロッパ世界にとっての「ローマ」)  

    発表年月: 2011年05月

  • 12世紀西欧の知識人とビザンツ世界

    「ビザンツ学会」2010年度大会シンポジウム(ビザンツ文明を考える)  

    発表年月: 2010年03月

  • 十二世紀の知識人の終末観と東西教会合同の理念

    「早稲田大学ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所」第2回研究会  

    発表年月: 2010年01月

  • 十二世紀中葉における「教皇首位権」と教会合同の理念−ハーフェルベルクのアンセルムスの『対話』をめぐって−

    「京都大学西洋史読書会」2009年度大会  

    発表年月: 2009年11月

  • 十二世紀ルネサンスの精神−「十二世紀ルネサンス」を真に再考するために−

    「西洋中世学会」第一回大会シンポジウム  

    発表年月: 2009年06月

  • コンスタンツ公会議における公会議主義と教皇の至高権

    「法制史学会」第61回総会  

    発表年月: 2009年04月

  • Intellectual Networks of Humanists at the Councils of Constance and Basel in the 15th Century

    The Sixth Japanese-Korean Symposium on Medieval History of Europe(Keio University)  

    発表年月: 2007年08月

  • 「甦るローマ」−中世後期の教皇権と即位儀礼−

    「歴史学研究会」2004年度大会(合同部会シンポジウム「ローマ概念の二千年」)  

    発表年月: 2004年05月

  • 12世紀の政治理念と「ローマの再生」

    第52回「日本西洋史学会」(小シンポジウム「ヨーロッパ中世における王権と権力の統合をめぐる諸問題」)  

    発表年月: 2002年05月

  • Kingship and poor relief:How can we explicate the historical context of the sources describing king’s poor relief in the middle ages?

    The Fourth Japanese-Korean Symposium on Medieval History of Europe(Tokyo Metropolitan University)  

    発表年月: 1997年05月

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 中近世キリスト教社会の「正しさ」をめぐる隠蔽・曖昧・心裡留保

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2023年04月
    -
    2027年03月
     

    皆川 卓, 踊 共二, 田口 正樹, 三浦 清美, 武田 和久, 石黒 盛久, 黒田 祐我, 安平 弦司, 甚野 尚志

  • 中世ヨーロッパにおける多数決原理の形成に関する多角的実証研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2023年04月
    -
    2026年03月
     

    藤崎 衛, 河原 温, 堀越 宏一, 甚野 尚志, 薩摩 秀登, 三佐川 亮宏, 大月 康弘, 皆川 卓, 加藤 玄, 菊地 重仁, 高田 良太, 黒田 祐我

  • 中近世キリスト教世界における「包摂する暴力」ー迫害と寛容の二分法を超えてー

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2022年04月
    -
    2026年03月
     

    甚野 尚志, 三浦 清美, 武田 和久, 押尾 高志, 石黒 盛久, 黒田 祐我, 辻 明日香, 小林 亜沙美, 皆川 卓

  • 中近世ヨーロッパ社会における合意形成の起源と展開―合議制・代議制の理念と現実ー

    研究期間:

    2020年04月
    -
    2023年03月
     

     概要を見る

    本研究は、中近世ヨーロッパにおける身分制議会に代表される代表制集会および合議制の起源とその歴史的展開を王国、諸侯領、教会、都市という4つの場を中心として検討する試みである。13名の研究分担者は、それぞれヨーロッパ各地域をカヴァーしており、、比較史的検討を通じて前近代ヨーロッパ社会の合意形成システムの全体的特質を明らかにすることをめざしている

  • 近世西欧の「君主鑑」の検討を通じたカトリック的理性観念の質的転換

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2020年04月
    -
    2023年03月
     

    皆川 卓, 石黒 盛久, 甚野 尚志

     概要を見る

    思想史の方法論的問題の故に、動態が把握できなかった宗派対立期のカトリック思想のうち、1600年前後のイエズス会の実践哲学に焦点を当て、政治や社会活動を組み込んで思想体系を捉える「新しい文化史」の方法により、君主鑑三点のテキストを背景の政治的・社会的諸関係から分析し、その実践哲学における「正しい認識」の変化を解明することで、近世カトリック圏における「理性」の変化の条件を解明し、他の西ユーラシア・キリスト教圏における同様の条件との比較の素材を準備する

  • 中近世キリスト教世界における宗教と暴力-対立と和解のポリティクス-

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2018年04月
    -
    2021年03月
     

    甚野 尚志, 三浦 清美, 小林 繁子, 武田 和久, 大貫 俊夫, 石黒 盛久, 黒田 祐我, 櫻井 康人, 皆川 卓

     概要を見る

    本研究は中近世のキリスト教世界を対象に、これまで地域やテーマごとに個別的に行われてきた「宗教と暴力」に関する諸問題を総合的に比較考察することにより、「宗教と暴力」に関わる歴史的事象が中近世キリスト教世界の社会構造を規定し、同時に、それが社会変動を引き起こす大きな要因になったことを解明することを目的とする。そのために、本研究では、次の3つの問題系に焦点を合わせ、共同研究を行う。1.宗教が他者の排除を目的として暴力を正当化する場合(聖戦思想の形成、十字軍、異端処罰など)、2.宗教が暴力を阻止し、和解のために機能する場合(寛容思想の形成、異教徒との共生、魔女裁判での和解など)、3.宗教が国家の利害に奉仕し暴力を容認する場合(近世ヨーロッパの宗教戦争、フロンティア地域での布教など)。これらの問題を考察することで、中近世キリスト教世界における「宗教と暴力」の相互関係とそれが社会構造の形成と変容に与えた影響を明らかにする。以上の目標に向かい、今年度は、分担者による研究会を3回開催した。初回は、分担者全員が自身の研究計画に沿って「宗教と暴力」に関するテーマについてそれぞれ報告し、今後の研究の方向性を確認した。第二回目は、「近世の魔女と暴力」をめぐるワークショップを行い、そこで魔女迫害と暴力がいかにヨーロッパ近世世界での「宗教と暴力」の問題と深く関わるものであるかを確認した。第三回目は中近世ロシアの宗教と暴力、十字軍と暴力についての分担者が報告する研究会を開催した。これらの研究会を通じて分担者が共同で討議し、今後の自身の研究をどのように展開するか話し合った。また数名の分担者が研究費で海外渡航し資料収集を行い、研究計画に沿って自身の研究を深めることができた。当初予定していた3回の研究会を開催し、各分担者が自身のテーマについて予定通り深めることができた。同様に、年に数回の研究会を開催して相互に討議を重ねていく予定である

  • 中近世ヨーロッパにおける「正しい認識力」観念の変遷

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2017年04月
    -
    2020年03月
     

    皆川 卓, 田口 正樹, 三浦 清美, 鈴木 道也, 石黒 盛久, 長谷川 まゆ帆, 小山 哲, 坂本 邦暢, 甚野 尚志

     概要を見る

    2018年度も前年度に引き続き、研究代表者および研究分担者は、各々の専門領域において当該研究課題の研究を推進し、二度の研究会でその研究成果の共有および全体の分析を行った。テーマは「正しい認識の評価における聖性と暴力」および「正しい認識を生み出す公共秩序の観念」である。この年度に事例研究を報告したのは三浦清美、鈴木道也、小山哲、田口正樹の四名であった。三浦はビザンツ崩壊・西欧人文主義への不信の中にあった一五世紀末ロシアで、旧約聖書を引用しアウトクラトール(地上の最高権威)の暴力を「正義」とするヴォロツキイらの議論が、ツァーリの政治権力を背景に、荒野修道制から生まれた自由な思推に基づく理論を圧殺する過程を論証した。鈴木は一五世紀初頭フランスの人文主義者ジェルソンの君主論を分析し、当時の暴君放伐論と公会議主義に共通する聖書援用(濫用)の傾向に対する批判の中で、彼がのちの宗教改革を象徴する「聖書の言葉通りに」を解釈の要としていたことを論証すると共に、その「読み」の正しさの基準に視野を広げ、修辞や全体のコンテクストからの解釈を構想していた点を明らかにした。小山は近代以降「正しさ」と誤解される多数決への問題を背景に、一八世紀ポーランドの国制問題とされる国会の「自由拒否権」が成立した一七世紀後半の背景を検討し、それが正常に機能する国会の下、当時なお存在した王の専制への正確な認識や、広大な領土で集権的対応が困難な実情、当時の政治的評価の基準であった人文主義的分析を経た実践的正義であったことを論証した。田口は一五世紀半ばまでの神聖ローマ帝国の司法制度構想の発展過程を分析し、それが公会議における教会改革の一端として案出され、帝権や諸身分の協力による常設裁判所による正義の実現が構想されたこと、しかしそれは各領邦の裁判権の温存が前提であり、構想にもその差が現れていたことを論証した。2018年度11月に招聘予定であったザルツブルク大学教授アルノ・シュトローマイヤー氏(近世中欧政治史・宗派史・情報史)の来日延期により、年度初めの段階では近世中欧の研究状況情報(とりわけ「正しい認識」の評価における人文主義の影響について)が不足し、政治史的な視点での比較検討の進展に支障を来す可能性も考えられたが、研究計画を組み替え、前年度後半の神学・哲学理論における正統性の問題を、キリスト教・人文主義と法制・政治的正統性の関係の問題に接続させることにより、前近代キリスト教圏各地の社会的行動(政治をはじめ、その枠組みを成す知識人・メディアの論争、法制や教会制度の再編活動など)の諸条件と、神学的・人文主義的理論(旧約・新約両聖書の援用、特に中西欧で感覚を支配するとされた「聖霊」=「精神」を巡る解釈)の間の組み合わせに焦点を絞ることに成功した。具体的には、中世の伝統的教会(カトリック、ビザンツ正教会)が担ってきた「正しい認識」が、東西教会における聖俗関係の制度化、およびその教会への反射である聖書解釈の多様化によって、(言説空間を含む)地域ごとの経験知との関係を強め、そこからキリスト教の枠内で、内面の自律か権威への服属か、政治的市民の自由か多数決かなど、近代政治社会における「正しい認識」の論点が焦点化し、各地域の知的・政治的アクターにとって有利な「正しい認識」が選択されたこと、である。これらの研究成果は、2018年8月と2019年3月に北海道大学と早稲田大学での研究会で行われた四つの専門研究の報告後に、研究参加者が交わした議論(これらは当初計画に従って議事録として記録し、研究参加者にフィードバックしている)、およびその間の2018年7月・11月に行った他科研費等との共催研究会を通じて、年度終了までにはおおよそ把握された。2018年度終了時においては、二つの点が未解明であった。それは、①2018年度には「正しさ」の思想的基盤(キリスト教やローマ理念)の普遍性が争われない対象の研究に力を入れたのに対し、普遍性自体が揺らいだルネサンス・近世の中欧地域や地中海地域の知的営為の中で、何が「正しい認識」の根拠とされたか、という点、もう一つは②身分的・職業的エリートにのみ焦点をあてていたこれまでの研究では全く空白であった近世民衆の「正しい認識」の生成過程、およびそれとエリートの「正しい認識」との接点である。①については2019年11月に、前年度来日予定で延期となったシュトローマイヤー氏に加え、研究分担者の石黒盛久の尽力により、ベルガモ大学教授マルコ・ペッレグリーニ氏(中世・ルネサンス思想史、宗教史)の来日講演、研究会参加の承諾を得ることができた。これにカトリック思想史の第一人者である甚野尚志とルネサンス思想史をリードする石黒盛久が報告者として加わることにより、その研究目的を達することが期待できる。また②については、人類学的・社会学的史学方法論の泰斗であり、市民や農民などの民衆世界、特に女性性の「正しい認識」について膨大な研究実績のある長谷川まゆ帆が、18世紀フランス民衆にとっての「多数決」とは何かに焦点をあて、ルイ14世期のローマ法学者ドマの理論の継受とその地方行政・農村政治への浸透、およびエリートとのインターアクションの分析を進めており、小山の研究成果と共に、近代民主政の中核的問題である「多数決」と「正しさ」の感覚の関係が解明される予定である。以上の諸研究により、北西ユーラシア・キリスト教世界の「正しい認識」が、各地域の中世中期から近世の宗教的・政治的条件に規定されて発展した多元的知性であり、「合理性」の尺度によって単純に序列化できるものではないことが解明される見込である

  • 中世ヨーロッパ世界における統治理念と社会制度の比較史的統合の研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2015年04月
    -
    2018年03月
     

    河原 温, 加藤 玄, 三佐川 亮宏, 堀越 宏一, 土浪 博, 鈴木 道也, 薩摩 秀登, 大月 康弘, 北野 かほる, 甚野 尚志, 皆川 卓, 小澤 実, 菊地 重仁, 渡辺 節夫, 渡辺 節夫

     概要を見る

    本研究プロジェクトでは、中世ヨーロッパ諸国(イングランド、フランス、ドイツ、ネーデルラント、チェコ等)と都市を対象に、それぞれの統治理念とそれに対応する社会制度の具体的展開との突合せを通じて、中世ヨーロッパ世界の統合的理解を得ることを目指した。13名の共同研究者により、それぞれの地域(国家)における世俗国家とカトリック教会の支配理念及び、王国と都市という中世ヨーロッパ社会を構成した中心的な組織の在り方を比較史的に検討した。その結果、それらの統治理念とそれぞれの社会制度の現実を統一的に理解することが一定程度可能となったと考えられる

  • 制度と政治社会の相互関係から見たヨーロッパ中世の発展と変容

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2013年10月
    -
    2016年03月
     

    渡辺 節夫, 河原 温, 加藤 玄, 三佐川 亮宏, 堀越 宏一, 土浪 博, 鈴木 道也, 薮本 将典, 薩摩 秀登, 大月 康弘, 北野 かほる, 甚野 尚志, 皆川 卓, 小澤 実

     概要を見る

    「追加採択」のため、実質的なスタートが初年度半年ほど遅れたが、②近年の日本の主要著作の合評会の開催(5回)、②2000年以降の欧米における当該分野の研究動向の整理と検討(4回)、③各自のテーマに合わせ、近年の動向を踏まえた主要論点の提示(4回)を行い、論集「2017年度刊行予定」の基礎を作ることができた。また、2度にわたり当該分野の優れた研究者を招聘し、講演会を開催し、欧米における最新を動向・論点を明らかにすることができた

  • 中近世キリスト教世界の多元性とグローバル・ヒストリーへの視角

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(A))

    研究期間:

    2013年
    -
    2016年
     

     概要を見る

    2013年度はメンバーを報告者とする研究会を4回開催したのに加え、11月30日にはイタリアのブルーノ・ケスラー財団イタリア・ドイツ歴史研究所に所属するフェルナンダ・アルフィエーリ氏を基調報告者として招聘し国際シンポジウムを開催した。シンポジウムの統一テーマは「トレント公会議と近世キリスト教世界」であり、同公会議前後において、教会が良心や罪、さらにはそれに関係する諸問題をどのような形で再定義し、必要に応じて統制を進めていったのかについてアルフィエーリ氏の専門とするイタリアとヨーロッパ諸地域の状況を比較し、さらにグローバルな世界史の次元における同議論の応用可能性について検討した。同シンポジウムでは科研の研究分担者2名が報告者として壇に立ったほか、4名が報告後にコメントを行い、さらにはシンポジウムの結果を研究会での個別報告という形にフィードバックしている。
    シンポジウム、および諸研究会における議論を通じて2013年度について浮かび上がってきた問題点は、国内におけるヨーロッパ近世宗教史の従来の研究動向が、「宗派化」論に代表されるドイツ史、ドイツ国内における動向の影響下に枠組みを規定されており、グローバル的な視野はもとより、ヨーロッパ国内における比較可能性についても十分な注意がはらわれてこなかったという事実である。アルフィエーリ氏が専門とするイタリアは、カトリックに属しているのに加え、検閲や異端審問に代表される世俗権力と教会上の権威との関係も他地域とは異なっていた。これを受け、本国と植民地で両者の関係が異なるスペイン、ポルトガルなどを事例に、植民地における「ポスト・トレント」の宗教社会状況を、植民地個々の特殊性と同時に、世界各地に展開するイエズス会やフランシスコ会の審問制度をはじめとする上からのネットワークとの相互作用のせめぎあいの中で新たにとらえなおす必要性が示唆された。

  • 中近世キリスト教世界の多元性とグローバル・ヒストリーへの視角

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(A))

    研究期間:

    2013年
    -
    2016年
     

     概要を見る

    2013年度はメンバーを報告者とする研究会を4回開催したのに加え、11月30日にはイタリアのブルーノ・ケスラー財団イタリア・ドイツ歴史研究所に所属するフェルナンダ・アルフィエーリ氏を基調報告者として招聘し国際シンポジウムを開催した。シンポジウムの統一テーマは「トレント公会議と近世キリスト教世界」であり、同公会議前後において、教会が良心や罪、さらにはそれに関係する諸問題をどのような形で再定義し、必要に応じて統制を進めていったのかについてアルフィエーリ氏の専門とするイタリアとヨーロッパ諸地域の状況を比較し、さらにグローバルな世界史の次元における同議論の応用可能性について検討した。同シンポジウムでは科研の研究分担者2名が報告者として壇に立ったほか、4名が報告後にコメントを行い、さらにはシンポジウムの結果を研究会での個別報告という形にフィードバックしている。
    シンポジウム、および諸研究会における議論を通じて2013年度について浮かび上がってきた問題点は、国内におけるヨーロッパ近世宗教史の従来の研究動向が、「宗派化」論に代表されるドイツ史、ドイツ国内における動向の影響下に枠組みを規定されており、グローバル的な視野はもとより、ヨーロッパ国内における比較可能性についても十分な注意がはらわれてこなかったという事実である。アルフィエーリ氏が専門とするイタリアは、カトリックに属しているのに加え、検閲や異端審問に代表される世俗権力と教会上の権威との関係も他地域とは異なっていた。これを受け、本国と植民地で両者の関係が異なるスペイン、ポルトガルなどを事例に、植民地における「ポスト・トレント」の宗教社会状況を、植民地個々の特殊性と同時に、世界各地に展開するイエズス会やフランシスコ会の審問制度をはじめとする上からのネットワークとの相互作用のせめぎあいの中で新たにとらえなおす必要性が示唆された。

  • ヨーロッパ史における政治と宗教のダイナミズムと国家的秩序の形成

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2010年
    -
    2012年
     

    甚野 尚志, 三浦 清美, 印出 忠夫, 根占 献一, 長谷川 まゆ帆, 関 哲行, 松園 伸, 大月 康弘, 和田 光司, 皆川 卓, 踊 共二

     概要を見る

    本科研では、中近世ヨーロッパ世界における政治権力構造の発達を、キリスト教の諸宗派(カトリック、ギリシア正教、プロテスタント諸派)の多元性と宗派化の過程との関連で考察した。すなわち、中世から近世にかけてのヨーロッパ世界では、キリスト教会が多元的にそれぞれの宗教世界を構築するとともに、特定の宗派教会と政治権力が一体化し、同一宗派の政治勢力のブロック化が進行し、教会、国家、社会のあらゆる領域で宗派化が進展する。その実態を地域ごとに解明し、また諸宗派間の紛争の形態や、調停の制度と寛容理念の形成も考察した。

  • ヨーロッパ史における政治と宗教のダイナミズムと国家的秩序の形成

    研究期間:

    2010年
    -
    2012年
     

  • ヨーロッパ中世における社会秩序と貴族の位相に関する比較史的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2009年
    -
    2011年
     

    渡辺 節夫, 北野 かほる, 河原 温, 甚野 尚志, 土浪 博, 堀越 宏一, 薩摩 秀登, 大月 康弘

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    貴族層による公権力の分有の観点から比較検討することにより、地域間の差異とヨーロッパ的な特質を明らかにすることができた。その成果はシンポジウム、(1)「ヨーロッパ前近代における地域統治と国家イデオロギー」、(2)「西欧中世-近世における政策決定をめぐる合意形成」においてより広い視点から公にされ、「紛争のメカニズムと裁判権」、「議会における立法と合意形成」、「王権による地域統治と統合のメカニズム」という3点に整理され、論集『ヨーロッパ中世社会における統合と調整』として公刊された

  • 中世ヨーロッパにおける社会秩序と貴族の位相に関する比較史的研究

    研究期間:

    2009年
    -
    2011年
     

  • ヨーロッパ中近世のキリスト教会と民衆宗教

    研究期間:

    2007年
    -
    2009年
     

  • 中世ヨーロッパにおける権力構造とアイデンティティー複合

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2006年
    -
    2008年
     

    渡辺 節夫, 北野 かほる, 西川 洋一, 河原 温, 甚野 尚志, 土浪 博, 堀越 宏一, 薩摩 秀登, 大月 康弘

     概要を見る

    本研究では前近代、とりわけ中世ヨーロッパにおける支配権力の編成の実態とメカニズムを各地域におけるアイデンティティー(一体性)の形成との関係で捉えることを課題とした。全体的な権力の構造(国家)のレヴェルでこの問題を考える場合には、社会を構成する各レヴェル、階層毎に検討しなければならない。本プロジェクトでは権力の最上層部分(王権、諸侯権)に限定し、集団的な「統合と調整」に論点を絞り、各地域間の差異とヨーロッパ中世的な特徴を把握することができた

  • 中世ヨーロッパの権力構造とアイデンティティ複合

    研究期間:

    2006年
    -
    2008年
     

  • 地中海世界における社会変動と識字率

    研究期間:

    2002年
    -
    2004年
     

  • 教会からみた中世ヨーロッパの政治社会

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2000年
    -
    2002年
     

    甚野 尚志, 堀越 宏一, 土浪 博, 渡辺 節夫, 大月 康弘, 河原 温, 立石 博高

     概要を見る

    本年度は、これまでの研究の進展にもとづいて、教会と世俗権力の関係を総合的に考察する試みを行うとともに、各人が分担の問題について一定の見通しを報告した。その過程で明らかになったことは、中世ヨーロッパ社会において、教会が多様なあり方で、多くの側面から世俗の政治社会と関係していたことである。たとえば、フランス中世の政治権力構造のなかで、教会が王権の正統性を保証する権力として、王権に対して大きな影響力をもっていたこと、さらにそうした王権と教会の関係は、フランスのみならず、ドイツやスペインの王権についてもいえることが確認された。さらには、都市においても、教会が救貧活動などにおいて、社会福祉的な活動の一端を担っていたことが明らかになった。また、ビザンツと西欧の比較の視点からは、ビザンツ社会では、貴族が所領を教会・修道院に寄進する行為において、西欧世界とは違った意味合いをもつことが強調された。このような分担者それぞれが提示した、中世ヨーロッパにおける教会と社会の錯綜した関係は、これまでの我が国の中世教会史、政治史研究を一歩前進させるものである。各人が提示した具体的な問題については、研究成果報告書のなかにまとめられているが、生体として、教会から現実の中世社会をみていくという視角が、これまでになく強調されたように思える。この三年間の研究成果にもとづいて、今後、各分担者が、それぞれの研究対象の地域・テーマについて、論文を発表していくつもりである

  • 教会からみた中世ヨーロッパの政治社会

    研究期間:

    2000年
    -
    2002年
     

  • 西欧の歴史世界とコミュニケーション

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1999年
    -
    2001年
     

    桜井 万里子, 甚野 尚志, 高山 博, 深沢 克己, 安成 英樹, 樋脇 博敏

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    本研究は、人類の歴史において多様な形式で成立し、展開された「コミュニケーション」に注目し、ヨーロッパ世界の形成を、このコミュニケーションという視覚から読み解く試みであった。社会内存在としての人間の営みは、多様なコミュニケーションの総体として歴史世界を形成するとの認識のもとに、1)人的・物的な交通手段、2)言語、その他による情報授受、3)よりミクロで濃密な人的結合、の3領域のいずれかに注目し、研究に着手した。研究分担者はそれぞれに、海外での資料収集を精力的に進め、研究会や学会等での報告を活発に実践し、論文等の発表も鋭意行い、また、データベースの作成、公開も行った。分析対象としたコミュニケーションのあり方は、異文化との接触、商業活動、情報伝達手段、社会的結合関係、言語媒介とした接触・交流、等々きわめて多岐におよぶことになり、その総合に際しては、最近の歴史学において急速に発展しつつある理論や方法を援用した。このようにして研究分担者たちは3年間にわたり実証的研究を進め、さらに、相互に長時間に及ぶ議論を展開させながら、研究の深化を図った。歴史世界が、人々の多様なコミュニケーションによって複雑におりなされて形成されるに至った経緯が、古代から近代までの長いタイムスパンの中で明らかとなり、ヨーロッパ世界におけるコミュニケーションの多様性と、それに対応した社会・文化の形成の特徴を、研究成果としてここに提示することができた

  • 西欧の歴史世界とコミュニケーション

    研究期間:

    1999年
    -
    2001年
     

  • 中世ヨーロッパにおける権力構造の比較史的研究

    研究期間:

    1996年
    -
    1998年
     

  • 商業交易と生活習俗の変容−比較社会史的考察−

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1991年
    -
    1993年
     

    勝俣 鎮夫, 甚野 尚志, 三谷 博, 並木 頼寿, 本村 凌二, 義江 彰夫, 山内 昌之, 新川 健三郎

     概要を見る

    本研究の第一段階は、様々な地域や時代を通じて、商業交易に関わる用語をそれぞれの史料のなかから拾い出し、カードに記載して、コンピューターに入力することであった。このため、一次史料のうち欠如したところを補足し、辞典、索引、語彙目録などを収集しながら、そこから「交易」「商人」「外来者」などの言葉をその事例とともに拾いあげることになった。第二段階にあっては、商人の往来や物資の交流に伴なう生活文化や習俗の変容について、それを現象として拾い出す作業に力点が置かれた。とりわけ、商人や物資を通じてもたらされる情報が当該地域の古来の生活様式や風習の変化にいかなる影響を及ぼしたのか、が焦点となった。かかる基礎的な個別作業を踏まえて、それぞれの地域や時代について、比較検討することが最終的な課題であった。こうした総合的な討議を重ねるうちに、事例の抽出に際して、それぞれの地域毎の特性すなわち事例の現れ方や史料の残存状況に応じて、交易活動の実態を類別化する必要が痛感された。例えば、古代地中海世界については、多種多様な商人が史料のなかでいかに製造過程と切り離しがたく結びついているかを確認しなければならなかった。また、日本の中世社会については、海賊の存在形態と商人の活躍が密接に結びついており、それらの事例を広範囲に摘出することから、国家支配圏と商業交易圏との重複と差異を認めることができた。さらに、民衆の意識や思想の在り方に注目すれば、各地域における民間信仰や差別観の実態を究明するための素材の新しい切り口を想定することもできるのである。このように総括すれば、商業交易と習俗文化の変容をめぐる歴史的な論理と必然性を探求するための有益な一石は築かれたと言ってもいいであろう

  • 商業交易と生活習俗の変容−比較社会史的考察−

    研究期間:

    1991年
    -
    1993年
     

  • 18世紀ヨーロッパの空間認識

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    1984年
    -
    1985年
     

    樋口 謹一, 甚野 尚志, 浅田 彰, 富永 茂樹, 坂上 孝, 山田 慶児

     概要を見る

    政治史・社会史・思想史・芸術史・科学史・技術史などを含めた共同研究により、諸領域に共通の空間認識の変容が次のような形で明らかになった。1.16世紀までの閉じた同心円的世界に対し、17・8世紀になってはじめて開かれた空間としての世界が成立した。2-(1)そのうち17世紀的空間は統一性・同質性を特徴とするが、18世紀的空間は多様性・異質性を特徴とする。前者の範例をニュートンとすると、後者の範例はディドロである。(2)開放空間の成立は諸要素の空間的布置としてのシステムの概念をもたらしたが、それについても同様な変化が見出される。17世紀的システムは統一原理から出発して諸要素を外在的に結びつける構造であるが、18世紀的システムは多様な諸要素の間から自ずと浮かびあがってくるソフトな内在的関係の網の目である。前者の範例をデカルトとすると、後者の範例はモンテスキューである。(3)このような18世紀的空間認識は近代的世界像の成立にとって決定的に重要であった。事実、そこにおいてはじめて具体的な事物の多様性にむけて開かれた世界像が生まれるのである。近代的世界像の確立を17世紀に求め、18世紀をその単なる後継者とする従来の見方は、今や修正されなければならない。3-(1)18世紀的空間認識はしかし極めて不安定な均衡のうちにあった。19世紀に入るとそれは時間軸にそったラセン運動の中に引き込まれていくことになる。(2)その転換点において「空間の爆発」ともいうべき現象のあったことが明らかにされた。ナポレオンの帝国や「ヴィジオネール」様式の建築などがその範例である。そうやって膨張しきった空間が一挙に時間的運動へと吸引されていくのだ。4.しかし、19世紀以来の歴史的拡大の「後」にあって、一定空間内での多様な諸要素の共存という課題に直面しつつある現在においては、新たに浮き彫りにされた18世紀の空間の知から学び得るところは極めて大であると思われるのである

  • ヨ-ロッパ史における北と南

     概要を見る

    平成3年度における研究計画はほぼ予定通り進行した。各研究分担者、及び研究分科会における個別の史料分析と討論を積み重ね、前年度に引き続いて各人の分担課題に基づく個別的研究が行われた。これら個別的研究課題の進展の成果をふまえて、7月、全体会が開かれ、研究分担者それぞれの立場から、率直な意見の交換が行われた。その際統一的な申し合わせ事項として取り決められたのは、「北と南」という課題を、たとえば、いわゆる南北問題というように狭い意味の概念に限る事なく、「ある一つの地域の内部における不均等発展」という広い意味で捉え、国家の枠にとらわれる事なく、地域研究としての広がりをもたせる事に意見が一致した。この申し合わせにしたがって、各人が研究成果を原稿の形で作成し、研究成果報告書の作成に当たった。まず、研究代表者(城戸)および森田・相沢・甚野・河原の各研究分担者は、ヨ-ロッパのアルプス以北の地域において、いかなる不均等発展が起こったのか、という問題に焦点を絞った。森田はスイス、相沢は中世ドイツを対象としてそれぞれの地域における地域主義と国家主義との相克の諸相を浮き彫りにした。また甚野は思想史の面からアプロ-チを行い、また河原は、貪民救済という一種の南北問題に起因する現象が、すでに中世ヨ-ロッパに存在した事を明らかにした。またアルプス以南では島田と橋場が、それぞれ古代ロ-マとアテネとを対象として、南欧型の都市とそこにおける政治形態の特質とを論じた。また安村は、はるかにグロ-バルな視点から、プロテスタンティズムを「北」、カトリックを「南」と捉え、中南米へのヨ-ロッパの拡大は、この「南」の拡大にほかならないとした。これらの意見を総合して研究成果報告書が編集された

  • 中近世ヨーロッパのキリスト教会と民衆宗教

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    本科研プロジェクト「中近世ヨーロッパのキリスト教会と民衆宗教」では、対象の時代と地域を、中世のヨーロッパ世界のみならず、他の時代も含め、そしてヨーロッパ以外のキリスト教が浸透した地域にも視野を広げて、比較考察を行ったことに大きな特色があった。扱った時代は中世のみならず、近世も含め、地域は西欧のみならず、東欧・ロシア、ビザンツ、その他ヨーロッパ以外のキリスト教が浸透した地域(中南米、日本など)を考察の対象とすることで、我々のプロジェクトは、キリスト教の教会と民衆宗教の関係を、たんにヨーロッパ固有の問題としてではなく、キリスト教が受容された地域全体に共通する問題として世界史的に考察することができた。その結果、これまでのヨーロッパ教会史の見取り図に、日本の研究者からの独自の視点を付け加えることができたといえよう

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現在担当している科目

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他学部・他研究科等兼任情報

  • 文学学術院   大学院文学研究科

学内研究所・附属機関兼任歴

  • 2022年
    -
    2024年

    高等研究所   兼任研究所員

特定課題制度(学内資金)

  • 「長い宗教改革」とヨーロッパ的多様性の拡大-中世から近代へ-

    2017年  

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    本特定課題研究は、「宗教改革」をプロテスタントの独占物として捉えるのでなく、中世の教会改革や対抗宗教改革も含めて、中世から近代へと至るヨーロッパのキリスト教と社会の自己改革運動ととらえ、改革が異質な宗教集団 (マイノリティ)をいかに排除し、あるいはまた、いかに包摂しつつ宗教的な権威を確立したかを考察した。その上で、この問題をヨーロッパ内部の正統と異端、異教との関係として捉えるだけでなく、ヨーロッパ外部へのキリスト教の拡大と受容の問題にまで広げて考える見通しをえた。

  • ギリシア語翻訳者の活動と12世紀の知的復興

    2013年  

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    西欧の「十二世紀ルネサンス」の本質的な特徴のひとつは、ビザンツ世界からラテン語訳されたギリシア語の古典文献が西欧世界にもたらされ、西欧のスコラ学の文化形成に大きな影響を与えたことである。この問題を考察するために、特定課題の研究費で南イタリアに渡航し、ナポリ、サレルノなど12世紀の時代にギリシア語のラテン語訳文献が流入し知的な中心となっていた地域の大学や教会の遺跡を巡検し、また文書館の蔵書確認を行って、今後の「十二世紀ルネサンス」研究の深化への見通しを得ることができた。今回の渡航で、私がすでに文献資料で得ていた知識が実地調査で裏付けられ、十二世紀にギリシア語の翻訳がラテン世界に対していかなる文化的影響を与えたかという問題について、今後、論文にまとめるための多くの手がかりを得ることができた。とくに今回の研究の成果として、私が年来の考察対象の12世紀の人文主義者ソールズベリのジョンが十二世紀中葉に教皇庁に滞在したさい、南イタリアでギリシア語の文献に精通する知識人と接触し、思想的に影響を受けたという事実について考察を深めることができた。私自身、今回、ソールズベリのジョンが歩いたアプリア地方などに行き、今なお残るビザンツの聖堂を見ることで、ジョンが確かにギリシア文化の影響のなかで彼の思想を構築したことが確信できた。いずれにしてもビザンツ世界のギリシア語文献は、西欧十二世紀の時期にナポリやサレルノなどの南イタリアの知的な中心で、ラテン世界の知識人に大きな影響を与えたことが疑いないことがよく理解できた。また今回の研究では、西欧の「十二世紀ルネサンス」におけるビザンツ世界からの翻訳の文化的影響について、3人のイタリアの知識人の翻訳活動-ヴェネツィアのヤコブス、ピサのブルグンディオ、ベルガモのモーセ-の翻訳活動-についても文献の調査により考察し、彼らの行ったアリストテレスの『分析論前書・後書』、『トピカ』、『ソフィスト駁論』、『自然学』、『霊魂論』、『形而上学』などを翻訳、あるいは、ヨハネス・クリュソストモスやヨハネス・ダマスケヌスの神学の著作や、農業、医学、法学のギリシア語著作の翻訳の文化史的意義を確認することができた。

  • 西欧中世におけるテキストの伝承と思想の影響 -『ポリクラティクス』の場合-

    2009年  

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     十二世紀の知識人を代表するソールズベリのジョンの政治社会論の著作『ポリクラティクス』が中世後期にどのような影響を与えたかについて、関係する資料を研究費で購入し、また、パリでの1週間ほどの資料調査にもとづいて詳細に考察した。『ポリクラティクス』の残存するラテン語写本は、十二世紀のものが六点、十三世紀のものが十二点、十四世紀のものが二十九点、十五世紀のものが五十二点と、しだいに数を増していることからも、この著作が中世後期の政治・社会思想に与えた影響の大きさが理解できるので、ラテン語写本の制作との関連で今回考察するとともに、『ポリクラティクス』が、中世後期のイタリアの人文主義者や法学者に大きな影響を与えていることが今回の研究で明らかになった。その顕著な例は、十四世紀中葉のナポリ大学の法学者ルカス・デ・ペンナであり、彼が書いたローマ法の注釈書では、『ポリクラティクス』での法の議論や有機体的な国家論が詳細に紹介されている。また何より、ジョンの暴君論が、フィレンツェの有名な人文主義者コルッチョ・サルターティに影響を与えていることも注目に値する。サルターティーは、『ポリクラティクス』の暴君論の大きな影響を受けて、彼自身の『暴君論』(一四〇〇年)を書いており、今後、イタリアの人文主義への十二世紀の『ポリクラティクス』のようなテクストの影響関係について、さらなる研究を進める予定である。さらに『ポリクラティクス』は、ラテン語の書物として影響を与え続けたのみでなく、十四世紀後半には俗語フランス語のテキストとしても流布した。すなわちフランス王シャルル五世が、フランシスコ会士ドニ・フルシャに『ポリクラティクス』のフランス語訳を作らせ、その結果、ラテン語を理解できない王や宮廷人もその内容を理解できるようになったからである。このことは、中世後期になお『ポリクラティクス』が「君主の鑑」としての有用性をもつ書物であったことを示している。今回は、十四世紀のシャルル五世期に、なぜ、『ポリクラティクス』がフランス語訳されたのかまでは、十分な考察が及ばなかったので、この問題は、今後の課題としたい。