特別研究期間制度(学内資金)
特別研究期間制度(学内資金)
-
日本・オーストラリアにおける現代の歴史教育の比較史的研究
2015年04月-2016年03月オーストラリア オーストラリア国立大学
他学部・他研究科等兼任情報
他学部・他研究科等兼任情報
-
教育・総合科学学術院 教育学部
特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
-
2013年
概要を見る
本研究では、日本の歴史災害の主なものを年表化し、それぞれの項目について関連史料と先行研究文献を収集してデータベース化した。2011年3月11日の東日本大震災をきっかけにして、歴史災害への関心がかつてないほどに高まっている。日本の歴史が、日本列島という国土の地理的な特性と深く結びついて展開してきたことを前提として、通史叙述を書き直すことが求められている。そもそも日本列島はプレートの境界に位置する地震国・火山国であり、そのため多くの地震、津波、火山の噴火などの巨大災害に襲われてきた。歴史学の研究動向としては、1995年1月17日の阪神淡路大震災の前後から、人と自然の関係史をもとに歴史を叙述しようとする環境史の分野で多くの研究がなされるようになった。そこでは歴史災害のみならず、気候変動も含めた自然環境へ注目が集まっている。さらに近年では、災害を契機とした政策転換が社会に大きな影響を与えたとする研究も出てきており、従来の日本史年表に歴史災害の情報を付け加えることには、大きな意味があると思われる。 さらにその年表を、教材として使えるように整理したうえで研究成果の経過報告を含めて高校日本史の授業に導入した。一般に、通史学習のなかで歴史災害が主要な題材として取り上げられることは極めて少ないのが現状である。教科書をみても、近現代の関東大震災や阪神淡路大震災についての記述はあるものの、前近代については、江戸時代の「三大飢饉」や治承・寿永の乱のさなかの「養和の大飢饉」に関するわずかな記述を例外として、歴史災害についてほとんど述べられていない。とくに中世後期については「飢饉と戦争の時代」として位置づける研究動向があるにもかかわらず、中世最悪の飢饉といわれる「寛正の大飢饉」や、南海・東南海・東海地震の同時発生と考えられる巨大地震「明応地震」についての記述すら、ほぼ皆無といってよい。このような歴史研究と歴史教育の現場の断絶状況をつなぎ、歴史災害に関連する史料を教材化する研究が求められていると考える。その際には、関連史料を高校生にも読みやすく書き下し、絵画資料などビジュアルなものを教材化して、授業計画と照らし合わせながら、高校3年生の授業の中で年度中に数回の授業をおこなった。
-
戦国大名領国における山野の生業と商品流通に関する復元的研究-越前朝倉氏領国を例として-
2004年
概要を見る
本研究は、日本中世・近世の移行期にあたる戦国時代の商品流通経済のあり方について、山林資源の用益と流通を生業としていた人々に焦点をあてて考察することを目的とした。研究対象としては、越前朝倉氏領国をあつかうこととし、とくに中世の越前国において山岳信仰の霊場として栄えた越知山の別当寺、大谷寺の寺領とその周辺地域を素材として研究をおこなった。大谷寺は、戦国~江戸時代を中心にして越知神社文書という内容の豊富な文書群を残している。その中の「越知山大谷寺神領坊領目録」などの詳細な帳簿史料によって、膝下に広がる寺領の所在を地図上に落とし、また「山方分年貢公事注文」などの史料によって、戦国時代の寺領および周辺の山間の村々の生業(山野の用益・商品流通)の実態について考察した。2004年8月3日(火)・4日(水)の福井県立文書館(福井市)における史料・資料調査では、この越知神社文書のみならず、周辺地域にのこる文書のうち、刊本では全体像を確認することができない17世紀ごろまでの近世史料にとくに注意して、山野の生業に関連する史料を収集した。また同時に、先行研究についても、とくに現地発行の地方史研究雑誌を検索して、郷土史の研究成果を研究に組み入れるべく、福井県立図書館(福井市)にて収集した。また、復元的な方法による本研究では、民俗・地名資料を収集するために、現地調査も重視しておこなった。2004年8月5日(木)~7日(土)には、越前国丹生郡(福井県越前町)に位置する越知山大谷寺と越知神社、また、その周辺に分布する旧寺領の山間地域(福井県越前町・清水町・越廼村)を巡検し、必要に応じて聞き取り調査をおこなった。また、朝日町郷土資料館・織田町歴史資料館・劔神社宝物館・清水町立郷土資料館(すべて当時、2005年2月1日に朝日町・織田町は越前町と合併)などで、現地調査に必要となる情報を得るとともに、関連する資料を収集した。このような現地における民俗事例や地名の聞き取り調査によって、生業のあり方についての空間的に復元する作業を試みた。
-
山林資源の用益と流通に関する復元的研究―滋賀県高島郡安曇川流域を素材として
2000年
概要を見る
本研究は現地調査をもとにした復元的方法による研究であるため、夏・秋・春に実施した現地調査を中心にした研究を行った。主な調査地域は滋賀県安曇川流域であり、中世・近世史料上に見える地名の現地比定、山林資源の用益(材木の伐り出し・加工・炭焼・柴刈り・秣刈りなど)に関する聞き取り調査、また、近代を中心にした材木の筏流し・薪炭の行商に関する聞き取り調査(民俗的慣行・習俗を含む)を行い、成果を挙げた。また、安曇川流域の調査においては、高島町立歴史民俗資料館において、近世史料の写真帳を閲覧させていただき、筆写するなどして、山林資源の用益と流通に関連する史料・資料の収集をおこなった。 なお、本研究については、昨年度から2ヶ年の計画で、科学研究費補助金基盤研究(C)(2)「中世後期の河川流域のおける山林資源の用益と流通に関する復元的研究-近江国安曇川流域および紀伊国紀ノ川流域を素材として」(課題番号12610346)を交付されることとなり、研究代表者としてこの共同研究を同時に進めている。現地調査の成果については現在整理し、まとまりつつあるが、滋賀県と和歌山県の主に2つのフィールドにおいて、同時進行で調査・研究を進めており、両者の成果を比較・検討することによって、今後さらに調査内容を絞り込み、来年度も引き続き現地調査を積み重ねていくことになる。例えば、紀ノ川流域における調査で明らかになった、中・近世の山林資源の用益をめぐる地域間相論という視点は、同じ畿内近国に位置する安曇川流域においても有効であると思われ、次回の調査ではこの点が重要な調査項目の一つとなるであろう。
-
1999年
概要を見る
本特定課題研究の主な目的は、日本中世における商品流通の実態を追究することであった。とくに近江国をフィールドとして、戦国期の領主権力による流通政策と活発化する商品流通についての史料・文献を網羅的に収集し、検討を加えることに主眼を据えた。 とくに、8月には滋賀県高島郡朽木村・安曇川町において現地調査を行い、安曇川上流部の針畑地区から安曇川中流部の朽木村市場地区にかけての材木の筏流しなどに関して聞き取り調査を実施した。その結果、朽木村の中で中世史料上に現れるいくつかの地名の現地比定を行い、また安曇川を流す筏の集積地であった琵琶湖岸の船だまりの位置や、その付近の近世から続く材木商の所在を確認した。今後の研究においても現地調査を続け、今年度研究の戦国期の商品流通という限られた視点を、中世・近世を通じた山林資源の用益・流通という視点に広げ、さらに検討していくつもりである。 本研究を通じての成果として、収集した史料・文献を精読した結果、今後の研究における重要な視点が定まったことが挙げられる。その視点とは、中世の商人が、流通路上においていかにして安全に物資を運搬し、またどのようにして安定した商品の販売を可能としたかという問題、「流通保障」の問題について追究することである。中世の商品流通における流通保障とは、大きく二つに分類することができる。一つは、領主権力の流通政策がもった流通保障機能、もう一つは、中世商業自体の自律的展開の過程において形成された流通保障機能である。この二つの「流通保障」がどのように関わるのかを検討する作業を続けており、論文にまとめて発表する予定である。最終的には中世商業から近世商業(近世幕藩制的流通体制)への変化の過程を見通すこととなり、課題は大きいが、来年度はこの点をさらに追究していきたいと考えている。